◎医師増員へ方針転換 次は研修医制度見直しを
福田康夫首相と舛添要一厚生労働相が、医学部の定員削減を決めた一九九七年の閣議決
定を事実上撤回し、医師増員の検討に乗り出すことで一致したのは当然であり、地方で深刻化する医師不足を考えれば遅きに失したと言わざるを得ない。政府は政策転換が後手に回った非を率直に認め、医師不足解消へ抜本的な処方箋(せん)を打ち出してほしい。
今後、医学部の定員を増やすとしても人材養成は長い時間を要し、舛添厚労相が「いま
は医療崩壊」と認めた厳しい現実は一朝一夕には改善しないだろう。政府に求めたいのは、医学部卒業生が研修先を自由に選べる臨床研修制度の見直しである。
二〇〇四年度に導入された新制度で研修医が大都市や有名病院へ流れ、地方の大学病院
が関連病院に派遣していた医師を引き揚げる事態に陥った。石川、富山県でもこの制度が医師不足に拍車をかけたのは明らかである。医師増員は財源確保の調整が課題としても、制度の見直しは早急に着手できるはずである。
政府は一九八二年に必要な医師数の目標を達成したとして「過剰を招かないよう配慮す
る」との閣議決定をした。橋本内閣時代の九七年には「引き続き医学部定員の削減に取り組む」との方針が閣議決定され、医師過剰の見解は四半世紀にわたって維持されてきた。
政府の緊急対策で医学部の定員を増やすことが決まり、金大、富大でも来年度から五人
の定員増が認められたが、「二〇二二年度以降は医師過剰になる」として十年程度の「暫定的措置」という位置づけである。医師抑制の基本方針が変わらなければ、どんな対策も応急手当てに過ぎず、問題の根本的な解決にはならないだろう。医師増員への政策転換は、政府の決定事項として明確に位置づける必要がある。
石川、富山県では金大、富大と県が連携し、医学部卒業生を地元の研修病院で受け入れ
、医師として定着させるネットワークづくりが進められている。そうした地域の取り組みも尊重し、政府は研修医制度の見直しを含め、地域や診療科のバランスにも配慮した医師配置の仕組みを構築してほしい。
◎好評の米粉パン コメの消費拡大に期待
米粉(こめこ)パンが石川、富山県でも脚光を浴びている。JA組織、消費者団体、パ
ン屋等々で取り組むところが増えて好評だ。北陸農政局が試作体験会の後押しをするなど、米粉パンを普及させ、コメの消費を拡大へと逆転したいとしている。
小麦粉に20―30%の米粉を混ぜるのが多いようだ。富山県では五年前から県産コシ
ヒカリを学校給食に取り入れており、これが米粉パンに結びつき、平均すると月に一回は米粉パン給食が行われるまでになった。石川県はそこまでではないが、週一回米粉パンを給食に使う保育所が出ている。
先日、東京・永田町で米粉パン試食会があったように全国に広がりつつあり、金沢市の
コメの販売会社が新たな投資を行い、今秋から米粉の製造販売にも乗り出すという動きもある。米粉パンへの関心が高まった背景には輸入小麦粉の価格上昇がある。先駆者は新潟県で、十数年前にJAを核とする米消費拡大推進協が地元の製粉会社と提携、使いやすい米粉製造法を確立し、JA北魚沼女性部によって料理読本「米粉パン&米粉料理レシピ」もつくられた。
石川、富山県では三、四年前から始まったのだが、氷見市のハトムギ生産者らがハトム
ギに地元産の米粉とワカメの粉を混ぜたクッキーを考案し、石川県津幡町では主婦が米粉に地元で穫れた野菜を練り混ぜて約三十種類ものパンなどをつくり、近くにある交流型宿泊体験施設「倶利伽羅塾」で販売するなど軌道に乗り始めた。
ネックは輸入小麦粉との価格差だ。価格が上がったとはいえ、輸入小麦粉は一キロ当た
り七十―八十円で、米粉は同二百五十円である。このネックをクリアできるのは工夫だ。米粉パンの実践を通して農業は「知識産業」であると分かったという人も出てきた。
折から、金大が奥能登を拠点に地域再生事業のリーダーを育成する「能登里山マイスタ
ー」を展開している。アグリビジネスおこしも重要なカリキュラムに組み込まれている。米粉パンの試みに参加して頼もしい戦力になってもらいたい。