2007年11月7日(水)「しんぶん赤旗」
石井議員が質問
衆院の青少年問題に関する特別委員会は六日、子どもとインターネットをめぐる諸問題について教育評論家の尾木直樹さん、ジェントルハートプロジェクト理事の小森美登里さんら四人の参考人から意見を聞きました。
尾木さんは、携帯電話の普及率が小学生31%、中学生57%、高校生96%という総務省の調査結果を示し、インターネット利用が増えていると指摘しました。ネット上で中傷されるなどいじめが急増している現状をあげ、二〇〇六年からいじめが第三のピークを迎えていると報告。具体的に▽子どもだけでホームページを開かせない▽閲覧制限をする「フィルタリング」をきちんとかける―などの対策を示しました。
日本共産党の石井郁子議員は、「命の大切さをどうしたら、子どもたちに理解してもらえると思うか」と、小森氏に質問。小森氏は「おとなは、いじめちゃだめと教えながら、やられたらやり返す強さが必要だと教えている。いじめを生み出しているのはおとなです」と語りました。
また、石井議員の「子どもがもつ携帯電話にインターネット機能が必要か」との問いに、四人の参考人とも「必要ない」との意見をのべました。
衆院 青少年問題に関する特別委員会会議録 第3号 2007年11月6日
参考人
(教育評論家)
(法政大学キャリアデザイン学部教授) 尾木 直樹君
参考人
(NPO法人ジェントルハートプロジェクト理事) 小森美登里君
参考人
(財団法人インターネット協会副理事長) 国分 明男君
参考人
(“ののいちっ子を育てる”町民会議事務局) 桝谷 泰裕君
衆議院調査局第一特別調査室長 金澤 昭夫君
本日の会議に付した案件
青少年問題に関する件(子どもとインターネットをめぐる諸問題)
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○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
携帯、インターネットを通じて、子供たちに何が起こっているのか。本当に、どういう状況にあるのかということについて、きょうは四人の参考人の皆様から、大変リアルな実態、そして考え方もお示しをいただいたというふうに思います。本当に、お忙しい中、ありがとうございます。
私は、最初に、携帯電話といっても、私たちが使っているとか認識の範囲では、通話あるいはメールという範囲なんですよね。しかし、今は子供たちがまさにネットに接続している、しかも、さまざまな機能を持った携帯電話になっている。このことが、いろいろな問題を一つは引き起こしているのではないのかというふうにちょっと思っておりまして、率直なところを伺いたいんですけれども、こういう機能を持った携帯は本当に子供たちに必要なのかどうかというふうに伺いたいと思うんですが、お聞かせいただきたいと思います。それぞれ、四人の方々から。
○尾木参考人 結論から言いますと、僕はそういう高機能の携帯は必要ではないと思います、固定したパソコンで十分だろうと。
以上です。
○小森参考人 私は、一定の年齢まで持つ必要はないと思っています。
○国分参考人 携帯電話会社あるいはメーカーはどんどん新しい機能を開発して、これでもかこれでもかとやっているわけですが、極端なことを言えば、電話としての機能であれば、インターネットに接続できない携帯電話機というのも既にありますので、親御さんがそういうものを選択されればいいかというふうに思っております。
○桝谷参考人 私も、子供には必要ないと思っております。生身の人間同士の触れ合いをもっと子供に大切にさせたいと思っております。
○石井(郁)委員 今、子供たち、小学生で三一・三%、中学生で五七・六%、約六割ですよね、高校生で九六%ですからほぼ一〇〇%と。この携帯がどういう携帯なのかということは、案外親はわかっていないんじゃないでしょうか。先生方もそうだと思うんですね。
それで私は大変気にしているわけですけれども、やはり一つは、携帯がこれほど急速に普及しているのは、私の聞いたところによりますと、ただで買える、ただで買えるというのはどうなのかと思いますけれども、ただですということがあったようにも思いましたし、そして、中身が本当にさまざまな機能がついている、私はとてもわからないわけですけれども、そういうことなので、私は、そういう携帯を子供たちに売る、これは親の同意があるんですけれども、しかし、親もそこを知っていて子供たちに与えているのかが大事だと思うんですけれども、そういう点では、子供たちに売っていいよ、売れるんだという意味での携帯会社あるいは事業者の社会的責任というものについては、どのようにお考えになっていらっしゃるのか。これも一言ずつお聞かせいただければと思います。
○尾木参考人 この事業者の責任は僕は極めて重大だと思います。生産事業者というか、つくる大もとのところの問題もあると思うんですよ。
ただ、さっきおっしゃったように、子供専用のもありますから、それは事業者としての責任を果たしているといえば果たしているのかわかりませんけれども、重要なのは、販売店のところの問題がすごくありまして、これは東京都が去年、二〇〇六年の二月から三月に東京都内の携帯電話の量販店千七百店舗へのアンケート調査をしたんですけれども、その中で、例えば、フィルタリングの問題、機能を伝えていないお店が四六・九%ですね、子供に売るときにですよ。そして、子供への通知義務条例というのがあるわけですけれども、それを知らないと答えた量販店が四八・七%に達していますし、フィルタリングの機能の存在すら知らなかった販売店ですよ、これが六六・〇%なんですよね。販売店がまず知っていない。そして、恐るべきなのは、今後も積極的にお客さんに周知するつもりがないとする店舗が一〇・五%もあってという、これは東京都の実態調査ですけれども、これではもう販売する資格もないというふうに僕は思います。
