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日本:死刑に関する秘密主義のタブーを破ったラジオ放送

IPSJapan2008/05/20
日本の死刑囚の最後の瞬間が、5月6日の文化放送ラジオで放送された。この録音は、死刑執行人の教育のために、53年前に大阪拘置所の死刑執行室で収録されたものだ。約10万人がこの放送を聞き、数時間のうちに多くの反響が放送局に寄せられたが、60%は肯定的なものだったという。
日本 人権 IPS

【東京IPS=キャサリン・マキノ、5月12日】

 日本の死刑囚の最後の瞬間がラジオで放送され、聴取者を驚かせた。5月6日の朝のラジオ番組で、文化放送は53年前に大阪拘置所の死刑執行室で収録された音を放送した。

 死刑執行人の教育のために録音されたこのテープは、死刑制度に反対する活動家によってひそかに拘置所から持ち出され、文化放送に渡されたものと思われる。収録音は、死刑執行を待つ106人の死刑囚の心情に関する1時間のドキュメンタリー番組の一部だった。

 「死刑囚が暴れたり騒いだりしてはならない」と刑務官がいい、読経の声が流れる中で死刑囚の手足が縛られることが示唆された。別室では3〜5人の死刑執行人それぞれが同時に絞首台の落とし戸を開くボタンを押す。誰のボタンが死の引き金になったのかわからなくすることで執行人の罪悪感を軽減するために考案されたシステムだ。

 死刑囚と家族の会話も収録されており、「犯したことは悪かった」と震える声がいう。

 この放送を聞いていたのはおよそ10万人で、数時間のうちに多くの反響が放送局に寄せられたが、60%は肯定的なものだった。「死刑執行直前の声を聞き、死刑囚の気持ちが理解できた」という声もあったという。ある大学講師は、裁判員制度導入に際して死刑制度問題を学生に議論させる機会にしたいと、制作者に講演を依頼してきた。

 死刑囚の犯した罪には触れず、一方的な内容だとする非難もあったが、おおむね聴取者は秘密主義の死刑制度を改めて考えさせる内容を歓迎したようだ。IPSの取材でも、「死刑の具体的な詳細を知りショックだ」、「被害者の感情が取り上げられないのは片手落ちだ」、「死刑制度廃止の議論を促進するきっかけとなってほしい」などの意見が聞かれた。

 裁判員制度が導入されれば一般市民が死刑に関与する。文化放送の清水克彦プロデューサーは、テープの入手先を明らかにせず、検察が放送を阻止しようとしたのは認めた。「死刑について何も知らない日本の聴取者に情報を与えたかった」と清水氏はいう。

 最新の世論調査では日本人の8割が死刑を支持しており、今年はすでに7人が処刑された。日本の死刑制度を取り上げたラジオ番組について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=加藤律子(Diplomatt)/ IPS Japan 武原真一

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アフガニスタンで死刑制度議論が再燃
サウジアラビア:赦しが命を剣から救う
フランス:無期懲役囚に死刑を望む声
ラテンアメリカ:国連の死刑一時停止案に支持集まる
日本:死刑に関する秘密主義のタブーを破ったラジオ放送
東京IPSのキャサリン・マキノより、日本の死刑制度を取り上げたラジオ番組について報告したIPS記事。(IPS Japan武原真一)
日本:死刑に関する秘密主義のタブーを破ったラジオ放送
裁判員制度が導入されれば一般市民が死刑に関与する。文化放送の清水克彦プロデューサーは、テープの入手先を明らかにせず、検察が放送を阻止しようとしたのは認めた。「死刑について何も知らない日本の聴取者に情報を与えたかった」と清水氏は語った。(IPS Japan武原真一) 資料::Nippon Cultural Broadcasting

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