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【主張】岩手・宮城地震 都市直撃にも思い馳せよ
岩手・宮城内陸地震は、足元の浅い所で大きな活断層が滑るように動いて起きた。
直下型地震である。そして、その破壊力のすさまじさを見せつけた。がけ崩れだけでなく、山が崩れて移動した。まるでマクベスの世界である。
車がつぶれ、旅館が埋まり、道路が落ち、今も行方不明の人がいる。被災地では自衛隊も救助活動に取り組んでいる。救助と安否確認に全力を挙げてもらいたい。
今回の震災の特徴は、山地の崩壊の激しさである。
地下水を含みやすい一帯の地質が影響しているようだ。地震の揺れで足払いをかけられたように、底部から一気に崩れ落ちた可能性も指摘されている。
今回の地震は山間部を襲った。これが都市域で発生していたらどうだろう。大都市の住民は、想像力を働かせ、地震防災の教訓とすべきであろう。
都市の地盤が水を含んでいると地面の液状化が起きる。沈んだり傾いたり、浮き上がったりするビルが現れても不思議はない。山地ではがけが崩れ、都市ではビルや高速道路が痛手を受ける。
高層のマンションやオフィスビルは、本震が終わった後も数カ月間はしつこく繰り返される余震の揺れに悩まされる。その度にエレベーターは止まり、生活や仕事の場とすることは難しい。高層難民の出現だ。
都市の地震には、過疎地と異なり、膨大な人数の帰宅困難者の問題も随伴する。
直下型地震は、山間部で起きるとはかぎらない。日本は国土の70%が山地で占められているから多いだけだ。
国内の地震には、今回のような直下型と太平洋側で起きる海溝型がある。直下型を起こす活断層は、わかっているだけで2000にも上る。次は関東や近畿の都市域で動くかもしれないのだ。
列島は現在、地震の活動期に入っている。地震は国力さえ左右する。第二次大戦後、日本が急速な経済発展を遂げられたのも、この50年間が地震の静穏期と重なっていたからである。
政府は各種の長期計画の策定に大地震の影響を組み込むべきだ。温暖化対策を例にとっても、東海・東南海・南海地震という巨大地震をほとんど考慮していない。
地震は警告を発している。そのメッセージに耳を傾けよう。