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社説2 日豪連携は戦略的に重要だ(6/17)

 アジア太平洋地域は世界の経済成長で中核的な役割を担い、国際政治への影響力も大きくなった。地域の将来を考えるうえで日米韓や日中韓の関係強化は当然だが、日本が忘れてはならない重要な国がある。米国とも同盟関係にあり、先進国として日本と共通の価値観を持つオーストラリアとの連携である。

 豪州では11年ぶりの政権交代で労働党政権が誕生。昨年12月に就任したラッド首相は中国通で知られ、日米豪の関係を重視したハワード前政権からの路線転換を懸念する声もあった。

 だが、首相は就任早々に京都議定書を批准するなど、環境対策や軍縮・核不拡散問題で主導力を発揮しつつある。日本の立場とも近く、日豪が協調できる分野は少なくない。

 あまり話題にはならなかったが、ラッド首相が先週、初来日した。福田康夫首相との会談に先立って広島を訪れ、核廃絶を訴えた。「温暖化対策で象徴的な場所」と京都にも立ち寄った。首脳会談では地球温暖化対策に向けた日本の貢献を評価した。「対日関係をさらに強化したい」と語った豪首相の熱意が伝わる。

 日豪は経済的な結びつきも深い。天然ガスやウラン、石炭など日本が輸入するエネルギー資源の約2割は豪州産だ。豪州産牛肉も日本のお茶の間ですっかり定着した。

 首脳会談後に発表した共同声明では豪州から日本への食料やエネルギー、鉱物資源の「安定供給の重要性」を強調した。そのためにも日豪経済連携協定(EPA)交渉の早期妥結は欠かせない。

 ラッド首相も「生活必需品を安価に提供する自由貿易こそ労働者の利益になる」と訴えている。豪側は特に牛肉や穀物、乳製品などの関税撤廃を求めており、日本の国内農業保護が交渉の障害になっている。

 農業政策の難しさは分かるが、例外品目なき自由化の道を模索しなければ進展は見込めない。日本側は、資源大国・豪州とのEPAを経済安全保障の重要命題と位置づけ、交渉を加速すべきである。

 EPAや環境、安保協力などを通じて両国が関係を一層緊密にすれば、アジア太平洋地域の安定にも寄与するはずだ。

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