持ち帰るべきか、捨てるべきか――。福岡市教委が今年度から市立学校で給食の食べ残しの持ち帰りを禁じたところ、廃棄される残飯が月に約9トン増えたことが、13日の市議会本会議で明らかになった。市教委は「児童生徒の健康が第一」と強調するが、吉田宏市長はこの日の答弁で「もったいない」と繰り返すなど、波紋を呼んでいる。
97年に文部省(当時)は、食中毒防止のため、給食の持ち帰りについては禁止が望ましいと全国に通知した。福岡市では持ち帰りを認める学校があるなど対応はまちまちだったが、「どうすればいいか」と問い合わせが昨年あり、改めて「禁止徹底」を通知した。
市教委健康教育課によると、07年度は215小中学校で1383トン、処理費に換算して4427万円分の食べ残しが出て、すべて焼却処分された。5月は前年同期より9トン増えていたという。
13日の本会議では、平畑雅博議員(みらい福岡)が「食育の点から大きな疑問。見直すべきでは」と質問。吉田市長は「給食のパンを持って帰るとおばあちゃんが焼き直しておやつにしてくれた。(食べ忘れて)かちかちになったことも。そういうのを通し食べ物の大切さを知った」と思い出を披露。「残さず食べてもらう努力も必要だ。非常に悩ましい」と答えた。
市教委は、手つかずのパンなどを入れたゴミ袋が子どもの目に触れないよう、学校側に注意を求めている。食べ物を粗末にする意識を植えつけないための配慮だ。4月以降、市には「衛生面の配慮なら仕方ない」「食べ残しを活用できないか」「ものを大切にする流れに反する」などの電話やメールが相次いでいるという。(田中久稔)