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「萌え〜」作業服に目印 車で派遣先封鎖計画 秋葉原殺傷

2008年6月16日3時1分

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 東京・秋葉原の無差別殺傷事件は15日で発生から1週間がたった。現場近くでは35年続いていた休日恒例の歩行者天国が、初めて中止となった。警視庁の調べや会社同僚の話、書き込んでいた携帯サイトなどから、加藤智大(ともひろ)容疑者(25)の行動や感情が明らかになってきた。

 殺人未遂容疑で逮捕された加藤容疑者は「リストラされると思い、4トントラックを借りて(勤務先の)工場の入り口を封鎖しようと思ったが、借りられなかったのであきらめた」と警視庁の調べに供述していることがわかった。「リストラのために、わざとつなぎ(作業服)を隠されたと思い、腹が立った」とも話しているという。

 同容疑者が静岡県裾野市の派遣先の工場で使っていたつなぎには、見つけやすいようにと自分で書き込んだとみられる目印があった。

 それは「萌(も)え〜」だった。塗装工程で一緒だった社員によると、目印は、つなぎの左肩部分に小さな文字で書いてあった。「これは何?」と問うと、同容疑者は「結構はまってるんすよ、おれ」とはにかんだという。

 「萌え」は、アニメやゲームファンの間で使う、キャラクターへの恋愛に似た感情を意味する言葉のことだ。

 仕事で着るつなぎは、首の後ろに所属班と名前が書いてあり、工場側が洗濯後、班ごとにラックにつるしていた。

 事件の3日前となる5日午前6時すぎ、早番勤務の加藤容疑者は、更衣室につなぎがないことに気づくと、「ふざけるな。ばかやろう。この会社はどうなっているんだ」と騒いで、壁をけり上げ、職場を早退した。

 工場側や社員によると、つなぎはその後、更衣室内で見つかったという。

 加藤容疑者は逮捕後、このつなぎをめぐる騒動が、「事件のきっかけの一つだった」と供述しており、警視庁は当時の状況を確認する方針。

 ■負の感情、携帯サイトに書き連ね 

 加藤容疑者は、警視庁の調べに、1日に何度も携帯サイトの掲示板に書き込むことが「習慣になっていた」と話したという。その記述には、焦りや孤立感、不満、卑下など、事件の背景とも考えられる負の感情がつづられている。

 加藤容疑者が書いたとされる中で目立つのは、恋人がほしいのに、自分の容姿が悪く、女性に相手にされないことについての書き込みだ。

 掲示板のタイトルも「【友達できない】不細工に人権無し【彼女できない】」。自らを不細工だから彼女はできないとし、「彼女がいない、ただこの一点で人生崩壊」と言い切る。

 「死ぬまで一人 死んでも一人」「一人の食事ほど虚(むな)しいものはない」など、恋人や友達がいない孤立感についても繰り返していた。

 こうした記述を見た人から「顔だけじゃない」などと励ますような書き込みもあったが、次第に、そうした反応もなくなると、「現実でも一人 ネットでも一人」などとすねた。

 職場では、派遣社員を解雇する方針が伝えられていた。加藤容疑者は対象外だったが、掲示板には取り換えのきく労働力として扱われることへの不満をつづった。

 両親をうらむ言葉も激しい。親の満足のために無理やり勉強させられたとしたうえ、「県内トップの進学校に入って、あとはずっとビリ 高校出てから8年、負けっぱなしの人生」と書いた。

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