すぐそこにある危機

第30回
天然記念物ヤマネの森、 道路や線路が各地で分断
つり橋かける救出作戦

文/藤田 香(日経エコロジー)
2008年6月16日

写真/湊 秋作(左)、キープやまねミュージアム(右)

 道路や線路が縦横無尽に走る日 本では、森を分断されて生息地を 失う動物が後を絶たない。国の天 然記念物で準絶滅危惧種に指定 されているヤマネもその1つ。体 重わずか18gの樹上に暮らす夜行 性のネズミだが、1匹の行動範囲 は甲子園球場の半分に当たる2万 m2と広く、森の分断が生息数の増 加を妨げてきた。

 山梨県北杜市にあるキープ協会 やまねミュージアムは、ヤマネの 保全活動に加え、分断された森を つなぐつり橋「アニマルパスウエ イ」の研究に20年前に着手。昨年 7月、北杜市の市道上に大成建設 や清水建設と共同で安価な橋を設 計・製作して設置した。

 ?20℃にも耐える赤外線カメラ で観察したところ、昨年8?11月 にヤマネとヒメネズミが890回も つり橋を利用したことが判明した (写真右)。橋は長さ13mのワイ ヤー製の三角形型で、雪よけのア ルミ屋根を乗せ、天敵から身を隠 す場所を設けたり、リスも通れる 工夫を施した。

 「建設費は200万円と、欧米の アニマルパスウエイの500分の1。 汎用性があり、どこでも建設でき る。森を分断する線路も多いので、 鉄道会社や国土交通省にも環境共 生技術としてぜひ導入を検討して もらいたい」と、湊秋作館長は全 国の森への普及を期待している。

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