だから、やはり社会的に、子供の教育というのは学校と家庭だけでなくて社会全体が責任を負っているわけですから、そこのところの責任はしっかり持ってもらわなきゃいけないし、その啓発活動からペナルティー、僕は余り好きじゃありませんけれども、でも、それができなかったらやはり処罰も受けるみたいな、特に子供の成長に関しては社会がしっかり責任を持つんだという国の考みたいなのをつくっていただきたいというように思います。
以上です。
○小森参考人 あと、やはり親の責任というものも非常に私は大きいと思っています。
利便性とか、あと子供の安全のために、親の方が、小学生の場合は多く持たせたりしているわけですね。子供の方から積極的に買ってと言う場合だけではないわけですね。
その安全性という面からいいますと、一年間にどれぐらいの子供が、例えば不審者によって殺されているかという人数を見ますと、一けた二けたの人数が実際にやはり殺されています。ところが、この携帯というものによって心を傷つけられたりとか、いろいろなことでみずから命を絶っている子供の人数というのは、それはもうずっと多いわけですね。
ですから、命というものを考えたときにも、親は、この携帯というものの機能を知って安全なものとして与えられるのであればいいけれども、一度与えてしまったものを奪うということはもうできないわけですから、小学校のときに与えて、その利便性を子供にも教えてしまった大人というのにも責任があると思っています。
○国分参考人 携帯電話会社の社会的責任ということにつきましては、三、四年前は非常に腰が引けておりましたので、私も個人的には非常につらい思いをいたしましたが、ここ一、二年は、ちゃんとそういうものを理解して、ちゃんと活動してくれているものだというふうに思っております。
ただ、先ほど尾木先生が御指摘されたように、販売店の問題というのは非常にありまして、なかなか理解が進まないというか、まだまだそこら辺はもっと努力が必要だというふうに思っております。
○桝谷参考人 私も、事業者の責任は非常に大きいと思っております。
小さい子供へのおもちゃは、本当に細部にわたって安全点検はされているはずです、売り出す際には。携帯電話は、これだけ子供たちがお互いにいじめ合っているのに、そういうことも点検されずに売られていることは、非常に大人として無責任な状態になっているのではないかなというふうに危惧もしております。
ということで、売る方、つくる方も含めて、こういった販売にかかわっては、僕は、やはり青少年健全育成税のようなものをきちっと取って、先ほどから論議されておりますような、地域における学習活動とか、学校のリテラシー教育とか、交通社会においては各地域に安全協会等がございますように、そういったものを普及啓発する組織体をつくる活動資金にするとかいうふうなものを早急に立ち上げる必要があるのではないかなというふうに、事業者からある程度、一定程度吸い上げる必要もあるというふうに考えております。
以上です。
○石井(郁)委員 それぞれの立場でのそれぞれのお考えがあると思いますけれども、どうもありがとうございました。
今の子供たちというのは、やはりまずゲーム世代ですよね。ゲーム機でもうほとんどなれている。バーチャルな世界に生きているとよく言われますけれども、それに加えて、今度はこういうネット機能つきの携帯でいろいろなことができる。だから、携帯が今や玩具になっているというのは、きょう本当はおいでいただく予定だった下田先生の言葉だったかと思いますけれども、そういう、言ってみれば危ない玩具を与えていいのかということになると思うんですけれども、非常にいろいろな問題を考えなきゃいけないというふうに考えております。
それで、一体日本でなぜこんな状態が蔓延しちゃったのかという問題ですよね。どうしていったらいいのかというのがあるんですけれども、先ほど尾木参考人から海外の状況もちょっと紹介されたと思うんですけれども、こういうネット機能つきの携帯を、言ってみれば、小学生は今三割がもう持っていますから、その中にも持っていないとは言えないわけですよね。
だから、こういう携帯の普及というのは一体世界にあるんでしょうか。また、こういうことに対して学校や親や社会的にどういう教育をしているのかという問題で、ちょっと二、三、例がございましたら教えていただきたいと思います。
○尾木参考人 いわゆる電話機能としてのは持っていますよね。この間視察に行ったときも、持っていますけれども、やはりネット機能のこれだけ高機能のは持っていませんね。それでも持つ子はもちろんいるわけです。商品として持つ子はいるようですけれども、その子たちの数が、先ほども申し上げましたけれども、限定されているんですよ。
つまり、非行で、先生方が大変気にしている子、親御さんも心配している子が、あるいは親の指導が入らない子が持っているという状況ですね。だから、その子たちに対しては、いわゆるネットの教育というよりも心のケアをしていっているんですね、カウンセラーがくっついたりして。そして、心が充実してくると、そこのところを脱出していけるという、かなり正当なアプローチの方法で、我が国でやれるかなというようなことを思ったんですけれども、そんなことですね。
