PVの企画に参加したきっかけは、先に参加していた雨宮哲さんから「ほかに同世代がいないんで、やろうよ」と誘われたからです。
最初からイメージビデオ的なものではなく、起承転結のある内容のものにしようと決めていました。曲に「ラップは漢の魂だ!無理を通して道理を蹴っ飛ばす!俺たち大グレン団のテーマを耳の穴かっぽじってよ〜く聴きやがれ!!」を選んだのも、イントロがついていたからです。このイントロを使えばうまく物語の導入部が描けるんじゃないかと考えたからで。実際、冒頭のモノクロ映画風の導入は、美術さんや撮影さんのおかげで、自分が考えていたよりもずっと雰囲気が出てうまくいったと思う場所になりました。やはり美術と撮影は画面のクオリティの要を握っているなと実感しました。ビデオ編集で加えた、古いフィルム風のノイズもイメージ通りでうれしかったです。
やりたかったのは「とらわれのお姫様がいて、それを主人公が助けにいく」という王道のストーリー。中世風の舞台を選んだのは、世代的にファンタジーRPGが好きだからです。TVシリーズ本編のラストは、ハッピーエンドではあるけれど、ちょっとシビアなテイストもありましたよね。ならばPVでは真正面からハッピーエンドを描いてみようと。シモンとニア、カミナとヨーコ、ヴィラルとその嫁というカップルを3組出したのも、本編中でみんなのもっと幸せそうなシーンを描いてあげたかったなと思ったからです。
成長したシモンを出したのも似たような理由です。成長したシモンは本編の第25話でしかカミナと共演していないので、是非二人を共演させたかったんです。
絵コンテも演出も初めてなので、大変でした。特に絵コンテはやりたいことをはじから詰め込んでいったので猛烈に長くなってしまいました。最初は城に潜入するにしても、計画をたてるとか、ヴィラルの嫁を前もって送り込むとか、いろいろと段取りを描いていたりしたんですが、思うままに描いていたのでカット数が100カット近くなってしまって「これはどう考えても3分の曲に収まるわけがない」という事態に……。大塚(雅彦・副監督)さんや板垣(伸・第6話のコンテ・演出等)さんから、絵コンテの段階でのメリハリのつけかたや編集でのやりとりなど、いろいろアドバイスをもらいながら今のかたちにまとめました。
ラストは音楽もばっさり終わっているので、絵もポンッと切ったほうがいいだろう、とニアのアップで締めました。見た人が、楽しい気持ちで見終わってくれればうれしいです(談)
(プロフィール)
わたなべ・けいすけ
『天元突破グレンラガン』の大半の話数に原画・第二原画で参加。
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