北海道開発局発注の公共工事をめぐる官製談合で、国土交通省の現職局長らが逮捕された。国民の厳しい批判をよそに、摘発の手が及ばないとでも思っていたのだろうか。
札幌地検が談合を主導したとして刑法の競売入札妨害の疑いで逮捕したのは、同省北海道局長と出先の北海道開発局の元幹部二人。二〇〇五−〇七年ごろ行った河川改修工事の入札で、特定の業者に受注させるため、談合させた疑いがもたれている。
同開発局の公共工事では〇六−〇七年発注の農業土木関連工事四件の入札でも、事前に受注業者を決めておく典型的な官製談合を行ったとして、元部長ら三人が起訴されている。
近年、談合に対する国民の厳しい批判を受けて国、自治体とも公共工事の入札、契約制度の改革を進め、官製談合防止法も施行された。同開発局も入札監視の第三者委員会を設けるなどしている。しかし摘発の内容が事実なら、いまだ改革などどこ吹く風の、国民をばかにした振る舞いである。
同開発局発注の公共工事では落札率が90%を超え、ほかにも談合が疑われるものが多い。談合により発注側と業界のつながりを維持し、退官者の天下り先確保を図ってきたと指摘されている。
旧態依然たる発注機関と業界の癒着はなぜ一掃されないのか。
〇一年の省庁再編で北海道開発庁は国交省に統合され北海道局となり、北海道開発局も同省出先に変わった。だが同省に再編された旧建設省・運輸省・国土庁の間では、人事の交流がかなり盛んなのに、旧開発庁職員は北海道局と同開発局を往復するのみで、ほとんど「独立王国」に等しい。
明治以後、わが国の近代化の中で北海道は社会資本整備で特別の扱いを受けた。現在でも国の公共事業費の一割は、北海道につぎ込まれる。歴史的経緯から見て、必要な事業に必要な費用を使うのは構わない。だが公正な手続きを無視し、なれあいで一部公務員や業界を潤すのは許されない。
癒着の排除には、独立王国を解体し、閉鎖された世界で官製談合などの不正が生まれる可能性を徹底的に摘み取ることが必要である。
旧開発庁職員は、同じ国交省内の道路、河川、港湾の各局、農林水産省など他省の関連部局と人事交流を進め、業界との不正な結び付きの一掃はもちろん、公共事業について広い識見を養うべきだ。
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