「単刀直入」「身から出たさび」など、刀にまつわる慣用句やことわざは多い。特に権力闘争の中で厳しい攻防を繰り広げる政治の世界ではよく使われる。
参院で福田康夫首相への問責決議可決を主導した民主党の幹部は「伝家の宝刀を抜いた」と見えを切った。参院の与野党逆転で手中に収めた「伝家の宝刀」を鯉(こい)口を切って身構えていたが、今国会の最終段階になってとうとう抜いた。
対する福田首相は「重く受け止める」と神妙に答えたものの、決議に法的拘束力がないため黙殺する考えのようだ。与党の間でも「竹みつにすぎない」と皮肉る声は多いが、果たしてどうだろう。
本来ならきょうで会期末を迎えるはずだった国会は、二十一日まで延長された。民主党は法案審議に一切応じない方針で、空転状態のまま閉会を迎える異例の事態となった。延長期間中、参院で承認されていない条約が参院送付後三十日経過することで、自然承認となるのを待つだけである。
次のヤマ場は八月といわれる。召集予定の臨時国会でも民主党が審議拒否を続けるかどうか。「伝家の宝刀か、竹みつか」の結論は、それまで持ち越されたようだ。
「抜かぬ太刀の高名」ということわざもあるが、民主党の心境はいかに。判断の是非が問われるのは避けられまい。