日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。 |
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この情報の最も新しい更新日は6月16日(月)です。 |
イラク・サドル派 「対駐留米軍の 新組織を創設」 イラク人と戦わず (朝日 6月16日 朝刊) |
[概要]イラクの反米強硬指導者サドル師は13日、「駐留米軍と戦うために新たな武装組織を創設する」との声明を、AFP通信などを通じて発表した。 この声明で新組織の役割は「駐留米軍と戦う専門部隊で、イラク人とは戦わない」と説明し、「イラクが開放されるまで占領軍(駐留米軍)と戦い続ける」と述べている。 イラクのマリキ首相は今年3月、「法律を守らない集団を排除する」として、サドル派が率いるイスラム教シーア派民兵組織マフディ軍の掃討作戦を始めている。サドル師が新組織を創設した狙いは、マリキ首相の批判をかわし、イラク市民の支持を取り付けることと見られる。 [コメント]言うまでもなく、サドル師とは約5万人の反米武装組織マフディ軍を率いるシーア派宗教指導者である。今年3月8日には「マフディ軍が分裂した」とAFP通信で発表している。自分が出した停戦命令をマフディ軍の一部が守らず、民兵たちが「世俗的理由」で勝手に戦闘を始めていると主張していた。しかし私はこの分裂声明は”偽装工作”の可能性が高いと推測した。(What New 3月9日 参照) さらに3月末にはマリキ首相が始めたマフディ軍掃討作戦で、双方に300人を越える戦死者(民間人を含む)を出している。この時は、今年の10月の地方議会選挙のために、サドル派潰しを狙ったマリキ首相がシーア派内の主導権を拡大するためと分析された。 マリキ首相とサドル師はともにシーア派で、背後で隣国イランと強く結びついている。ただマリキ首相はやや親米的で、サドル師は反米強硬派という逆の立場である。これも背後で操るイランが、マリキ首相とサドル師の硬・軟を使い分け、イラクに駐留する米軍対策を行っているだけの話しだ。 そこに米大統領選でマケイン氏VSオバマ氏という本選挙戦が始まった。マケイン氏はイラン政策に対して、ブッシュ政権の政策を継続してイランに国際的圧力を強化するという。しかしオバマ氏はイランに対しては強い姿勢ながら、直接交渉で核兵器開発などの問題を話し合いで解決するという。当然ながらイランにとって、直接交渉を行うというオバマ氏の方が組みやすい。 米大統領選挙でマケイン氏の最大の弱点は、イラク情勢が悪化して、米兵の戦死者数が増えて、アメリカ国内で厭戦気分が広がることである。逆にいえば、イラクで米兵の死者数を増やせば、オバマ氏が優勢になるという見方ができる。その駐留米兵を攻撃できるのは、親米のマリキ首相のシーア派武装勢力ではなく、反米強硬派のサドル師のマフディ軍しかないのである。 サドル師はオバマ新大統領誕生に貢献し、結果、アメリカ軍をイラクから早期に撤退させることができる。また、イラク南部とイランのシーア派勢力を統合させ、中東のど真ん中にシーア派勢力圏を築くことができるのである。これこそがイランの保守派が求める”ホメイニ革命”(1979年)で提唱したシーア派原理主義の台頭なのである。その様な新しい中東の政治地図に怯えるのはサウジだけではない。世界のイスラム教徒で大多数の90パーセントを占めるスンニ派教徒にとって、不気味なシーア派の台頭に間違いない。 このように米大統領選に結びついたイラク情勢の変化を読み取り、サドル師は米軍を攻撃する専門の部隊創設で、政治的な影響力を増そうとしているのではないか。 そこで言えることは、現在の米政府にとって最大の脅威になったのは、アルカイダのビンラディン容疑者ではなく、マフディ軍を率いるサドル師ということになる。サドル師はアメリカの最優先・暗殺対象者になるということである。 |
巡視船と漁船が接触 行政院長(首相) 「開戦可能性も」 台湾、尖閣めぐり強硬 (産経 6月14日 朝刊) |
[概要]尖閣諸島・魚釣島近海の日本領海内で10日、日本の巡視船と台湾の遊漁船が接触(沈没)した事故で、台湾の劉兆玄行政院長(首相)は13日の立法院(国会)で答弁し、日本との領有権をめぐる争いでは、問題解決の最終手段として「開戦の可能性を排除しない」という強硬姿勢を示した。 劉兆玄院長は尖閣をめぐる問題で、開戦は最終手段になると発言し、その発言を確認する立法委員(国会議員)の質問に対して肯定し、「対話による平和解決を前提としたもの」と訂正した。台湾では事故をきっかけに反日的な報道が過熱している。 5月に政権復帰した国民党は従来から「一つの中国は中華民国」という虚構を抱え、沖縄県は「琉球」と表記して「自国領土」とみなし、尖閣への領有を主張し続けてきた。立法委員らが18日、海軍艦船で尖閣海域に展開し、台湾の主張を訴える計画もある。 [コメント]今の日本で若い人には、「一つの中国は中華民国」という言葉の意味がわからない人が多いと思う。これは中国の国共内戦に敗れた国民党(蒋介石総統)が台湾に逃れてきて、やがて大陸に反攻して中華人民共和国(現在の中国政府)を倒し、中国大陸を中華民国に統一するという意味の言葉(スローガン)である。 もし国民党がこの看板を下ろせば、国民党は中国大陸から台湾に逃げ込んだ敗走者という意味に解釈される厄介な問題なのである。 それにしても、沖縄までも琉球と表記し、中華民国の領土としているとは驚いてしまう。