6月11日、参議院で首相に対する問責決議案が野党などの賛成多数で可決された。
その影で、ひとつの事件が発生していた。 問責決議案により国会審議が空転することを見越して、これに先立って被害者救済などを趣旨とする多数の法案がまとめて採決され、計13法が成立した。参議院ホームページから引用する。 ・愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律 ・原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の一部を改正する法律 ・ハンセン病問題の解決の促進に関する法律 ・石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律 ・空港整備法及び航空法の一部を改正する法律 ・学校保健法等の一部を改正する法律 ・地震防災対策特別措置法の一部を改正する法律 ・青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律 ・オウム真理教犯罪被害者等を救済するための給付金の支給に関する法律 ・特定商取引に関する法律及び割賦販売法の一部を改正する法律 ・少年法の一部を改正する法律 ・携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律の一部を改正する法律 ・地方自治法の一部を改正する法律 ◇ 「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律案」が可決し、2006年度(平成18年度)決算・国有財産増減及び現在額総計算書が否決不承諾、国有財産無償貸付状況総計算書が可決承諾された後に、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の一部を改正する法律(改正被爆者援護法)案」、ならびに「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律(ハンセン病問題基本法)案」が一括採決される運びとなった。 岩本司・厚生労働委員長が両法案の趣旨を短く説明し、厚生労働委員会での趣旨聴取・採決の結果、「両法律案はいずれも、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定」したことを報告した後、投票ボタンによる一括採決が行われた。 投票が終了すると、江田五月議長は、手元と周囲を何度か見比べた後に結果を報告した。 投票総数 234 賛成 233 反対 1 「よって、両案は可決されました」 ええっ! なんと、全会一致が崩れてしまった。 ◇ 報道では決算の不承諾や首相問責決議ばかりが大きく取り上げられた。しかし、これもまた大事件である。 なぜなら、こうした救済法の類では「全会一致」を背景に、強力な、超法規的な内容も含む救済措置が取られることが多かったからだ。 最近目立った例では、私が訴訟関連記事を書いていた薬害肝炎救済法(1月)も挙げられる。にもかかわらず、今回は両法に蟻の一穴が開いてしまったためである。 反対票1票の原因も、参議院ホームページに公開されてしまっている。 「反対1」はなんと、円より子・民主党副代表の「押し間違い」によるものと判明、円氏は記者団に「申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と述べたと一部(本当にごく一部だった模様)報道が伝えていた。 押し間違いで投票が確定してしまう仕様も問題ではあり、再発防止の必要があるともいえる。しかし今回に限っては、首相問責決議の前に救済立法をまとめて通すことにした流れがあった。また、わざわざ投票直前に厚生労働委員長から「全会一致をもって可決すべき」という報告もあった。 にもかかわらず、それでも間違ってしまう方が問題ではないかと考えるのだが、いかがだろうか。 [参考リンク] 参議院ホームページ(会議録・投票結果などあり) http://www.sangiin.go.jp/
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