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安心・安全ナビ:「電柱大国」日本。地中化はどれくらい進んでいるの。

 ◆「電柱大国」日本。地中化はどれくらい進んでいるの。

 ◇費用高く、市街地でも1割強--ロンドン、パリ、NYは100%

 ◇防災、歩道確保…多い利点

 空一面に張り巡らすように電柱から広がった電線。都市部ではおなじみの光景だが、地震や台風などで倒れた電柱が道をふさぎ、避難や救助活動の妨げになる恐れが指摘されている。防災や安全面から、電線や通信ケーブルなどを地中化する動きが日本でも少しずつ広がりつつある。

 「日本は約3300万本の電柱が立つ『電柱大国』だ」。電柱をなくす運動に取り組むNPO「電線のない街づくり支援ネットワーク」(大阪府吹田市)の井上利一事務局長が指摘する。

 国土交通省によると、ロンドンやパリは70年代後半に無電柱化(地中化)率100%を達成した。ニューヨークも同時期に70%を超え、現在はほぼ100%に。一方、日本で「無電柱化計画」が始まったのは86年で、07年3月末の無電柱化率は市街地の幹線道路でさえ11・8%、全体では約2%にとどまる。

 95年の阪神大震災では、倒壊した電柱が道路をふさぎ、消火や救助活動が遅れるケースが各地で相次いだ。地中化の最大のメリットは強い耐震性にある。井上事務局長によると、地中化は電線や電話線を地下溝内の配管に通す「共同溝方式」が主流だ。阪神大震災の際、神戸など5市の電話回線の被災率は、地上部分の2・4%に対し、地中は0・03%と約80分の1だった。

 毎年のように台風に見舞われる沖縄県も、防災の観点から地中化に積極的に取り組んでいる。県道路管理課によると、宮古島では03年9月の台風14号で電柱約900本が倒れ、ライフラインが寸断されたり、道路がふさがれる被害が出た。県は04年度から5年計画で県内の幹線道約37キロの整備事業を進めている。うち11キロは沖縄本島以外の離島で県道路管理課は「港や病院と住宅地を結ぶ道路を中心に進めている」と説明する。

 災害時に限らず、地上から電柱がなくなることで歩道が広がり、ベビーカーや車椅子が通行しやすくなるなど、日常生活にも地中化のメリットは浸透しつつある。

 一方、最大の課題は巨額のコストだ。共同溝設置は長さ1キロ当たり約5億6000万円かかる。工費は国・自治体と電線管理者の電力・通信業者が6対4で負担しているが、自治体の財政状況や電力・通信の需要予測の難しさも絡み、「頭の痛い問題」と国交省。復旧工事も地上の方が容易で、「地中化すると被災場所の特定が難しい」(関西電力)という一面もある。

 しかし、井上事務局長は「電柱は災害時、命を奪う凶器にもなる。災害に強い街をつくるには、地中化を一層進める必要がある」と力説する。国交省道路局地方道・環境課も「防災や安全、快適な歩行スペースを確保する点からも地中化のニーズは高まっている。今後、自治体や電力会社の負担を軽くする制度を検討したい」と話している。【村松洋】

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 ■都道府県別の無電柱化率

 <高率の都道府県>

1 東京都  30.6

2 鳥取県  30.1

3 山口県  26.9

4 鹿児島県 26.0

5 宮崎県  19.6

 <低率の都道府県>

1 奈良県   2.4

2 愛媛県   3.2

3 三重県   3.3

4 滋賀県   3.6

5 兵庫県   4.7

〃 北海道   4.7

 ※国土交通省資料より。06年度末の市街地幹線道路の無電柱化率(%)

毎日新聞 2008年6月11日 東京朝刊

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