「祝世界遺産登録」―。「登録延期」勧告から一転、念願をかなえた「石見銀山遺跡」(島根)の町並み地区では、商家の軒先にびらが張り出され、祝賀ムードが漂っていた。
国内十四件目の登録を達成してから四カ月後の昨年秋、余韻のさめやらぬ石見銀山遺跡を訪ねた。沿道に、世界的な銀山への飛躍に大きく貢献した岡山県早島町出身の鉱山師・安原備中守智種ゆかりの清水寺などがある遊歩道を散策しながら、唯一公開されている坑道「龍源寺間歩(まぶ)」に向かった。
祝日とあって県内外から訪れた多くの観光客が往来。山陰の山あいの静かな鉱山町は、「世界遺産」という価値ある看板を手に入れ一躍脚光を浴び、かつてないにぎわいを見せていた。
岡山にも世界遺産を―と、「近世岡山の文化・土木遺産群」で、ユネスコの世界遺産「暫定リスト」入りを目指す。日本三名園の後楽園と日本最古の庶民の学校で、講堂が国宝の閑谷学校の二つを軸に十四件を組み合わせる。いずれも岡山藩郡代で、建築・土木に多彩な才能を発揮した津田永忠が造り上げた傑作ばかり。
昨年、岡山など十三件が暫定リストの国内公募に応募。一昨年からの継続審査を含めると三十二件。すでに平泉(岩手)など九件が暫定リスト入りしている。競争率は高い。
秋口にも暫定リスト入りの答えが出る。登録への道は険しく、原爆ドーム、厳島神社(以上広島)や石見銀山遺跡のように一発では決められないだろうが、夢ではない。
(読者室・佐藤豊行)