しかし国民党が沖縄を日本領土と改宗すれば、尖閣諸島の領有権(法的根拠)まで失うことになる。 そのように歪んだ領土意識が台湾の尖閣問題の背景にあるのだ。もちろん日本と戦争してまで尖閣諸島を我がものにする気などない。まあ、一種のガス抜きである。 台湾が想定していた仮想敵国・中国の存在が、胡錦涛政権と馬英九政権の交流拡大で急速に陰が薄くなった。そのような環境で巡視船と遊漁船の衝突事故が発生した。台湾の民族主義が強く刺激されたことは間違いない。 巡視船の行動としては、日本領海に入ってきた漁船に対し、直ちに領海外に出るように警告する。さらには漁船に接舷して押し返すなどの実力行使を行う。さらには漁船を拿捕して取り調べるなどの行動基準が決まっている。しかし押し返す際に相手(遊漁船)が進路を保持したり、巡視船を押そうとすれば、沈没する可能性は一気に高まる。だから遊漁船の方も、全員がライフジャケットを着け、沈没に備えているわけである。(全員救助)。 まあ、日本はこのような時には、イライラせずに「大人らしく」振る舞うことが大事である。そこで私としては、今日の昼食に台湾料理のランチを食べに行くことにする。 |
中台対話再開 関係再構築 まず実務から 住民利益優先 政治問題棚上げ (毎日 6月13日 朝刊) |
[概要]北京で12日行われた中台窓口機関のトップ会談は、旅行証明書などを発給する事務所を相互に設置することで合意した。この事務所は大使館の領事部門に相当する業務を担うとみられ、将来は経済分野などの交流拡大への役割を想定しており、双方のトップが「両岸住民の共通の利益」に合致すると口をそろえる。中台トップ会談は独立色の濃かった陳水篇政権8年間の終焉とともに実現した。 現在、台湾からビジネスマンやその家族を含め、年間約400万人以上が中国を訪れているが、香港やマカオなどの旅行社に書類を送って必要な手続きをせざるを得ない。一方、中国住民の台湾訪問は学術交流目的などに限られ、年間30万人以下と少ない。5月20日に発足した台湾の馬英九政権にとって、同事務所開設で渡航手続きが簡素化され、中国住民の訪台が拡大すれば、台湾経済の浮揚につながり、得点になる。 中台関係の安定を望む米国の意向と、中国の胡錦涛主席の柔軟姿勢を受けて、馬政権では「独立もしないが、統一もしない」と公約をする。双方とも、「一つの中国」などの政治問題は棚上げされたままだが、これから胡錦涛政権と馬英九政権がどこまで踏み込んだ議論ができるかは依然、不透明だ。 [コメント]同紙によれば、今年3月に馬政権の発足が内定した時、中国は今春から食品価格上昇を抑えるため穀物類の輸出を原則禁止していたが、例外的に台湾に対して、9月末までにトウモロコシ30万トンの供給を認めたという。中国政府は台湾向け輸出関税を免除し、国内と同じ扱いをするように税関に指示している。 また今回合意した中台の(週末)直行チャーター便は7月18日から本格運用する。金〜月曜日に中国の北京、上海、アモイなどと台湾の台北、高雄を往復する。当面は1週末ごとに18便に限定するが、増便や路線拡大を進めることに合意している。直行便では時間、費用ともに今までの半分程度で済むとの試算がある。解禁された中国人観光客が台湾を訪れる予定だ。(この部分、朝日新聞 6月13日 朝刊より) すでに上海では、最も目立つ繁華街にある巨大な看板は台湾企業のものと聞いた時から、中台の関係は後戻り出来ない関係と確信した。台湾側が「独立もしないが、統一もしない」と中国側に強く主張しても、この発展する関係は双方に政治的な影響を与えない。それこそが中国人が最も得意な外交戦略なのである。 気がつけば台湾の主要な工場は大陸側に移転し、台湾には大陸側から中国のハワイと化して観光客が押し寄せるだろう。中国側から台湾を観光訪問するには、中国政府のパスポートが必要という原則もなくなる可能性がある。ちょうどEUのように交通の自由、経済活動の障壁撤廃に進むことは明白なのだ。さらに進んで”共通の通貨”まで現実化する可能性もある。 日本は古くさい”中台対決”といった意識を早く払拭して、新しい中台一体化体制に対応することが必要だと思う。石原都知事のように”親台湾派”という言葉は死語になった。 それでも、さすがに台湾に中国海軍の潜水艦基地が出来ることは予測できないが、台湾に向けられた中国軍の短・中距離弾道ミサイルがどのように再配備されるか、日本は最優先事項として厳重に監視する必要がある。 ちなみに中国の中距離弾道ミサイルには、海自・イージス艦配備のSM3対弾道ミサイルでは対抗できない。ミッドコースで高度1000キロ以上を飛翔する中距離弾道ミサイルでは、射程が400〜500キロのSM3では迎撃できないのである。日本のMD配備で「ドブに捨てた1兆円」を諦めて、アメリカで開発中の新たなMDを配備するのか。その未来型MDでも中国が多弾頭などに改造すると、仮に50隻のイージス艦配備でもミサイルを迎撃するのは困難になる。 日本に対する中国の軍事的な脅威については、新しい視点と思考から、今までとはまったく異質の戦略を構築する必要があると思う。今までの中国脅威を分析した軍事専門書は陳腐化してもう読めない。これが日本の中国脅威論の現実なのである。 |
中国・四川大地震 核施設被害 全容見えず 綿陽市一帯 軍は「安全」強調 (読売 6月12日 朝刊) |
