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2008-06-14

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偶然に...

以前、ある研究会で隣の席に座った方と、たまたま話しこむことになり、その後食事を一緒にとって歓談をして帰ったことがあった。研究分野は全く異なる方だった。しかし研究の話だけでなく、音楽の話など非常に面白かった。楽器を弾く方に出会ったとしても、普通その内容は大きく異なる。ところが、この方は研究もやっているが、実はパイプオルガンの奏者だという。それで、バロック時代からの楽器がどうだとか、楽器共鳴するしくみはこうなっているとか、さらには対数軸で標記した音階周波数が何Hzなのかまで理解する方にお会いしたのは初めてである。そのときは「またお会いしましょう」と挨拶してそのまま帰ってきた。

その際いくつか研究に関する図を見せてくれた。その中に見覚えがある図があった。それは回転する円筒のなかに粒がいっぱい入っていて、ぐるぐる回転している状況を再現した図だ。これはもしかして「デジャブ」っていうやつかな?粒がカラフルに色分けしてあり、きれいな金平糖を作っているような状況だ。図を見ると、あまーくて懐かしいイメージがわき上がってくる。しかし、もしも白黒でコピーしたら、コンクリートミキサ車の中身と思っていいと思う。そのときは、「どうしてこの人のパソコンにこの図が入っているの?」と少し気にはなったものの、そのままにして忘れていた。

昨日、そのことをふと思いだして、そのお名前を研究室の隣の席の人に話した。同氏はその国に留学したことがあり、「本当はそう読むんじゃなくて、発音は○○です。」と教えてくれた。しばらくすると、急に大声を出して「この先生、Dr.K.P.先生と共著の論文がありますよ」という。どうも論文検索サイトでその方の文献等を調べてたらしい。パソコンをのぞき込んでみると、英語じゃないので私には読めないんだけど、ヒットした論文の中に、十数年前のものだが、確かに「K.P.先生」と共著の論文がある。

「K.P.先生」は、現在の研究分野について、従来低周波のみで十分と考えられていたが、「K.P.先生」が現場測定と理論解析をもとに、中高周波域の荷重の重要性を世界で始めて指摘して、その影響性を理論的に体系化した欧州の著名な研究者である。現在の研究分野の方なら誰もが名前だけは知っている。残念ながら2年前に他界されたと聞いている。また、私の隣人はかつてその国に留学した折にその「K.P.先生」に懇意にして頂いて、いろいろ直接教えて貰ったという。奇遇だと言っていた。

実は、私も「K.P.先生」の名前を聞いて驚いた。私が、現在の研究テーマをするようになったのは、10年ほど前に偶然にその方の論文を読んだことがきっかけだ。そのときは、論文中の金平糖の絵を見て、数値計算シミュレーションでこんな挙動が再現できるのだと非常に驚き、この分野の研究を是非やってみたいと思った。

私は今日まで、かつて私が読んだ「K.P.先生」の論文は、てっきりその主著者の「K.P.先生」の研究成果と思っていた。それは、「K.P.先生」の研究成果をまとめた著書のなかで、当該の論文の著者には、高名なもう一人の先生とともに「K.P.先生」のお名前だけが載っていたからだ。私の隣人も同じように思っていたという。「K.P.先生」の論文を開いてみると、先日食事しながら見せてもらった「見覚え」がある金平糖の図が確かに入っている。先日の印象はやはり「デジャブ」ではなかった。

さらに論文を検索していたら、金平糖オリジナルの味付けは、先日研究会であった方がその数年前に数値解析を行い、論文で発表したものであるということがわかった。「K.P.先生」とその方が、いかなる理由で一緒に研究することになったのかはわからないが、主著者の「K.P.先生」は、おそらく共同研究者の成果をまとめただけであり、実は先日研究会でお会いした方ともう一人別の研究者の2名ですべての計算をされていたということがわかった。

私が研究するきっかけとなった論文の本当の著者の方に、彼の母国から1万6千kmも離れた東方の島國「ジパング」にて出会うという偶然に非常に驚いてしまった。

「有朋自遠方来不亦楽 」(朋の遠方より来る有り亦た楽しからずや)

