福田康夫首相が来年度の創設を目指す消費者庁について、政府の「消費者行政推進会議」が、13日に最終報告をまとめた。取引や表示、安全など消費者に身近な問題を広く扱い、物価行政も担当する。
焦点になっていた各省庁からの法律移管については、内閣府が所管する消費者契約法など14を完全移管し、食品衛生法など9法を一部移管、貸金業法など7法を担当省庁と共管する。合計30の法律を所管し、他省庁への勧告権をもつ消費者行政のかじ取り役とする構想だ。
だが、消費者庁が適正に機能するのか、3つの疑問がある。
法律移管のうち半分以上は他省庁との共管や一部移管だ。高度な専門性や一体的運用が不可欠の法律もあるから、すべてが問題だとはいえないにしても、役割分担や責任の所在をきちんと詰めなければ、現場が混乱し行政サービスの低下を招く。
消費者庁の所管は幅広い。専門性のある有能な人材を配置できるか、財政難の地方の消費者窓口をどう強化するのか。消費者保護の実効をあげるためには多くの課題がある。
新官庁が「消費者のため」を錦の御旗に事前規制に向かっても困る。報告書は省庁の縦割りを超えた新法の制定や被害者救済の法律を検討するとしている。悪質業者が違法に得た利益の吐き出しなどは必要だろうが、健全な経済活動まで萎縮させては消費者のためにもならない。新たな規制導入では、欧米のように影響についての事前評価をすべきだ。
三つ目の問題は組織の陣容だ。報告書には「消費者行政のかじ取り役を担うにふさわしい規模。機構、定員、予算を各府省庁から移し替える」とあるだけで、具体策は先送りした。福田首相は4月に「行政の肥大化は招かない」と明言した。どこからどれだけの職員、予算を移すのか明確に示す必要がある。
消費者行政の大切さは言うまでもない。すでに先進国の多くは産業振興優先から消費者重視の行政に転換している。公正取引委員会が主体となる韓国や、経済財政雇用省に競争・消費及び詐欺防止総局を置くフランスなど、組織のあり方は多様である。消費者庁設置も一つの方向ではあろうが、さらに検討が必要だ。