[概要]四川大地震では被災地の綿陽市一帯が、中国の核兵器の研究開発、生産、貯蔵の中心であることから、軍事専門家らの注目が集中している。しかし地震発生から1か月たっても、核施設の被害状況は明らかにされず、実態は不透明なままだ。 綿陽には中国版「米ロスアラモス研究所」と称され、中国の最高レベルの核専門家が顔を揃え、核兵器開発を一手に担う「902所」がある。また綿陽市の北にある広元には、弾道ミサイルの核弾頭とそれに使うプルトニュームを製造する従業員3万人の「821工場(白竜江核基地)」がある。このふたつは中国の核戦略を支える心臓部といえる。 米国で発行されている中国語の月刊誌「多維」(6月号)によると、核兵器用プルトニューム抽出の原子炉は綿陽から車で2時間のところにあり、核兵器倉庫は綿陽の北で震源地に近い山中のトンネルにあるという。震源地から核関連施設までは60キロ〜140キロ以内にある。 綿陽一帯に核関連施設が集中したのは、1960年代の毛沢東時代に米ソの戦争に備え、工業基地を沿岸部から内陸の山間部に移した「三線建設」のためである。山を爆破してトンネルを造り、研究所や工場を建設した。 軍は「すべての核施設が安全」と強調するが、「多維」誌のよれば821工場で建物が倒壊し、停電、断水などの被害があり、死傷者も出ているという。しかし軍事専門家の間では、「漏れ伝わる被害は氷山の一角」という見方が強く、今後の核戦略にどの程度の影響が出るかは未知数だ。 [コメント]綿陽市周辺にある中国の核兵器研究施設と、核弾頭製造工場の被害について、中国軍が公表する可能性はゼロである。特に山間部のトンネル内部に米ソの核攻撃から防御するために作られた核弾頭製造工場などは秘匿性が高くなる。四川大地震の発生エネルギーがわかっているので、工場や施設の被害を公表すれば、トンネルの耐爆性がわかってしまうからだ。 平地にある工場や研究施設なら、偵察衛星でかなり詳細に被害状況を知ることが出来る。しかし核実験と違って微量でも空中に核物質が浮遊する可能性は低い。また平地でも地下に核施設を作る可能性が高くなる。だから地震被害の放射能漏れは、偵察衛星から核防護部隊の車両や、防護服の兵士の動きで探知する。もし大量の放射能漏れが起きた場合、ロシアのチェルノブイリ原発事故(1986年)のように巨大なコンクリート壁を築いて、放射能を封じ込める工事を行うかに注目している。 実はこのほかに、核施設の被害を探る重要な情報収集方法がある。それは日本が喜界島(鹿児島県)に設置している中国向けの電波情報収集(盗聴)施設や、在日米軍が沖縄の航空部隊で行っている電波情報収集である。その他に、宇宙で静止して地上のマイクロ通信が飛び出してくる電波を傍受する盗聴衛星(米)もある。 今回は山間部の立ち入り禁止措置からスパイを潜入させるとか、35時間飛行可能な無人偵察機(グローバルフォーク)を飛ばすといった情報収集は難しい。宇宙の偵察衛星も地下施設の情報収集には限界があることから、先にあげた電波傍受(盗聴)部隊の情報収集が中心となる。それら膨大な盗聴電波を解析することで、日米が連携して中国の核施設の被害状況を知ることが可能になる。今頃は喜界島の関係者や情報本部電波部(旧2別)は忙しい毎日だとお察しする。 |
緊急の呼び出し 本日の更新休止 (6月11日 水曜日) |
今日の早朝に、緊急の呼び出しがありました。その仕事は午前中に終了すると思いますが、午後にHPを更新できるかわかりません。とりあえず、今日の更新は休止させて頂きます。
せっかくアクセスして頂いたのに、申し訳ありません。 |
秋葉原・無差別殺傷事件 ナイフ6本 2日前購入 ダガーナイフ 法の規制外 (毎日 6月10日 朝刊) |
[概要]8日、東京・秋葉原の通り魔事件で現行犯逮捕された加藤智大容疑者(25)は、事件の2日前の6日、福井市のミリタリーショップで今回の犯行に使った凶器のダガーナイフ(刃渡り13センチ)など6本を購入していたことが分かった。 ダガーナイフは野外の日常用具として使われる片刃のサバイバルナイフではなく、対人用の武器として設計された両刃のナイフだった。刃渡り15センチ以上の刃物所持を許可対象とする銃刀法の規制外で、販売店やインターネットで容易に購入が可能だ。 ダガーナイフは片刃のサバイバルナイフと比べ、刃の切れ味は劣るが、突き刺して相手を殺傷する能力には優れている。 銃刀法では刃渡り6センチ以上の刃物を理由なく持ち歩くことを禁じているが、刃渡り15センチ未満だと所持するだけでは規制がない。(15センチ以上は都道府県公安委員会の許可が必要) 警察庁は昨年12月に銃刀法を改正し、刃物の不法携帯を「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」から「2年以内の懲役または30万円以下の罰金」に改めた。今回の事件で、警察庁は「ナイフの一律な規制強化は難しい」とさらなる規制には否定的だ。 [コメント]火薬を使った小銃(火縄銃)が誕生するまで、人間が手で持つ武器には、斬る、突き刺す、殴り倒す、を目的にした刀や槍や弓やこん棒だった。ダガーナイフが生まれたのは、ヨーロッパの中世の時代で、馬に乗り、重い甲冑をまとった騎士が出現した頃である。甲冑によって従来の武器が通用しなくなり、騎士を馬から落とし、その騎士に馬乗りになって、甲冑のすき間から刺し殺すためダガーナイフが使われた。昔から敵味方に関係なく、深い手傷を負った兵士に対して、トドメを刺す時に使う場合もあった。(現在はモルヒネ3本で安楽死させる)。 私は初めて実戦用のダガーナイフを見たのは、カンボジア国連平和維持活動(国連PKO)でフランスの外人部隊を取材したときである。その時の兵士の一人が、アメリカのグリーン・ベレー(陸軍特殊部隊)の隊員用に特別に作られたものを持っていた。