厚労省の第三次試案(医療事故死亡での原因究明・再発防止)が公表されました。
多くの関係者の論議によって、厚労省の試案は修正され、問題点も明確になりつつあります。あと一年、試案で三〜四回ほど努力を積み重ね、他省庁との実効的な調整を進める事が出来れば、制度として禍根のないものに近づけるだろうというのが、率直な感想です。逆に、今、この第三次試案で良しとすれば、折角の関係者の論議の深まりが中断され、拙速な判断で決めたこの制度によって、医療の問題点は放置され、固定化されてしまうことになってしまいます。
現実の医療状況は、ますます厳しくなってきています。「医療事故死亡での原因究明・再発防止」に限らず、厚労省が抱える領域には多くの課題が山積しています。医療関連に限っても、地域医療の疲弊、産科救急医療問題、高齢者医療制度、療養ベッドの削減、リハビリ等の診療制限、メタボ検診、医師の技術料抑制、違法な医療労働放置など、いずれの課題も、解決の目途は立っていません。
第三次試案の問題は、こうした医療行政が抱える絡み合った関連課題の一つであって、孤立した課題ではありません。そして、この問題は厚労省単一省庁の努力で解決できるものでもありません。法務省、総務省等との十分なすりあわせが必要ですし、何よりも政治決断により医療関連予算の適正な予算確保も前提となるでしょう。
医療事故の原因究明・再発防止を目的とした制度が、結果的に、真摯に救命・診療する医師への懲罰制度となるようでは、萎縮医療が加速し、本来、国民が享受すべき医療は崩壊してしまいます。ですから、医療安全調査委員会の制度は、充分な検討を重ねる必要があるのです。
第三次試案では、根本的な修正はなく、このままでは患者さんにとって好ましい診療環境には繋がりません。調査委員会の本来の目的である、原因究明、再発防止を、阻害する重大な問題点を、二次試案に引き続き継承しているからです。
全国医師連盟(準)世話役として、医療安全調の拙速な新設には反対いたします。
H20.4.8 全国医師連盟 設立準備委員会 世話人
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