三重県伊賀市の診療所「谷本整形」で点滴治療を受けた患者が腹痛などを訴え、1人が死亡、多数が入院した問題で、谷本整形が94年の開業当初から点滴薬剤の「作り置き」をしていたことが16日、分かった。当時勤務していた看護師が毎日新聞の取材に対し証言した。
この看護師は開業当初から数年間勤務した。証言によると当時、点滴薬剤は看護師たちが毎朝、10人分程度を作り置きしていた。足りなくなると、新たに作り置きするか、患者の来院に応じて作っていた。
この看護師は作り置きについて「看護師が予約した患者のカルテを見て、患者を待たせないようにという気持ちで作っていた」と話した。衛生管理をめぐっては、谷本院長から院内を清潔にするよう厳しく指示されていたというが、「当時も1日約300人の患者が来ており、院長は患者を診察するので精いっぱいで(点滴薬剤の調合は)看護師に任せていた部分はあったと思う」と証言した。
また今回は作り置き薬剤を事務机の上の紙箱に保管し、次の診療日まで回していたことも明らかになり、問題の原因となった可能性が指摘されているが、当時はすべて調合当日に処分していたという。この看護師は「(次の診療日回しは)常識的に考えられない話だ」としている。
谷本広道院長は12日の会見で作り置きについて「以前はそういうことをたくさんやっていた」と認めていたが、いつごろから行われていたかは明らかになっていなかった。県などは今後、作り置きに院長の指示がなかったかどうか調べる。
三重県は16日までの調べで、谷本整形で同じ鎮痛薬の点滴を受け、その後連絡がついた376人のうち、点滴後に体調に異常を感じた人を63人と発表した。このうち死亡1人、入院18人(うち4人は既に退院)、通院10人。
谷本整形はホームページで、谷本院長名の「おわび」を掲載した。「断腸の思いです」などとつづられている。【福泉亮、田中功一、渕脇直樹】
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