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【主張】中台会談 次には台湾を国際社会へ
中国と台湾が10年ぶりに事実上の公式会談を行い、週末の直行チャーター便運航や中国人観光客の台湾への直接受け入れなどで合意した。今後も直行貨物便などを含め対話を継続するという。
中国国民党の馬英九・台湾総統の誕生を機に、中台双方が主権などの政治的争点を棚上げにし、実利・実務関係の改善を求めた結果のようだ。
争点を棚上げにする限り、台湾海峡や地域の平和・安定は可能となる。経済発展の基盤も強まる。まずは結構なことだ。
他方、中台関係の変化は日本にも影響を与えずにはおかない。政府はこの変化を正しく分析し、台湾をはじめとする近隣との外交見直しに取り組むべきである。
今回合意した直行チャーター便は、金曜日から月曜日まで双方が往復18便ずつを運航させる。中国からの観光客は当面1日3000人までだが、いずれ1万人を目指す。台湾の議会は中国の人民元を台湾本土の銀行で両替できる法律も成立させた。
こうした交流拡大措置が双方、とりわけ対中投資で世界トップの台湾の経済・社会に与える影響は計り知れない。
一方、台湾には、中国は台湾との実務関係緊密化を通して台湾住民を味方につけ、将来の中台統一を狙っている−との見方もある。注意深い観察が必要だ。
今回の合意は大きな進展だが、政治的関係の改善にまで進むとみるのは早計だ。馬総統は任期中に統一問題は協議しないとしており、和平協議は台湾に向けた多数のミサイル撤去が前提だとしている。当然である。銃を向けられたままで和平交渉はできない。
この間、馬総統は、尖閣諸島の日本領海内で日本の巡視船と台湾の遊漁船が接触、遊漁船が沈没した事故で、尖閣は「中華民国の領土である」とし、日本に賠償などを求める声明を発表した。不当な声明であり、政府としてきちんと反論をしておきたい。
だが、台湾を中国側に追いやるような行動は控えるべきだ。その意味でも、台湾の国際社会への参加を支援したい。馬総統が多くの台湾住民とともに求めている世界保健機関(WHO)参加や国連加盟問題での台湾支持だ。
また、これまで中国からの圧力で避けてきた台湾との自由貿易協定(FTA)交渉も、本格検討のときを迎えたといえよう。