片手にナイフを構え、それを横から見れば、普通の銃剣やサバイバル・ナイフのようにしか見えないが、ナイフを手にとって正面から見ると、わずかに両刃の全体が回転するように曲がっていた。相手を刺した時、刃が”ねじ釘”のようにわずかに回転し、小さな力であっても奥深く刺して致命傷を与えるためである。 私は、日本では両刃のナイフの所持はすべて銃刀法で禁止されていると思っていた。ダガーナイフでも15センチ未満であるなら、所有することは禁止されていないというこの記事に驚いた。もしスクリューの様にわずかに回転したダガーナイフなら、満員電車の中で周囲の者に気づかれることなく、わずかな動きで背後や横から腹部を深く刺し、かつナイフを抜くことが可能だからだ。 この記述を読めば、多くの人が驚き、危険な知識(情報)だと感じるかもしれない。しかし秋葉原で起きたことは、そのようなことが現実に起きたのである。犯人が短時間(約5分)で7人を殺したのは、トラックによる衝突(打撃)もあったが、ダガーナイフが使われたことで、深い刺し傷を与えたことも原因があるのだ。 私はダガーナイフは刃渡り6センチ以上のものは銃刀法で所有も禁止すべきと考える。今回の事件でダガーナイフの威力に気がついた者が、次の凶行を起こさせないためにも厳重な規制が絶対に必要である。 |
イージス艦事故 週内にも 審判申し立て CICレーダー責任者も (朝日 6月6日 朝刊) |
[概要]海自のイージス艦「あたご」と漁船清徳丸が衝突した事故で、あたごで周囲の見張りをする戦闘指揮所(CIC)の当直員が、清徳丸など漁船の動きを継続的に監視していなかったことが、横浜地方海難審判理事所の調査でわかった。 CICは常に周囲の状況をレーダーで監視し、他船の動きを艦橋に報告する。あたごでは通常、艦橋の1台、CICで2台のレーダー指示器を使っている。指示器の一部には、記録の機能があるが、演習や訓練時に記憶するが、事故時の記録は残っていない。 CICには7人の当直が基準だが、事故7分前の2月19日午前4時頃に当直が交代するまで、3,4人しか勤務しておらず、周辺レーダーの監視を怠っていたという。そのため清徳丸を含む漁船の動きの変化を、艦橋に的確に伝えていなかったと理事所はみている。(交代後は基準の7人が勤務していた) [コメント]CICとというのはイージス艦の頭脳とよばれる戦闘指揮所で、敵からあらゆるタイプの攻撃を受けても、被害を最小限に抑えるように、最もダメージを受けにくい艦の中央部で窓のない場所に設置されている。また艦橋とは艦を動かして航海するための指揮所である。高い場所に設置され、広く周囲が見渡せるように前方・左右と大きな窓で囲まれている。 あたごのCICではあらゆる脅威を想定して、交戦の指揮を執る。その脅威の中には、漁船やプレジャーボートに偽装した自爆テロ船も含まれる。CICの対水上レーダーはそのことを警戒している。そのままのコースであたごに接近すれば、衝突するコースに入っている漁船を探知し、艦橋の航海長(当直士官)に通報する。海難審判理事所は衝突事故の原因に、CICがこの業務を怠ったためと認定したという意味だ。 またイージス艦の艦橋には、別に航海用レーダーの指示器があり、CICの補助がなくとも艦橋独自で周辺の海をレーダーで把握できる。衝突事故では、この艦橋のレーダーも見ていなかったという2重のレーダー・ミスである。見張り員が目視による周辺警戒のミスを加えると、3重のミスが重なったヒューマンエラーでの衝突事故である。 もちろん清徳丸には責任がないわけではない。清徳丸も見張りを怠り、イージス艦との衝突回避行動が遅れたという過失は存在する。 さてここで、この衝突事故はあくまで海難事故の一種で、軍事専門家が扱うようなものではない、という意見があると聞いた。本当にそうだろうか。イージス艦が航行中に改造漁船などの自爆攻撃からどのように対処しているか、そのような防御システムを知っておくことは無駄ではない。そのためにイージス艦にどのような人員が配置され、どのようなハイテク機材が監視のために組み込まれているのか。それを知っておくことは重要な軍事専門知識になる。 ※このコメントの部分で、官舎警備の甘さを指摘する記述をしましたが、読者の方の「危険すぎる」というメールがあり”削除”しました。私としては、軍事は兵器などのマニアチックな興味だけでなく、国防全体の視点から軍事を論じるべきと思って書きました。 ガソリンを積んだタンクローリーがテロリストに奪われ、大都市の地下街に大量のガソリンが注入されるといった例や、新幹線の先頭車両に爆弾を仕掛けられるということへの注意喚起です。そのことはかなり改善されたと思っています。 |
きょうアフガンに調査団 陸自派遣を検討 ISAFには不参加の方針 (産経 6月7日 朝刊) |