それと、サウジアラビアなんかは、もう国家として携帯の電話機能しか持たせていない。フィルタリングを上でかけちゃって、機能ができないようにしてあるとか、そこら辺はやはり考えておられるなというふうには思いましたね。
それから、アメリカなんかにしても、会社そのものが、変なのが入っていかないように規制をされていたりとか、やはり日本の場合、スタート地点から何か規制のない状況で、あれよあれよといっている間に広がっていってしまったというふうな感覚を僕は持っています。
だから、今ちょうどここでみんなで振り返って、さてというので考えるのにいいんじゃないかと思います。
○石井(郁)委員 私たちももっと研究をしなきゃいけないとは思うんですけれども、一定の法規制だってあると思うんですよね。しかし、それも、大人も十分知らないし、ましてや子供たちは知識としても持っていないという状況もあるかと思いますし、また、これからあるいは政治の上で、あるいは行政の上で取り組めることは何なのかというようなことについても考えていきたいというふうに思っているところです。
最後になりますけれども、きょうはやはりネット犯罪というか、ネット上のいじめというのが今深刻だということが共通して出されましたので、そのことで特に小森参考人に伺いたいと思うんです。
私たちも、いじめが日本社会の深刻な病理であり、やはり子供たちが命を奪われるというか、そういう意味では本当に教育の世界にあってはならないことだということで、いろいろな取り組みをしてきたつもりなんですけれども、しかし、今ネット上ということで新たな展開というか、陰湿さ、広がり等々を持っているということで、先ほど小森参考人からは、子供も先生も、もううつ病にまでなってしまっているということも言われました。
だから、今ネット上のいじめをどうするかということは一つあるんですけれども、きょうはちょっとそこはもう時間ですのでおきまして、小森参考人が御自身の大変本当に悲しい体験から今立ち上がっていろいろ講演をしていただいているわけですけれども、その中で、私、大変印象深く思ったんですけれども、いじめはしちゃいけないとか、命は大切にとか、そういう言葉は使わないとおっしゃったことは、私、とても重要な御指摘だなと思ったんですよね。
というのは、私、文部科学の委員会の中に長くいますけれども、大体、政府、文部科学省はいつも、いじめはしちゃいけない、命を大切に、そういうペーパーを乱発してきましたから、そういうことを幾ら言っても子供の心に響いていなかったんですよね、きっと。という意味で、このあたりのことをもう少し、なぜ、命を大切に、そういう言葉を繰り返すことがいじめをなくすことにつながらないんだというあたりを少し教えていただければと思いました。
○小森参考人 私は、講演という形態と、あと展示会という形態で活動しているんですけれども、その講演を聞いた後、あと展示を見た後、子供たちが、もしかして命って大切かもしれないとか、人を傷つける行為は本当は人としてすごく卑劣な行為だったのではないかとか、あと、もしかして自分もやっていたのではないかということを本人に気づいてもらうためには、どんな話を、どんなプログラムを提供したらいいのかなというところがこの問題のポイントだと思うんですね。
子供たちに最終的に感じてもらうためには、私たちが答えを言ってはならなくて、私たちが思っているお仕着せのようなものを子供にぽんとはめ込むのではなく、一人一人、同じ話を聞いても感じることが全部違ってもいいしという、そんな基本的なところなんですけれども。
ちょっとうまく言えないんですけれども、お互いが違っていて、そのお互いを認めることができたときに解決するのではないかと思っているのと、あと決定的にわかったのは、やはり大人が子供にいじめちゃだめと教えながら、その先に、でもやられたらやり返してもいいのよと教えてしまっているんですね。そして、やり返すぐらいの強さが大切だまで教え込んでしまっている中で、本当にたくさんのいじめが生まれている。いじめが行われているのは学校という現場だけれども、いじめを生んでいるのは私たち大人だったんだということにはっきり気づいたんです。
その中で、子供たちと一緒に考えながら、子供たちも答えを探す、大人も答えを探す、命って何なんだろう、心って何なんだろうと問われたときに、私たち大人自身も答えを持っている人は少ないので、一緒に考える中で解決策をお互いが見つけるというふうなプログラムというか、プロセスを今たどってやっています。
○石井(郁)委員 少し時間が押していますから、協力したいと思っておりまして、本当に、教育の原点というか、教育というのはそうなんだろうなというふうに思うんですよね。だから、百遍お説教する、携帯でこういうことをしちゃいけないよ、ああしちゃいけないよと、大体、いけない、いけないというのが日本の伝統的な教育かな、こういうふうに思うんです。
しかし、おっしゃいましたように、本当に子供たちも心を開ける、こっちも通じ合えるような関係をつくる、そこが非常に大事だなというふうに思っておりまして、きょうはそれぞれの立場から、今の日本の社会と、そして子供が抱えている問題についてお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。私たちも、立法府にいる者として、いろいろこれから取り組んでいきたいと思っております。
本当にありがとうございました。