「平沼新党」勝負のとき:平沼赳夫<対談>関岡英之(2)

2008年6月10日(火)18:10
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移民1000万人を日本に入れる危険

関岡 「長野事件」にも関連しますが、最近、日本にどんどん移民を入れようという動きがありますね。自民党では中川秀直元幹事長が「外国人材交流推進議員連盟」を立ち上げて、「移民庁」をつくって今後50年間に1000万人の移民を受け入れろ、と檄を飛ばしています。1000万人といえば東京をもう1つつくるようなものですが、それだけ膨大な数の外国人をどこから呼ぶつもりなのでしょうか。

これまで在日外国人といえば韓国・朝鮮人のことでしたが、法務省の統計によれば在日韓国・朝鮮人は平成4年ごろをピークに減少し、平成18年現在では約 60万人。一方、在日中国人は平成改元以降急増していて、平成18年時点では約56万人ですが、この趨勢では現時点ですでに在日韓国・朝鮮人の数を追い抜いている可能性があります。

韓国・朝鮮人は、曲がりなりにも戦前から日本に住んでいる人や、日本で生まれ育った二世、三世が大半ですが、中国人のほうは政治体制もイデオロギーも本質的に異なる中華人民共和国から、近年、猛烈な勢いで流入して来ているわけです。在日外国人社会が根本的に構造変化しているにもかかわらず、現状を吟味しないまま、おそらくその大半が中国人になるだろう移民1000万人を、日本に入れていこうとする動きは危険ではないでしょうか。

平沼 まったくそのとおりで、そういう問題意識に欠けている政治家が多いのは非常に困った事態です。私はこれまでも、中川昭一さんたちとともに人権擁護法案や外国人参政権問題に警鐘を乱打しながら自民党にも民主党にも超党派で働き掛けてきましたが、移民問題についてもそういう思いでこれから行動していきたいですね。

たしかにいま日本は少子高齢化で、年金制度を担ってもらう現役世代も減っていきますし、看護師や介護士のなり手不足も深刻です。大切な農業や漁業、伝統工業の後継ぎ問題もしかり。ただでさえ若年労働力が不足していて、さらにニートなど、働く意欲の乏しい若者が増えている。一方で厳しい国際競争に勝ち残るため、海外から人件費の安い労働力を入れたいという事情が経済界にあるのもわかります。

しかし移民というのはやはり禁じ手で、軽々にとるべき方策ではない。多くの先進国が移民政策で失敗しているでしょう。たとえばドイツでは労働力不足を補うため、トルコなどから大量の移民を受け入れましたが、結局、福祉予算の半分以上を移民対策に充てるはめになってしまった。いまになって本国帰還を奨励していますが、二世、三世にもなると根付いてしまってなかなか応じないと聞きます。

安い労働力という考えだけで移民を入れればいいというのは、あまりに短絡的です。経営者なら当面の利益だけを考えればいいかもしれないけれど、いずれ移民たちは福祉を求め、子供の教育を求め、日本人と対等の待遇を求め、満たされなければ非行や犯罪に走ったり、暴動を起こしたりもする。その社会的なコストをどう考えるか。結局、国民がそのツケを払うことになるのですから、そういう観点から物事を見るのが、われわれ政治家の務めですよ。

関岡 移民先進国の事例をもっと検証すべきだというご指摘にはまったく同感です。フランスでも2005年にアラブ系やアフリカ系移民による暴動がありました。フランス国籍を取得したのに職業差別がなくならないことへの反発でしたね。自由、平等、博愛、民主主義の本家本元であるフランスでさえ、移民の社会統合がうまくいっていない。

また、もともと移民国家であるアメリカでさえ、ヒスパニック系の非合法移民が大問題になっています。リベラル派はアメリカ人の雇用確保の観点から非合法移民に対する恩赦に反対していますし、保守派も、たとえばサミュエル・ハンチントンなどは経済や社会保障の観点だけではなく、英語社会とスペイン語社会に分断されつつある状況はアメリカ統合の危機、ナショナルアイデンティティの危機、文明の危機だとまで主張しています。

平沼 まして日本は125代続いた万世一系の御皇室を戴き、ずっと単一民族としてまとまってきましたし、単一言語で長い歴史と伝統を培ってきた国柄です。事の重大性はアメリカなどと比較にならない。これはまた、私がずっと警鐘を乱打してきた外国人参政権や人権擁護法案の問題にも絡んできますし、もちろん治安問題や情報漏洩やスパイ防止など、最終的には国家の安全保障にもかかわってくるんです。

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