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専門委と調査委はなぜ違ったか(1)
2007年4月 3日(火曜日) 16:03 JST
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林 秀 信 3月3日、宇和島徳洲会病院調査委員会の報告は、同病院での病気腎移植11件の評価につき適切ないし容認できる6件、保留5件とし、すべて不適切とした専門委員らの見解と異なる結果を出した。 これに関し、同調査委員会の会議録が入手できたので、これから、いくつかのケースについてその異なる結果となった理由を検証してみる。 同委員会では、専門委員の意見書、調査委員の患者からの聴取書、万波誠医師の口頭での説明をもとに議論が進められている。 今回はドナーがネフローゼ患者からの移植のケースである。 (ケース)患者はネフローゼ(尿からタンパクが漏れる)であり、前の病院でパルス療法(ステロイドを多量に服用する)を何回もしているが全く効果がなかった。当病院でもパルス療法+免疫抑制剤の治療をしたが効果がなかった。実際の体重は55kg程度と推定されたが、当病院に入院時は体重85kg、除水透析を一週間行い、体重64.8kgになった時点で摘出を決めた。手術時には浮腫(10kgオーバー)があった。 (論点) 1、内科的治療ができたか、またはすべきだったか。
(専門委員)摘出時点では腎機能が良好で、浮腫がない。腎生検(腎臓に針をさして組織を採取し、病理検査をする。)を行い、内科的治療を尽くす必要があった。 (万波医師)当院でも一日で10~15gの多量のタンパクが出ていた。そのため全身浮腫がひどく、呼吸も困難な状態であった。死が切迫している病状と判断した。そのような状態で、危険性を伴う腎生検をやっている余裕はなかった。他の医師も同じ状況判断だった。 2、 腎臓内科専門医に相談すべきだったか。 (調査委員)内科的治療法には,血漿交換もあった。腎臓内科専門医に相談すべきだったのでは。 (万波医師)専門医は(車で1時間位かかる)松山市にしかいない。どんな専門家でも患者を看ずして治療法を判断することはできない。自分はそれまで難治性ネフローゼ20件位、ネフローゼ腎の摘出治療を3件やっている。その経験から基本的な内科的治療は尽くし、摘出しかないと判断した。
3、 ネフローゼ症の場合には、腎摘出すべきでないか
(専門委員)ネフローゼで腎摘出するようなケースはない。 (調査委員)血漿交換しても効果がなければ腎摘出の適応があると文献にある。実際にも、いくらでも手術例がある。明らかに間違った見解である。 4、 患者の意見はどうだったか。
(専門委員)考慮していない。 (万波医師)患者は長い間治療を受けても改善せず、私も「頑張れ」と励まし続けたが、最終的にも摘出を希望した。 5、 ネフローゼ腎を移植に使うことが許されるか。
(調査委員)東京女子医科大ではネフローゼの腎臓を移植したことはない。レシピエントに移植後タンパクが出るのではないか。根拠がない。 (万波医師)市立病院で3つのケースを経験しており、これで4件目。ネフローゼが再発したことはなく、移植を受けた人が6人社会復帰している。その経験があったから、今回もやっている。ネフローゼは自己免疫疾患だから,他人に移植するとうまくいくと思っている。もし、タンパクが出続けたら摘出するということは手術前に患者に十分説明している。 6、 倫理委員会を通すべきでは。
(調査委員)新しい医療をする場合には倫理委員会を通すことが必要。倫理委員会もなかったのは問題。 (万波医師)今後はそうすべきと思う。しかし、自分にとって、新しい医療という認識はなかった。8例についても松山の腎臓病学会でも発表していた。周りの人も特別の認識はなく、「面白い」といった程度だった。私は患者にとって一番良いと思う治療をしてきたので、特別新しいことをしたとは思っていない。
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