連日、新聞・テレビが秋葉原17人連続殺傷事件を大々的に取り上げるウラで、ニカリとほくそ笑んでいる奴らがいる。史上最悪の通り魔事件のあおりで、本来なら大きく報道されたはずのニュースが、小さな扱いになったからだ。一体だれがホッとしているのか。
●沖縄県議選、与党が過半数割れ
後期高齢者医療制度が争点となった沖縄県議選。県政与党の自民、公明は改選前27議席から22議席へと激減し、過半数割れに追い込まれた。改めて高齢者医療をめぐる国民の怒りを見せつけたが、投開票日は事件発生と同じ8日……。その日のニュースは通り魔事件一色で、政権を揺るがす選挙結果はかすんでしまった。
これに救われたのが、自民党の古賀誠選対委員長。沖縄決戦の陣頭指揮をとったが、就任以来、山口2区補選に続いて連敗となれば責任問題だった。
さらに小泉純一郎元首相や舛添厚労相も得したクチだ。17人殺傷事件がなければ、野党が参院で可決した「廃止法案」は大きくクローズアップされ、老人イジメの医療制度の廃止論はさらに盛り上がった。与党内でも廃止論が強まり、制度導入を決めた小泉は袋だたき、舛添大臣も股裂きになるところだった。
●ハマコー効果なし
自民党が県議選の「救世主」に抜擢した浜田幸一(79)。沖縄限定のCMに出演し「自民党はおじいちゃん、おばあちゃんを大事にする政党なんだろ! 困ったことは直せばいい」と制度見直しをアピールするも、結果は大惨敗。ハマコーも「役立たず」のレッテルを張られかねなかったが、事件でウヤムヤに。
●接待タクシーと財務省
ウヤムヤといえば、財務省の役人が発端のこの問題だ。金品の受領者は全中央省庁に拡大。先週まで各メディアとも「官僚のモラルが問われる」と批判していたが、通り魔事件でパッタリ。その後の日刊ゲンダイ本紙の調べで財務省の役人が使う深夜タクシー代金は年間4億円に上ることが分かった。国民に負担増ばかり押し付けておいて、バカヤローものだが、国民の怒りは通り魔・加藤智大ひとりに向かってしまった。
実は事件のドサクサに紛れて、内部調査が遅れた厚労省が18人、防衛省が新たに8人の提供者を公表。金品受領者は528人まで膨らんでいる。それなのに“勝ち組”の官僚が、“負け組”が引き起こした凶行に救われるなんて……。夜の闇に紛れて今日も役人はタクシーでご帰館だ。
高齢者医療も接待タクシーも、国民の関心が高まれば高まるほど、福田政権に与えるダメージは超特大だった。結局、一番トクをしたのは、問責首相である。
【2008年6月12日掲載記事】