ニュース: 政治 RSS feed
【主張】尖閣領海侵犯 毅然かつ冷静な対処必要
日本の領土である尖閣諸島周辺の日本領海を、台湾の抗議船と、同行してきた台湾の巡視船9隻が一時侵犯した。
台湾当局の船までが尖閣の日本領海を侵犯するのは初めてという。
台湾の巡視船は、不測の事態に備えて同行してきたとしているが、日本側の再三の警告を無視する形での領海侵犯であり、きわめて遺憾である。
政府は、領土問題がからむだけに安易に妥協することなく、毅然(きぜん)とした態度を貫くべきだ。
同時にいたずらに双方の国民感情を刺激することなく、冷静に対処し、問題解決を図ることを求めたい。日台離反をはかる扇動などに乗ってはならない。
無人・無主の島だった尖閣諸島は、1895(明治28)年1月14日の閣議決定で正式に日本領土に編入された。その後数十年、どの国からも異論が出ず、国際法的に完全に日本の領土とみなされていた。サンフランシスコ講和条約でも日本領土として扱われた。
それが1968(昭和43)年、尖閣諸島周辺に石油資源埋蔵の可能性が報告された後、中華民国(台湾)が71年6月、中華人民共和国が同12月に尖閣諸島の領有権を主張したという経緯がある。
また、78年の日中平和友好条約の締結交渉で、日本側は中国側に尖閣諸島の日本領有権の承認を迫ったが、当時の中国の最高指導者、トウ小平氏の棚上げ提案を受け入れ、禍根を残したという歴史も忘れられない。
14年後の92年、中国は国内法の「領海法」を制定、尖閣を台湾などと並べて一方的に中国の島としてしまったからである。
このように、主権、領土問題で妥協することは禁物だ。
今回の事件を契機に台湾では外省系(大陸出身者)住民の反日、抗日機運が最近になく高まっているという。背景には、抗日の歴史を持つ中国国民党の8年ぶりの政権奪還があるのかもしれない。議会も4分の3が国民党だ。
だが、大半の台湾住民の親日感情はそう簡単には変わるまい。今回の事件を日台友好強化の契機としたい。事件の土壌ともなった台湾漁民の尖閣周辺での漁業権問題なども早急な解決が必要だ。
日本に抗議声明を出し、駐日代表を召還した馬英九政権だが、日台離反の結末を熟考してほしい。「尖閣問題は話し合いで」という馬氏の指導力も問われている。