全国銘菓風土記

全国 五つ星の手みやげ
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 料理記者歴50年の岸朝子氏がライフワークとしてリサーチしてきた全国津々浦々の土産銘菓の中から、伝統、味、地元定着度、地元推奨度、全国的知名度などの観点から厳選した1000点以上(メイン400点以上、サブ600点以上予定)を、47都道府県別にフルカラー800ページ超(予定)の大ボリュームで紹介する、まさに日本国民必携の永久保存版手みやげ大全が、2008年夏、ついに発売されます。
 コラムの「全国銘菓風土記」では、全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン(テレビ東京系)の中尾隆之氏がゲスト参加。執筆を担当します。
 出版に先立ち、その中尾隆之氏のコラム「全国銘菓風土記」を、北から南まで順に本ウェブサイトに連載します。
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全国 五つ星の手みやげ

全国土産銘菓TVチャンピオン中尾隆之の 「全国銘菓風土記〜北陸・甲信越〜」

 日本海に沿う新潟、富山、石川、福井の各県は全国有数の米どころ。特にコシヒカリの本場新潟には、伝統の「笹だんご」(新潟・笹川餅屋、古町伊勢屋ほか)の店が迷うほどある。また「柿の種」(長岡・浪花屋製菓ほか)など炒ったり焼いたり蒸したりした米菓の種類や美味しさでは群を抜く。
  日本三名菓の一つであるやわらかで上品な落雁の「越乃雪」(長岡・大和屋)も、和三盆糖を加えたもち米の寒ざらし粉。福井特産の絹織物に見立てた純白の「羽二重餅」(福井・松岡軒)やヨモギの香りが清々しい山梨の「笹子餅」(大月・みどりや)なども米の美味しさが生み出した名物菓子である。
  加賀百万石の城下町で茶の湯の発達とともに洗練された茶菓が多く育った古都金沢もまた、生落雁で羊羮をはさんだ「加賀宝生」や紅白の落雁「花うさぎ」で160年余続く諸江屋や生姜と糖蜜が風雅な「柴舟」(柴舟小出)、加賀藩の紋どころを許された3色の餡たっぷりの「加賀さま」(坂尾甘露堂)、極上の小豆の風味が決め手の「きんつば」(中田屋)など風雅な茶菓に事欠かない。日本三名菓に数えられる落雁の「長生殿・森八」も金沢を代表する銘菓である。
  北陸三県で共通するのはきめこまかな小豆餡で一口サイズの餅を包んだ「あんころ餅」(松任・円八ほか)。これは北陸本線の主要駅売店で必ず売っている。
  フルーツ王国の山梨ではブドウを粒ごと砂糖液につけた「月の雫」(甲府・松林軒製菓)やコケモモをワインゼリーの中に封じ込めた「はまなし」(富士吉田・金多留満)などの果物菓子のほか、戦国武将の武田信玄に因む「信玄餅」(笛吹・桔梗屋ほか)が長い人気を保っている。
  長野では栗の名産地の小布施に「栗かの子」(竹風堂、小布施堂ほか)や純栗ようかん(桜井甘精堂ほか)などの栗菓子の店が大小10軒余、共存共栄している。
  信州人がよくお土産に持参するのがリンゴ、ブドウ、アンズなどの果実の味を生かしたゼリーの「みすゞ飴」(上田・みすゞ飴本舗飯島商店)である。
  諏訪大社参りと温泉帰りの土産に昔から好まれている「新鶴塩羊羮」(下諏訪・新鶴本店)はさっぱりした甘さ。アンズ、クルミなどを使ったお菓子も長野県には多い。
中尾隆之
1942年北海道生まれ。高校教師、出版社を経てフリーランスライターに。月に10日は取材旅行の現場主義で、町並み、鉄道、温泉、味覚等の紀行コラム、エッセイ、ガイド文を執筆。とくにお菓子好きで、新聞、雑誌にコラム連載のほか、『全国和菓子風土記』の著書もある。2007年8月に「全国土産銘菓選手権初代TVチャンピオン」(テレビ東京系)に。
つづく