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「つまらないし、常に不安。でも…」同じ工場の派遣社員

2008年6月17日17時20分

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 「勝ち組はみんな死んでしまえ」。東京・秋葉原の無差別殺傷事件で逮捕された加藤容疑者は派遣社員などとして各地で働いていた。加藤容疑者が書き込んだとされる携帯サイトの掲示板には、職場への不満や立場の不安定さが書き込まれていた。同世代の派遣社員たちは似たような不安を抱きながらも、事件には憤りを感じている。

 加藤容疑者は静岡県内の自動車工場で、派遣社員として働いていた。塗装工程が担当で、時給は約1300円。「人が足らないから来いと電話がくる。俺(おれ)が必要だから、じゃなくて、人が足りないから」。サイトには、仕事や生活への不満とみられる内容がつづられていた。

 加藤容疑者が働いていた工場で働く20歳代の男性派遣社員は、ほぼ2時間ごとにある休憩まで、立ったままでの作業を繰り返している。作業場では、ずっと一人。「つまらないし、気が変になりそうになったこともある」

 大学卒業後、就職に失敗した。今の収入に不満はないが、ボーナスが出て、定期的に昇給する正社員になりたいと思う。「派遣のままでは、いつクビを切られるかわからない不安が常につきまとう」

 ただ、加藤容疑者の気持ちは理解できない。「だからって人を殺していいわけがない。大多数の人は不安を抱えながらも頑張っている」

 同じ工場の別の派遣社員の男性(28)は「同じ派遣社員として、迷惑な話。肩身の狭い思いをしている」と憤った。

 派遣社員に関するリサーチを続けるNPO「派遣労働ネットワーク」が派遣社員を対象にしたアンケート(06年)によると、派遣社員になった理由で最も多かった回答は「正社員として働ける適当な企業がなかったから」で約49%。「30歳を超えてしまうとなかなか仕事がない」「次回更新の有無が不明なので、とても不安」との声もあった。

 派遣社員や契約社員など非正規雇用の労働条件改善を訴える「派遣ユニオン」の関根秀一郎書記長は「派遣という働き方が事件のすべての原因ではないが、背景としては大きい」と指摘する。関根さんによると、非正規雇用労働者の工場での作業中は会話をする余裕がなかったり、長時間労働の後は工場の寮に帰るだけの生活だったりすることがある。

 雇用調整の対象にされる派遣社員も少なくない。「5年10年後の自分が見えない、絶望の中に置かれる。容疑者は自分に歯止めをかけるものも、守りたいものもなかったのではないか」

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