[概要]政府は6日、アフガンとスーダンに陸上自衛隊の部隊派遣に向けた本格検討に着手した。アフガンには7日、内閣官房、外務、防衛両省からなる調査団を現地に派遣する。両国とも陸自施設部隊による復興支援活動を念頭に置いており、アフガンでは米軍などのニーズが高い空自輸送機の物資輸送も検討している。そのため空自部隊が拠点とする候補地の調査を行う予定。 日本の調査団はアフガン全土に展開し、治安活動を行う国際治安支援部隊(ISAF)の担当者と協議するが、自衛隊のISAF参加は憲法違反の疑いがあるとして参加しない方針。現地の治安情勢について意見交換を行う見通し。しかしアフガンへの自衛隊派遣には国会で根拠法を通す必要もある。 複数の政府筋によると、アフガンに派遣される陸自部隊は、陸上の施設復旧(神浦・・・道路や橋の修復)や、医療活動を検討している。スーダンでは、比較的治安が安定している南部で国連平和維持活動(PKO)協力法に基づいた道路整備などの協力を行うことが検討されている。 こうした任務には先遣隊による現地調査や入念な調整が必要になる。このため、政府はアフガンへの現地調査団の派遣や、スーダンの首都ハルツームにある国連スーダン派遣団(UNMIS)司令部に自衛官を先行派遣して、7月の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)で日本の貢献姿勢をアピールしたい考えだ。 ただ、アフガンとスーダン両国に陸自部隊を同時に派遣することは「物理的に困難」(陸自幹部)で、部隊派遣に向けたハードルは高いのが実情だ。 [コメント]アフガンに陸自部隊を派遣する構想は、1年前の安倍政権時代(06年1月)に始まり、ISAFに参加することがほぼ決まっていた。安倍首相は日本の首相として初めてNATO本部で演説し、自衛隊をアフガン(ISAF)に派遣することを語っている。この件は麻生外相(当時)もえらく熱心で、自身もEUやNATO本部に働きかけて、自衛隊のアフガン派遣を強く提案していた。 ところが07年になって民主党の小沢代表がインド洋の海自輸送艦の給油問題から、陸自をISAFに派遣すると言い出して、一気に与党がそろって「自衛隊のISAF派遣は憲法違反」と逆の主張をし始めた。 すなわち陸自部隊のアフガン派遣は党利党略で”賛成””反対”がぐるぐると変わる怪しげな動きを見せてきた。テレビ局にある資料映像を点検すれば、石破防衛相が小沢氏の提案に対抗して、「アフガンのISAFに自衛隊を派遣することは憲法違反だ」という語る映像が残っていると思う。 そして今回は、アフガンに陸自部隊を派遣するが、憲法違反だからISAFには加わらないという。日本の身勝手に呆れるばかりである。そんな理屈が戦場で通用するわけがない。 またアフガンで行うのは、陸自の施設(工兵)部隊が道路や橋を直すという。また空自・輸送機部隊はイラクから徹底して、アフガン国内で米軍の物資輸送を再開するという意味である。アフガンで医療活動を行いながら、農地へ灌漑施設を建設している中村哲氏の話しによれば、ISAFがアフガン北部や東部で行っている道路修復工事は、勢力を盛り返したタリバンやアルカイダ幹部が潜む山岳地帯に通じる道路で、明らかに軍事活動を想定した戦略道路だけという。 そのように考えていくと、今回の現地調査団の本当の目的は、7月の洞爺湖サミットに向けた「お芝居」という意味とわかる。すなわち日本政府は、国際的に注目されているアフガンやスーダン問題で、「やっている振り」「やろうとしている振り」をするために調査団を派遣しただけである。本気で陸自部隊を派遣する気はない。 いつも言うが、そんな見え見えの姑息なやり方をするから、日本は世界の国から信頼をなくしていくのである。小泉首相、安倍首相、福田首相と、自分の政権さえ良ければいいという考えである。 |
韓国紙”中央日報”報じる 在韓米軍司令部 ハワイに移転か 2012年をめどに移転確定 (読売 6月6日 朝刊) |
[概要]5日付の韓国紙・中央日報は、複数の韓国軍と米軍当局者の話しとして、在韓米軍の陸軍部隊を統括するソウル・竜山の米第8軍司令部を、2012年をめどにハワイに移転することが事実上確定したと報じた。米韓両軍は、米国が同年4月に戦時作戦統制権を韓国側に移譲することで合意しており、竜山基地も同年、ソウル南方の京畿道平沢市移転する予定。 同紙によれば、司令部移転は米軍再編に関連した措置で、北朝鮮の脅威に備え、ハワイ移転後も実質的機能は韓国に残す。また、有事には司令部が直ちに韓国に戻って作戦遂行ができるよう、組織や施設は韓国内に現在のまま維持する方針。 [コメント]この記事のことは昨日のネット・ニュースで知った。本日の朝刊各紙で大きな扱いになるかと思ったが、これを報じたのは読売新聞の国際面だけだった。 すでに在韓米軍司令部がハワイに後退することは予測の範囲だったのだろうか。私としては、沖縄の海兵隊がグアムに移転することと同様に、10年以上前に在韓米軍の司令部が米国に後退することと、在韓米軍の司令部機能はそのまま残すと推測していた。 そのことは前方展開戦略を見直す米軍再編の最重要項目だと思ったからだ。もし北朝鮮の脅威が消滅すれば、米陸軍で韓国に駐留する第2師団も朝鮮半島から撤退すると思う。無論、沖縄に残っていた米海兵隊も米本土に後退する。 日本や韓国には米軍の司令部機能と、いつでも使える米軍施設と、日・韓部隊と巡回共同訓練にやってくる米軍だけになる。例外的な前方展開米軍は、米軍・横須賀基地の第7艦隊と原子力空母の母港化である。これは将棋の「飛車」や「角」のような役割で、日本と朝鮮半島をカバーする役割を担う。横須賀は東京の首都圏に近いという政治性と、横須賀基地周辺にある艦船修理施設が優秀だから手放せない。ハワイやグアムには横須賀周辺に匹敵する艦船修理施設はない。横須賀が使えないと、米軍艦船の修理や点検では米本土のカリフォルニアまで帰ることになる。 東アジアにおける米軍再編とは、アメリカが将来の中国やロシアの軍事力といかに対峙するかという戦略配置の見直しである。東アジアでは、自衛隊と米軍、韓国軍と米軍、そして自衛隊と韓国軍が間接的だが一体化することを意味している。 軍事面から見ると、すでに中国の台湾問題はほぼ解決済みで、朝鮮半島問題もいつ北朝鮮体制を崩壊させるかに重点が移っている。アメリカはその決定時期を中国に任せているが、アメリカはアメリカの事情で中国の決定を待ってはいない。 しかし米軍司令部の一方的な韓国からの撤退が、朝鮮半島の軍事バランスを崩して北朝鮮が動く可能性はない。北朝鮮にそのような軍事力は消耗しているし、中国のコントロール(管理)が厳しく効いて、自滅的な冒険もできないからである。 北朝鮮ができるのは韓国に心理戦を仕掛けて、牛肉輸入問題などで李明博政権を揺さぶるだけである。それも現在の李政権は北朝鮮の心理戦を観察しているだけで、北朝鮮に本格的な対心理戦を意図的に控えている。軍事作戦で行う心理戦は、相手によっては爆弾やミサイルを使って攻撃するよりも威力がある。まさに北朝鮮はその様な相手なのである。 |
