三重県伊賀市の診療所「谷本整形」で点滴を受けた患者が体調を崩し、女性1人が死亡した問題で、三重県警は12日、業務上過失傷害の疑いで同診療所を家宅捜索した。複数の看護師が「点滴液を作り置きしていた」と話しており、県警は作り置きした点滴液に細菌が混入、増殖したとみて作り置きを始めた経緯や時期、谷本広道院長(57)の指示の有無などの解明を目指す。県警は同日、伊賀署に30人態勢の捜査本部を設置した。
この問題では、先月23日から今月9日にかけて、同診療所で点滴を受けた患者が発熱や嘔吐(おうと)などの症状を呈して同市内などの病院に入院したほか、同市内の無職、市川満智子さん(73)が10日に死亡した。
県は12日、患者のうち、4人から、グラム陰性桿(かん)菌が検出されたと発表した。すでに9日に、患者1人から同種の菌が検出されており、県では院内感染の可能性が高くなったとしている。また、点滴で体調不良を起こした患者はこの日、新たに4人が確認され、市川さんを含め23人となった。
問題になった点滴は、鎮痛剤「ノイロトロピン」とビタミン剤「メチコバール」を生理食塩水に混ぜたもの。県が同診療所の複数の看護師に聞き取り調査を行ったところ、点滴は毎朝、10個から30個を看護師が準備。点滴が減った段階で、それを確認した看護師が追加で点滴を準備するが、診療が終わっても使われずに残った分についてはその次の診療日に使っていたという。
県警では作り置きが常態化していたとみている。発症者は休診日翌日の月曜日や前日の午後が休診の金曜日に集中していた。
また、同診療所では、昨年10月にも点滴を受けた男性=当時(85)=が死亡しており、県警は点滴治療や作り置きとの因果関係を調べる。
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