研究の記録

研究スタッフのB君について2点だけ考え違いをしていることがあり、そのことを改善するように指示をした。

私は「チンゲンサイ」じゃなくて「ホー・レン・ソー」だったかな?これが社会人の基本だとか言う紋切り型は好きではない。ホー・レンの語呂合わせは、まず順序が逆だし、「タイカノカイシン、ムシコロス(ムシゴヒキ)」のようにわざわざ「語呂合わせ」する必要はない。下手な川柳みたいでセンスがないし、あまりに恥ずかしすぎていえない。どうせ語呂合わせするんなら、雇用派遣の手続き、委託業務の発注手順、工事の手続きなど、いつも手続きミスで手戻りになりがちなことすべてを、間違いがないように「語呂合わせ」して、社内の赤本たる「連想記憶術」として裏でこっそり販売してほしい。

それにしても人に注意する自体、本当は「格好悪く」て「恥ずかしい」ことだ。他人に注意する際は、大なり小なり、本心とは異なることを言わねばならず、頭の中で春をひさぐような苦痛が伴う。この苦痛を、言われる側はできれば理解して貰いたいところだ。

◆1つめは「業務の記録を詳細につけなさい」

B君は、同期入社の誰もが認める「秀才」である。私もそう思う。しかし、事務手続きや時間管理など諸々の雑事が苦手である。大学研究室なら研究だけできれば十分活躍の場がある。しかし民間の研究所では、研究以外に諸々の雑事も同時にこなすことが要求される。B君は、事務手続きをはじめ雑用が苦手で、1日の時間の9割方を雑務に追われ、本来の能力を発揮できる研究にはわずか1割の時間しか投入できていない。専用の秘書さんでもいてスケジューリングや事務手続きを代行して貰えば、最高のパフォーマンスが発揮できるはずだが、なんせ一番下っ端なのでその余裕がない。

本来は、研究だけが得意とわかってて採用しているので、最高のパフォーマンスを発揮できるように特別に秘書さんをつけてあげていいようにも思える。実は数週間前から、同君には実際に秘書をつけている。「一番下っ端なのに秘書なんでとんでもない」とお叱りをうけそうなので、表向きは「アルバイト」としているが、実際には同君の秘書であることに間違いない。

B君は、ノートを取る習慣がない。大学講義も見ただけで覚えているようで、ノートを取る必要性があまりなかったらしい。でも、1つのことだけやればいい状況ではノートなんていらないが、仕事は少なくとも同時に10個くらいの課題を抱えて処理する必要があり、頭の中だけでは対応出来なくなる。スケジューリングや仕事の進捗状況を客観的に把握するには、業務の記録をつけて、その記録をもとに自己の成果を、自分と別の視点で評価することが不可欠だ。スケジューリングについてはパソコンのソフトでもよい。

参考になるかどうかは解らないが、私の記録の付け方については、この日記自分のための勉強をするなら早朝から「低レベル勉強法のススメ」現場調査のメモで書いた。私の場合も事務処理は苦手であり、かつ、嫌いなので、最低限の努力で「チョンボ」にならないようにするためであり、したがって、ノートは丁寧に書く必要はなく、自分だけわかればいいと思っている。

どこまでの内容を書くべきかというと、例えば1ヶ月後に問い合わせが来ても、再度ノートをみれば忠実に再現できる程度の情報を書くということになる。日付、作業内容、使用機材、機材の番号、ファイル名、ソフトでの作業手順、云々。とくに、数値解析をする際は、1日で100ケースとか計算することもあるので、ファイル名と保存場所、プログラムのバージョン管理などはかなり細かく記録しないと、せっかく実施した作業のすべてがゴミになりかねない。とくにWindowsは、他のOSと異なり、ファイルフォルダの日付管理や属性管理が貧弱なので、後日控えのファイルタイムスタンプから作業手順を辿ることが難しい。細かく記録する必要がある。書くのが面倒なことは、小さく縮小印刷・縮小コピーして日付とともに貼り付けておけばそれで十分。B君については、何でもいいから、毎日したことをその場で時間とともに何でも書くように指示した。


◆ノートに記録をつけることには別の意味がある。

ノートは自身が仕事をまじめに実施したという揺るぎない証拠である。いらぬ嫌疑がかかっても、このノートがあなたの勤務の状況や正当性を証明してくれる。上司からハラスメントを受けたり、不当に解雇されたり、そのような不幸な状況が起こっても、あなたの正当性を証明してくれるのはこの業務の記録である。

