東京都八王子市内で小学一、四年の女児に「おじさんはカメラマンだ。写真を撮らせてくれ」といって近づき、裸にして写真を撮り、誘拐、強制わいせつ容疑で東京・八王子署に逮捕された男が、十日までの警視庁の調べに対し、「別の女児を殺し、西多摩郡奥多摩町の山中に埋めた」と自供した。このため同庁の深川署捜査本部で調べたところ、自供どおり、幼女の頭部らしいものが見つかった。この男の言う「女児」は、今年六月、何者かに誘拐され、首と両手首を切断された死体となって埼玉県飯能市の霊園で見つかった江東区東雲の女児(当時五歳)を指しているとみられ、同本部は、この頭部を鑑定するとともに、男が誘拐殺人事件の容疑者とみて殺人、死体遺棄容疑で逮捕状を請求する。
逮捕されたのは五日市町小和田、印刷業手伝い、宮崎勤(26)。
直接の逮捕容疑は先月二十三日午後四時半ごろ、八王子市内で小学一年と同四年の姉妹に「おじさんはカメラマンだ、写真を撮らせてくれ」と言い、二人を近くの河原に連れ込み、小学一年の妹(6つ)を裸にし写真を撮った疑い。姉(9つ)は逃げ出し父親(35)に連絡、父親が駆けつけ宮崎を取り押さえ同署に突き出した。
自供によると、宮崎は今年六月六日午後、自分でいつも使っている車に乗って江東区の有明テニスの森公園に行った。その後夕方、殺害された女児の住む団地に回り、団地で誘って車に乗せた。しかし女児にささいなことでバカにされたためにカッとなって首を絞めて殺した。
さらに、宮崎は死体を自宅に運び、バラバラにして、頭部を西多摩郡奥多摩町梅沢地区の山中に、手首、足首を同郡五日市町の山中に捨てたと自供している。同本部は手首などの発見にも全力を挙げている。
宮崎は七月中旬、八王子署に逮捕されていたが、九日になって「女児を殺し、遺体を奥多摩町などに捨てた」と自供。同捜査本部が十日朝から捜索したところ、同日午前十時前、奥多摩町梅沢地区の山中から首から上の部分の遺体が発見された。
宮崎は写真屋の息子で明大中野高校を卒業後、東京工芸大学(二年)を修了。カメラの操作に精通しているほか、印刷工の経験から、脅迫状の作成に駆使された高度な製版・印刷技術も身につけていたとみられる。
これまでの調べによると、殺害された女児は頭部を第七けい椎から肩とほぼ水平に、両手両足をまちまちの長さでそれぞれ切断されていた。また、失跡時の着衣は、胸にPeppi・Beansの文字と熊の顔の絵が入ったクリーム色の半そでトレーナー、うす水色の半ズボン、白色パンツ、甲部外側にキキ・ララの絵柄の入ったピンク色のビニール靴だった。
捜査本部は今回発見された頭部と女児の死体の切断面が同じかどうか鑑定を急いでいる。
女児は六月六日午後五時ごろ、「友達と物を交換してくる」と母親(26)に言って家を出た後、同五十五分ごろ、自宅アパート一階にある区立保育園の前で保母に目撃されたのを最後に消息を絶った。五日後の十一日午前、飯能市宮沢の宮沢湖霊園で頭と両手足首のない死体で発見され、司法解剖の結果などから、誘拐直後に絞殺され、ノコギリと鋭利な刃物で切断されたものとわかった。
警視庁と埼玉県警は深川署と飯能署にそれぞれ捜査本部を設置、警察庁も準指定4号事件として捜査していた。
宮崎と入間市の事件、川越市の事件、まだ失跡したままの飯能市の事件との関連はどうなのか。これまでの調べに対し、宮崎は江東区の女児の事件との関連しか供述していない。しかし、一連の事件が同一犯との見方が有力だっただけに警視庁は今後、これら三件の事件との関連についても宮崎を厳しく追及する。
特に入間市の事件では犯行声明文やそれに添付された写真、また遺骨とともに入っていた九文字の犯行メモなどから印刷知識に精通したカメラなど精密機械に詳しい男との犯人像が浮かんでいた。宮崎は印刷業手伝いで、逮捕された事件では自ら「僕はカメラマンだ」と名乗るなど、カメラに詳しいことをうかがわせている。
さらに、入間市の事件で被害女児宅などに今年二月十日と三月十一日に郵送されて来た二通の「犯行声明」「告白文」はそれぞれ東京都の青梅局、武蔵瑞穂局から投函されており、犯人は都内多摩地区に土地カンがあると見られていた。宮崎の自宅もこの投函場所に近接した多摩地区にあり、これらの共通点が一層注目される。
遺体が見つかった西多摩郡奥多摩町梅沢の現場は、JR青梅線川井駅から歩いて十数分の山中。多摩川の近くで夏場はキャンパーでにぎわう場所。
※この記事は事件当時の新聞記事を転載しております。容疑者の呼称を付けないなど、現在と表記が違っておりますが、ご了承ください。
2008年6月17日