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NIKKEI NET

社説1 北海道開発局は談合のための役所か(6/17)

 北海道開発局とは談合を繰り返すための組織なのか。懲りない面々とは彼らのことを指すのだろう。

 国土交通省の出先機関である北海道開発局が発注する公共工事を巡る官製談合事件で、札幌地検特別刑事部は16日、国交省本省の北海道局長ら3人を逮捕した。同局長は開発局を主導する立場にあり、残る2人も元幹部である。6月には同開発局の別の工事で元農業水産部長らOB7人も起訴、略式起訴された。

 捜査当局による真相解明はこれからだが、職員の天下り先を確保する狙いで発注工事の受注先を決める典型的な官製談合事件である。まさに組織ぐるみの犯罪だ。

 2005年以降、旧日本道路公団、旧防衛施設庁、福島、和歌山、宮崎の各県などによる官製談合事件が相次いで摘発された。国交省自身も07年3月に公正取引委員会から水門設備工事の談合事件に職員が関与していたとして、官製談合防止法に基づく改善措置を求められた。

 今回談合があったとされるのは05年に北海道開発局が発注した道内の河川改修工事である。世間の批判が「役人の犯罪」に集まり始めたさなかに、事件を起こしていたことになる。

 国交省は公正な公共工事の実施を指導監督する官庁である。様々な事件が発生するたびに入札改革など談合防止策を打ち出してきた。その模範とならなければいけない同省の現職局長が談合容疑で逮捕されたのだから事態は極めて深刻である。

 北海道開発局は旧北海道開発庁のもとに設置された国の出先機関である。01年の中央省庁再編に伴い国交省の地方局になった。道路、河川、港湾、農業土木と北海道内の国の公共事業のほぼすべてを扱っている。道外の他の機関よりも権限は大きく、独立性も高い。直轄事業と補助事業を合わせた開発局の事業費は08年度予算で8000億円を超す。

 開発局では02年にも港湾工事で官製談合が発覚している。元農水部長らが起訴された農業土木工事では不正防止に有効とされる総合評価方式の入札事業でも、談合を繰り返していた。どんなに新たな対策をまとめても、発注側が主導する官製談合では防ぎようがないだろう。

 官需への依存度が高いという北海道特有の事情もあるのだろうが、一連の事件をみる限り、開発局の談合体質の根は極めて深い。地方分権が求められるなかで、国の出先機関は見直しが必要だ。特に、公共事業を担う巨大な出先機関など、もういらないのではないか。

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