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不動産の達人が教える「失敗できない時代の住宅選び」

きれい事を実現しよう

 住宅の世界も、構造を大きく変えなければ立ち行かないところまできているのに、相変わらず新築を造っては売り、造っては売りを繰り返し、いまでは大量の在庫を抱えている。1000万円引き、2000万円引きなどの安売りセール(損切り)ができる、体力のあるデベロッパーはまだましなほうで、値引きすらできずにジワジワと最後の時を待つ中小のデベロッパーがたくさんあり「次はあそこがとつぶれるのでは?」とささやかれたりしている。大手の決算は今のところ好調だが、それは中小のパイを食っているだけで、やがて彼らの足元にも火がつくときがやってくる。そのとき変革が起きるのだろうか。

 税制も融資も不動産の評価も、直ちにセクショナリズムを排して、かかわるすべての一体的革新を、一日でも早く進めたいところだ。改革が遅れれば、それだけ資源のムダを積み上げ、効率の悪さを放置することになる。今後さらに多くのデベロッパー、ゼネコンが倒産の憂き目に遭うことだろう。ただしそれは、この国の『人と不動産の関係』が次のステージに向かうために通る道だ。

 世の中がよくなるプロセスとして、もうしばらく厳しい道を通り抜けなければならないのか。メディア・不動産業界はもちろん、どの業界にも、気づいている人、志の高い人はいる。超党派で世の中をよくするときは、今だ。自分がやり切れていない言い訳をするためにデメリットサイドばかりに焦点を当てていないで、よりよい世の中をつくるためにできることをそれぞれの持ち場で精一杯やることだ。

 声を上げてほしい。子どもの世代にうまく説明できない社会を残して、なんと言い訳ができるのだろうか。大人たち一人ひとりの生き様。これが最高の教育だ。消費者・お客様・視聴者は、決して自分たちに媚びた商品やサービスを受け取りたいわけではない。プロの提案を受け取りたいのだ。

 「そんなのきれい事だよ」という声が一部で聞こえそうだ。それはそのとおり。きれい事を実現することを「仕事」という。

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