米大統領選 2008 オバマ氏・マケイン氏、本選挙へ イラク撤退 対立鮮明 国民関心は経済政策 (朝日 6月5日 朝刊) |
[概要]民主党の指名候補の座を獲得したオバマ上院議員と、共和党のマケイン上院議員の立場を最も鮮明に分ける対立点は、イラクから米軍を撤退させるかどうかだ。 「オバマ氏が現場の状況や司令官の助言を無視し、イラク駐留米軍の撤退を始めれば、これまでの進展はすべて失われる」。マケイン氏は3日、ルイジアナ州の演説で、「(拙速な撤退は)犠牲の拡大につながりかねない」と警告した。 これに対しオバマ氏は「(マケイン氏は)勇敢な米軍人に犠牲を求めながら、イラクの政治家に何も求めない。(ブッシュ政権の)政策の継続を公約している」と批判し、「撤退は始めなければならない」と主張した。 5月下旬に全米で実施した世論調査(米民間調査機関)では、「イラクで賢明な決定を下しそう」なのは、マケイン氏46パーセント、オバマ氏43パーセントと、4月の調査では14ポイントあった差が縮まった。イラク情勢が再びやや悪化したことが響いたとみられる。マケイン氏には戦況次第で支持が揺らぎかねない弱みがある。 ブッシュ政権が「ならず者国家」と交渉を断ってきた国々に対して、オバマ氏は「タフな大統領」として直接交渉を行うと対立軸を鮮明にしている。しかし世論調査ではマケイン氏よりも「弱腰」のイメージがオバマ氏にあるようだ。 米国民の関心はイラクなどの外交問題より、景気が減速している経済問題に向いている。大統領選の優先課題に「経済」と答えた人は88パーセントと圧倒的で、「医療保険改革」「教育」「雇用」がいずれも78パーセントで続く。 マケイン氏の経済政策は法人税減税の恒久化など、共和党の伝統的市場経済主義指向が強い。オバマ氏の景気刺激策は、低所得者対象の戻し税などリベラル色が濃いものだ。最近の世論調査では、「景気を改善できる」が51パーセント対36パーセント、「医療保険改革実現」が49パーセント対32パーセントで、いずれもオバマ氏が優位にある。 [コメント]米大統領選でいよいよ本選挙の戦いが始まった。民主党のヒラリー・クリントン候補はまだ敗北宣言を行っていないが、いつまでも「敗者としての対応」を鮮明にしないと、本選挙のし烈な争いですぐに過去の人に押しやられてしまう。もはやヒラリー候補の主導権は奪われ、これからの運命は自分で決めるのではなく、いかに民主党に貢献できるかに左右される。そのことが自分の政治生命を存続させることになるからだ。だから自分が求める副大統領の選択肢はなく、党が必要と考えた場合のみの副大統領があるだけである。 私の考えではオバマ氏も民主党も、ヒラリー氏の副大統領は排除する気がする。副大統領職に大統領よりも「経験豊富」で「強い」副大統領(ヒラリー氏が自称)を置くことは混迷の要因になる。初の女性大統領候補のヒラリー候補に有権者が熱狂したのなら、初の女性副大統領に別の女性を選択することも考えられる。例えば、ナンシー・ペロシ下院議長という選択肢もある。ペロシ議長は戦火のイラクを訪問したり、チベット暴動の直前にダライ・ラマ師と会っている。このように副大統領としての資格は十分にある。先日のサンフランシスコの聖火問題などもあって、中国にとってペロシ議長は嫌な政治家だろうが、米大統領ではないし、米軍に初のアフリカ軍を創設するような時代だから米国民が受けいれるかもしれない。まあ、あくまでペロシ副大統領は選択肢のひとつであるが、ヒラリー候補はこれから時間の経過と共に、過去の人に押しやられるという一例である。 さらに指摘したいことは、米大統領選でイランの革命防衛隊がますます存在感を増すことである。すでに何度も書いているが、イラクやアフガンの情勢をコントロールしているのはイランの革命防衛隊である。大統領選で米国内に熱い政治の風が吹いている時に、イラクの反米武装組織を動員して、駐留米軍に攻勢をかけて米兵の戦死者数を増やせる力を持っている。これこそ、まさにマケイン候補にとって悪夢が現実になる瞬間である。イランは敵対するマケイン氏を戦死者数の増加で落選させ、直接交渉を主張するオバマ氏の当選に貢献することができる。不正規戦が得意な革命防衛隊とはそのような組織なのである。 私がオバマ候補が本選挙でも勝つと考えるのは、イラク戦争を終わらせる「変化力(チェレンジ精神)」を持っていると思うからである。アメリカがイラク戦争につぎ込む莫大な戦費を「低所得者向け減税」や「医療保険改革」に投じれば、アメリカの経済は不況傾向から脱することは容易である。それ以外にアメリカが不況から脱することは出来ない。年老いたアメリカ人ならベトナム戦争の教訓からそのことを覚えている。 |
