福田康夫首相は十七日の主要国(G8)通信社首脳とのインタビューで、北朝鮮の拉致被害者に関する再調査の早期実現に取り組む強い決意を示した。政府が北朝鮮の再調査約束を受け、経済制裁の一部解除方針を決めたことに拉致被害者家族会も含めた世論の不満が強いだけに、少しでも取り除きたいとの思いが働いたのは明らかだ。
ただ、再調査やよど号乗っ取り犯関係者の引き渡しをどう実現させていくか、道筋は全く見えていない。再調査がいつまでも始まらなかったり、過去と同様のおざなりな再調査になれば北朝鮮だけでなく、首相の信頼も失墜しかねない。
首相は拉致問題などの進展次第では経済制裁を追加解除する可能性にも言及した。北朝鮮からさらに柔軟姿勢を引き出そうとの狙いだが、北朝鮮が簡単に「誘い水」に乗るかは疑問も残る。
再調査の時期や方法などの具体化に向けた今後の協議は容易でない。いったん結んだ約束を守らなかったり、「じらし作戦」は「北朝鮮外交の常とう手段」(六カ国協議関係筋)とも言える。
対北朝鮮交渉を有利に進めるためには日本単独では限界があり、米中韓三カ国との連携による北朝鮮包囲網の構築が不可欠だ。連携を「お題目」に終わらせず、実効性を担保させる外交努力が求められる。
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