ここから本文エリア 検証耐震力〜宮城県沖地震30年
1 「次」の被害想定2008年06月10日
死者290人、県内の建物全壊約1万9千棟……。 30年後までに99%以上の確率で起こるとされる宮城県沖地震で予想される県内外の被害について、国の中央防災会議が06年、そう想定した。78年6月12日に起こった前回は死者28人、県内の全壊住宅1377棟だった。なぜ想定は前回の10倍を超すのか。 平均で37年おきに起こるこの地震には、二つのタイプがあることが知られている。ひとつは太平洋プレート(岩盤)と陸側のプレートの境界にある金華山沖の震源域が起こす「単独型」。前回78年の地震はこのタイプだった。 もう一つは、金華山沖の震源域と、さらに沖合にある別の震源域が同時に起こす「連動型」。1793年に起こった例がある。 単独型の規模はマグニチュード(M)7・4前後なのに対し、連動型はM8以上。連動型が揺れを起こすエネルギーは10倍近くなり、単独型ではほとんど被害を及ぼさない津波も大型化。県北部を中心に最大10メートルの大津波が襲うとみられている。中央防災会議が想定するのは、後者の連動型による被害だ。 単独型を起こす震源域は78年以降、地震を起こすエネルギーを蓄え続けてきた。05年の8・16宮城地震は、単独型の震源域の沖側の一角だけがエネルギーを放出した現象とみられている。残った震源域と、沖合の震源域との間にエネルギーが抜けた領域ができたことで、連動型の可能性が減ったとの見方もある。 だが、地震メカニズムに詳しい東北大の松沢暢教授は「可能性がゼロになったわけではない。次は連動型と想定するのが正解だ」とくぎを刺す。 78年の宮城県沖地震は、近代化した大都市を襲った大地震の先行例だった。ブロック塀が倒れて犠牲者が出たり、宅地造成された住宅地で地滑りが起きたりするなど、都市震災の脅威が初めて明らかになった。その被害を踏まえて、ブロック塀の除去など進んだ対策も多い。 ただ、建造物の耐震などに詳しい源栄正人東北大教授は「81年の建築基準法の改正など、被害に備える技術や制度は整ってきたが、耐震改修を促す優遇税制の実施など、まだまだ課題は残る」と指摘する。 ◇ 近く必ず再来する宮城県沖地震への備えはどこまで進んでいるのか。前回の発生から12日で30年を迎えるのを機に検証する。 マイタウン宮城
|