中国原潜配備に対抗 米 潜水艦増強 海南島、進む「秘密基地化」 (読売 6月4日 朝刊) |
[概要]米政府は、中国が太平洋で軍事力の増強を進めているのに対抗し、潜水艦の戦力拡充に乗り出した。 中国は4月に海洋核戦略を担う「晋」級ミサイル原潜1隻が、海南島・檎林海軍基地に配備されたことが明らかになった。この晋級の衛星写真は、米国の民間研究機関「全米科学者連盟」が米デジタルグローブ社によって今年2月に撮影された写真を基に公表した。晋級は、射程が8000キロで核弾頭搭載可能な潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨波2」10〜12基を搭載可能。米国防総省は3月発表の08年版「中国の軍事力に関する年次報告書」で、中国が「10年までに5隻を就役させる」と見通しを示していたが、実際に配備が確認されたのは初めて。 この衛星写真には、海岸沿いに潜水艦を収容可能な幅16メートルの横穴や、地下に通じる複数のトンネルの入口の確認ができた。海南島が戦略潜水艦の「秘密基地」化しつつある、との見方が強まっている。 海南島の原潜配備は、中国の海軍力が「対台湾」のレベルを越え、南沙(スプラトリー)諸領有権問題が横たわる南シナ海の覇権確立、さらにはマラッカ海峡やインド洋での影響力行使をにらんだ「外洋型海軍」への脱皮を本格化させていることを鮮明にした。 これに対し米国側は、5月14日の米下院軍事委員会で、最新鋭のバージニア級攻撃原潜の建造に向け、7億2200万ドル(約750億8800万円)を09年度予算に追加計上をすることを承認した。バージニア級原潜は現在主力のロサンゼルス級の後継艦種で、04年以降、4隻が就任済み。10年、11年にも各1隻を建造する予定だったので、今回の予算追加で、建設数は年2隻に倍増した。 米国が重視するのは、太平洋で増強する中国潜水艦の脅威に対抗することだ。中国が将来、海南島を戦略潜水艦の基地として整備を完了した場合、米国が海南島の周辺海域に多数の攻撃型原潜を配置して封じ込める戦略に迫られる事態も現実味を帯びてきた。 [コメント]この記事には何点かの疑問がある。@ 中国の戦略核潜水艦(SLBM)の基地を海南島だけとする根拠。A 海南島のSLBM潜水艦をアメリカの攻撃型原潜で封じ込むという方法 B 海南島にSLBM潜水艦を配備すれば、マラッカ海峡、インド洋に覇権が拡大するという説明 などである。なぜ、そのようなことを言うのか意味が不明である。 すなわちこの記事では、核戦略の中で構成されている潜水艦発射核ミサイル(SLBM)の役割が明解でない。また攻撃型原潜の役割があいまいに語られている。アメリカ海軍の攻撃型原潜の役割は、敵の攻撃型原潜の追跡や攻撃、敵水上艦艇への攻撃、空母機動部隊などの護衛などである。中国軍のSLBM潜水艦が米海軍の攻撃型原潜が潜むような海域には出てこない。射程が8000キロ以上あるSLBMの特性から外洋に出てくる積極的な理由もない。 また潜水艦を収納可能な幅16メートルの横穴は、巡航ミサイルなど飛行高度を自由に設定できる兵器を使うと簡単に攻撃でき、理想的な潜水艦シェルターにはなり得ない。 中国海軍が浅い東シナ海を嫌って南の海南島に潜水艦の拠点を移すというなら説明がつく。西太平洋、南沙諸島、南シナ海、マラッカ海峡、インド洋に覇権を拡大する戦略もわかる。しかし中国のSLBM拠点が覇権拡大に必要という考えは理解できない。戦略核戦力のSLBMは別物だからだ。むしろ5隻のSLBMを各地に分散配置させ、敵の第一核攻撃からの生存性を高め、生き残って反撃する報復力を維持するための海南島配備と考えられる。潜水艦発射のSLBMの使い方(役割)とは、そのような核戦略から配備されている。 |
STOP クラスター 条約案採択の陰で 日本の安全保障 「空白」に渋面 外務省主導に防衛省不満 (毎日 6月3日 朝刊) |
[概要]「外務省は対米問題をクリアした途端、防衛のことを何も考えず冷たくなった。良い格好をしようとした」と防衛省幹部はクラスター爆弾禁止条約案同意が外務省主導で進んだことに不満をぶちまける。外務省と官邸は米国への配慮に全力を注ぎ、条約案に非参加の米国との共同作戦を認める条項を押し込んだ。その日米同盟の「安全弁」が確保されると、外務省は一気に事実上の全面禁止に舵を切った。その後は、いくら防衛省が国防上の問題点を説いても「全然だめ。流れが出来ていた」(防衛省幹部)。置き去りにされた防衛省に、抵抗する余地はなかった。 自衛隊はクラスター爆弾を「敵の上陸を防ぐため幅広く海岸線を制圧する」目的で装備する。クラスター爆弾破棄で安全保障上の空白をどうするのか」。同省には「全面禁止」による防衛機能劣化を危惧する声が相次ぐ。ただ全面禁止案に日米の「共同作戦」が認められたことは救いだった。ある防衛省関係者は、「朝鮮半島有事の際、米軍はクラスター爆弾を使う。米国のために自衛隊が運送会社が輸送出来なくなると困るが、クリアした」。 日本が保有するクラスター爆弾は4種類で、調達総額は3自衛隊で計276億円。すべて破棄対象になるため、発射用の車両も合わせと、莫大な損失になる。破棄費用は空自だけで「100億円」(空自幹部)という。緊縮財政が続く中、議論は今後どう代替手段を整備するかに移る。条約案で例外とされた不発弾率の低い「最新型」なら多額の支出は免れず、時間がかかる。 「抑止力に効果がある兵器だが、国家・国民のため禁止に同意するというなら淡々と従い破棄する」。防衛省幹部の表情は苦渋に満ちていた。 [コメント]この記事の最後の2行はオーバーすぎる表現と思う。