サブカテゴリー

どうして礼拝場が?外国人バイヤー、次々落札

 海外での日本車人気の高まりを受け、中古車の輸出が急増している。以前は外国人が買い付けるのは廃車寸前の「ボロ車」が主流だったが、最近は新興国の経済成長に伴い、質の良い中古車まで外国人バイヤーが次々と高値で落札。日本人が“買い負け”する場面も現れ始めている。

 千葉県野田市にある中古車オークション会場は、多彩な顔ぶれのバイヤーで熱気にあふれていた。パキスタンやバングラデシュ、アフリカ系など外国人が約7割を占め、会場の一角にはイスラム教の礼拝場まで設置されている。

 取引は完全にコンピューター化され、前方のスクリーンに出品車が映し出されると、参加者が次々と手元のボタンを押して応札。1台あたりわずか10数秒。関東一円などから集められた3000台以上のトラックや乗用車が1日で取引される。

 ロシアやアフリカに輸出しているパキスタン人バイヤー(46)は「日本車は故障が少なく、何十万キロ走っても大丈夫。なんといっても海外で一番人気はトヨタ。しかも『メード・イン・ジャパン』のトヨタ車が高く売れる」と事情を明かす。

 オークションを運営するUSS流通オートオークションの岩瀬仁専務執行役員も「日本では車は足代わりだが、砂漠など過酷な環境で使う人にとっては命を預ける道具。そういう地域で日本車への信頼は群を抜いている」と説明する。

 2007年の中古車輸出台数は、前年比14・3%増の約129万台。この5年で倍増し、今年は150万台を超える勢いだ。特にロシア向けの伸びが著しく、今では全体の3分の1を占める。次いでアラブ首長国連邦が多く、アフリカ向けも増えている。

 輸出拡大の背景には、新興国の富裕層の台頭がある。最近はトヨタの「ランドクルーザー」や日産自動車の「GT―R」といった高額の人気車が、国内の新車以上の値段で外国人バイヤーに競り落とされる例も相次いでいるという。

 一方、国内の中古車販売は低迷の一途をたどっている。新車が売れないために下取り中古車の供給が細っている上、輸出業者との仕入れ競争が激化。東京都内の中古車ディーラーは「若者の車離れで需要自体も減っているのに仕入れ価格も上昇し、ダブルパンチだ」とため息をつく。

 国内の消費者にとって良い影響もある。ガリバー自動車研究所によると、中古車の下取り価格は昨年、前年より平均5万円ほど上昇。鈴木詳一同研究所長は「新車に買い替えたい人にとっては明るい材料で、低迷する新車市場の活性化につながる」としている。

[ 2008年06月16日 08:37 ]

ニュース

クイックアクセス
スペシャルコンテンツ

このページの先頭に戻る ▲