「総社市? 出雲市の隣にあるのですか?」。片岡聡一総社市長は、新見市で開かれた全国市長会の会合で隣の席になったある市長からそう尋ねられ、驚いたそうです。
四季折々にさまざまな表情を見せる吉備路、昔話「桃太郎」の鬼のモデルとされる温羅(うら)の伝説が残る古代山城・鬼ノ城、画僧・雪舟が涙でネズミの絵を描いた話で知られる宝福寺。恵まれた観光資源を備える総社市ですが、隣接する倉敷市などと比べると、全国的な知名度はまだまだ低いのが現実でしょう。
そこで総社市は五月、「総社観光プロジェクト」という組織を設立しました。ジェイアール西日本コミュニケーションズの浅沼唯明社長を会長に、委員は民俗学者の神崎宣武さん、登山家の野口健さん、デザイナーの水戸岡鋭治さんと地元観光関係者ら。“豪華な布陣”による新たな発想やアイデアで観光戦略を練り、魅力を全国に発信する狙いです。
ただ、六月定例市議会では「委員に有名な人が多いが、地域の実情とかけ離れた形にならないか」という指摘もありました。確かに新たな観光戦略も地域で生かせなければ意味がありません。
プロジェクトは、歴史や文化など市の財産を考察し、市の観光はどうあるべきかという本質的な部分の協議から始まることになりました。その議論を踏まえた上で今後、地元関係者の意見も十分に取り入れながら、地域一体となって魅力発信に取り組んでいく。プロジェクトがそんな形で結実すればと願っています。
(総社支局・新田真浩)