芝居じみて気持ち悪い。クラスター爆弾を破棄すれば、それが深刻に日本の防衛線を空白にするとは思えない。どの新聞もクラスター爆弾を破棄すれば、代替兵器の整備が必要と当然のように書くが、もともと専守防衛戦略で過剰な部分の残忍兵器を破棄するだけである。クラスター爆弾に代わる代替兵器など必要ないし、そんなのは存在しない。また禁止案で例外になった「最新型」は、日本の最新技術で短期間に開発できるが、しかし日本に敵の機甲部隊が大挙して攻め込んでくる可能性はない。だから急いで開発・配備する必要は全くない。 その前に、自衛隊の軍事革命(RMA)を急ぎ、各部隊の兵士や兵器や、無人偵察機や戦場センサーを、情報ネット化して、効率の高い戦場情報指揮システムを急ぐべきだ。その自衛隊RMA化の最後の段階で、「最新型」クラスター弾の役割が必要な程度である。まだRMA化されていない自衛隊が「最新型」クラスター弾を配備しても使えない。 もう日本の戦場では対人地雷、ナパーム弾、火炎放射器、従来のクラスタ爆弾(弾)は使えない。それよりもRMA化された自衛隊が、精密な外科手術のように日本に侵略してきた敵を壊滅させる。 クラスター爆弾の全面禁止ぐらいで、防衛省幹部が苦渋な表情をするなどミットもない。今回は古い残忍な兵器を破棄するチャンスと喜ぶべきなのだ。 |
明解要解 なぜ「暴君」に? ジンバブエの ムガベ大統領 旧宗主国 ・英国への遺恨が背景か (産経 6月2日 朝刊) |
[概要]年間インフレ率16万5000パーセント、失業率80パーセント、国家崩壊の危機にあるアフリカ南部のジンバブエ。大統領選の決戦投票が今月27日、第1回投票から3か月ぶりに行われる。野党候補の勝利が予測される中、1980年の独立以来、独裁体制の敷くムカベ大統領に周辺は、野党政権が誕生すればクーデターを準備していると伝えられる。独立時には欧米から「自由の戦士」と称賛された英雄はなぜ「暴君」に転落したのか。 ムカベ氏は首都ハラレ郊外の集落で生まれた。カトリック教徒として育ち、イエズス会の学校に学び教師の資格を取った。子供時代は恥ずかしがり屋で母親から離れず、本を読むのが好きだったという。南アのフォートヘア大学を卒業し、ガーナ滞在中の58年〜60年、アフリカ独立運動の父、エンクルマ初代ガーナ大統領の影響を受けた。ローデシアに帰国して破壊活動を扇動し、64年から10年間投獄された。出獄後、人種差別政策を進めるスミス白人政権に対し、激しい武装闘争を展開する。 英国の仲介で80年に独立して初代首相に就任し、ローデシア首相だったスミス氏を免罪する寛容さを見せた。白人社会との融和政策では「アフリカでの黒人による国家建設のモデル」と称賛され、88年には第2回アフリカ賞を受賞した。その裏では、80年代前半に北朝鮮で訓練を受けた精鋭の第5旅団が、反政府デモを行ったヌデベレ族2万人(推定)を虐殺するなど暴君の一端を見せ始めていた。 国内の優良農地は白人農園主にほぼ独占され、黒人に分配する”農地改革”は難航。白人融和政策の見返りに、旧宗主国のイギリスから「白人農地の買収資金」の援助が十分得られず、ムカベ氏の”遺恨”が残ったとされる。総選挙控えた2000年、ムカベ氏は人気取りのため、独立戦争を戦った退役軍人による白人農地収奪を黙認。これが裏目に出て、「アフリカの穀倉」といわれた生産量はガタ落ちし、欧米による経済制裁や干ばつが国家の窮状に拍車をかけた。 南ア在住の英国人記者ブリッジランド氏は、「ムカベ氏を支持する将軍たちは、独立闘争を戦わなかった野党民主変革運動(MDC)のツァンギライ議長が権力を握るのを絶対に許さない」とクーデターが起きる恐れを指摘している。 [コメント]クーデター成功の大原則に、大国の支持を受けるというのがある。独立戦争を戦ったムガベ大統領派を支持するのはどの大国か。 その大国にはまず中国が挙げられる。中国はジンバブエの地下資源が欲しい。この緊張した時期に、中国は貨物船に小型武器(自動小銃やRPG)と弾薬を積んでジンバブエに向かわせた。(What New 4月25日付け 参照)。しかし内陸国家のジンバブエは周辺国の港で積み荷を降ろし、陸路でジンバブエに運び込まなくてはいけない。すでに欧米の情報機関はジンバブエに工作員を潜入させ、密輸武器の流れや、クーデターの動き、それに反クーデターの動きなどを監視している。 英国は中東やアフリカに強いMI6(対外情報部)をもつ国である。みすみす中国にジンバブエを奪われるような事態を看過しないだろう。密かにMI6がMDCを支援して反クーデターにまわる可能性が高い。そうなうとカリスマ化したムカベ大統領の暗殺が最大の焦点になる。独裁者は反乱を恐れてNO2を許さない。暗殺こそが独裁支配を確実に崩壊させる荒治療となる。 問題は暗殺の方法だ。自殺に見せかけるか、仲間同士の争いに見せるか、ショックによる体調急変を装うか、親族や家族との争いの果てと思わせるか。その様な表の”政権劇”は情報機関員が担うだろう。 最大の政治問題は新政権の正当性である。大統領選挙で野党が勝利し、野党党首が勝利宣言を行い、世界にそのことを報じさせたあとに”政変”が起きることが望ましい。 この時期になって、フリーの日本人ジャーナリストがジンバブエに入って取材を始めると、中国からやってきた情報機関員と疑われることは必至だ。そのような取材は初心者向けではない。しかしベテランのフリージャーナリストにとっては血が沸いてくるような興奮を感じる取材となる。 |
※これ以前のデータはJ−rcomFilesにあります。