医療事故:真実説明・謝罪普及プロジェクト(SMAN)は6月14日、第2回公開フォーラム「医療事故対応のための真実説明指針が普及しはじめた」を開催した。

SMANは東京大学医療政策人材養成講座受講生有志により、“医療事故が発生した際に最善の対応をし、事故の再発防止に結びつける”ことをめざす、医療事故謝罪運動を普及させる取り組みを行なっている。
SMANではハーバード大学の「医療事故:真実説明・謝罪マニュアル〜本当のことを話して、謝りましょう」の日本語版を提供しており、福祉の場面に読み替える必要はあるものの、介護施設での事故でも同じような真実説明や謝罪の取り組みがあるべきとし、ケアマネジメント・オンラインの「業務に役立つダウンロード」コーナーに、同マニュアルの提供をいただいている。
フォーラムでは有害事象(医療事故)対応の現状や、実際に医療事故を経験した被害者家族と病院のケースを紹介したほか、医療事故対応を実践している現場の取り組みを発表した。
■真実説明・謝罪することで紛争が減るSMANのプロジェクトリーダー、埴岡健一氏は「医療事故問題対応の基盤としての真実説明対応指針」として発表を行なった。
埴岡氏はハーバード大マニュアルの原監修者、ルシアン・リープ氏のコメントを引き、「医師は100年以上も謝ってはだめだと教育されてきた。今でもほとんどの臨床現場が『謝るな』と教えている」と、謝らない医師が出来上がる土壌が長い時間をかけてつくられたことを指摘。間違いを認めると訴えられるからと謝罪を恐れているが、実際はむしろ逆で、「家族や患者が何かおかしいと気づいているのに、医師が何の問題もないそぶりをするから怒りを覚えて訴訟をする」という。
アメリカでは、医療事故の際に真実説明・謝罪を行なった病院では医療過誤損害賠償金額や係争関連費用が目に見えて減少し、紛争解決にかかる時間も大幅に短縮されているという事例を紹介した。
■必要に応じて2種類の謝罪を行なうフォーラムの前に行なわれた記者発表で、全社連が傘下の全病院で新しい医療安全対策マニュアルを採用をしたことが明らかにされたが、そのマニュアルもハーバード版をもとにしている。そこでは「初期行動」「真実説明」「謝罪」「調停(メディエーション)」「根本原因分析」「補償」「事故報告」の7項目を柱としており、「真実説明」の項では「隠さない、逃げない、ごまかさない」ことを基本指針としている。また、「謝罪」の項では、「過誤が明らかな場合には謝罪を行なう。必要に応じ「共感表明謝罪」「責任承認謝罪」を行なう」とある。
謝罪には「共感表明謝罪」「責任承認謝罪」の2つがあるとし、「共感表明謝罪」は悪しき結果が起こったことに対する共感からの謝罪、患者の期待に添えなかったことへの申し訳なさからくる謝罪(例:「最善は尽くしたのですが、このようなことになり申し訳ありません」「あなたにこんなことが起こるとは、とても残念です」)。「責任承認謝罪」は事故の責任を認める意味での謝罪(例:「私のミスでこのようなことになり申し訳ありません」)としている。
埴岡氏はまとめとして、真実説明指針の導入が世界の潮流であり、日本でも進み始めたと述べ、公的性格を持つ病院がまず率先し、すべての病院がこの真実説明指針を採用することを望むと結んだ。
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