先般この日記研究者倫理に関する指針 『研究活動の不正行為への対応のガイドライン』で述べたが、その中で紹介した平成18年8月8日付けで文部科学省科学技術・学術審議会「研究活動の不正行為に関する特別委員会」によって制定された『研究活動の不正行為への対応のガイドライン』のなかに次のような記述がある。これは、研究における不正行為に関するものだが、その19頁(2)に「不正行為の疑惑への説明責任」の項では、何らかの嫌疑がかかった場合、その被疑者は、自己の正当性を証明する証拠を提出する必要があるとされている。

被告発者が生データや実験・観察ノート、実験材料・試薬等の不存在など、本来存在すべき基本的な要素の不足により証拠を示せない場合は不正行為とみなされる」とある。

研究の経過を記したノートや実験現場での野帳など、その内容や経過を野帳に記すということなどは基本的なことであり、研究を行うにあたっての記録を残すことはいわば「研究の作法」の1つである。私は学生たちにもそのように指導していた。この研究の記録を残すことは、研究推進のために必要なことだけでなく、仕事上での無用なトラブル・不正行為など好まざる事項による被害を防止する上でも重要である。



◆2つめは「解らないことは間髪入れず聞きなさい」

学校ではダメな先生に習うと「だまって聞きなさい」ということが美徳とされる。正しくは「解らないところは、その場で遠慮無く聞きなさい」だ。まあ、学校では、授業とともに、試験があるので、試験結果をみればどこが解らなかったのか一目瞭然でわかり、その内容だけを再度習得すればいいことになる。ところが、働き出すと試験がなく、どこまで解る必要があるのか、また、どこが解っていて、どこが解らないのかすらわからない。どこまでわかる必要があるかというと、おそらく仕事で出てくる内容はすべて知っておく必要があると思う。ただし、どこまで解る必要があるかというと、仕事上必要な範囲であり、そこのところが最初の頃はわかりにくい。

会社としては、仕事上は必要事項はすべて知っててもらわねばいけないので、解らないことがでてきたら、その場で間髪入れず聞くべきである。「恥ずかしい」とか「格好悪い」という私情を挟むような性質のものではない。給料を貰っているからには、「質問すること」自体が仕事の一環と認識すべきだ。また、「解らないことに気づくこと」や、さらに「解ること」も給料の一部である。「解らないこと」は決していけないことではなく、「解らないことに気づいたこと」は、仕事をやっていく上で1段階向上したことに他ならない。試験で間違ったら、それは悪いことではなく、むしろ自分の不足分に気づいたことであり、そこをさらに勉強すればいい。

B君は品行方正で、話の途中で話を遮ることは礼儀に反することと考えているのかもしれない。礼儀に反すると考えるのはあくまで私的な話のことであり、会社の場合は相手が偉い人であってもプレゼン中であっても聞かねばならない。同君には「解らないことはその場で聞きなさい」と指示をした。それに応えられない場合は、相手方がおかしい。

しかしながら、今の職場はどの方も礼儀正しく、いろいろ研究会があってもだれも質問をしないような風土が残念ながらある。これは「質問がない」のではなく、内容が理解できていないから「質問すら出来ない」のが本当のところと思う。学問は対等が基本であり、対等であると認識すれば、質問を躊躇することは全く無用な気遣いとわかる。今後の会社を背負っていく中心人物のあなたが理解しないと、それはとりもなおさず会社の損害である。身近なところから自由に聞ける環境を作っていく必要があると思う。

2008-06-13

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1つのことしかできない。

仕事の手配をしくじったとのことで、研究室の一人が説明に来た。いろいろ聞いていたら「2つ以上のことが同時に処理できない」という。女性は、例えば、子供あやしつつ、TVを見ながら電話で話して、同時に食事の準備をして、旦那とも会話しているというように、いろいろ同時に出来る方が多いようだ。

学校で授業していても、女子学生は友達とおしゃべりしながらでもちゃんと授業も聞いている。質問するとちゃんと返事が返ってくる。方や、そのお相手の男子学生はというと、女の子の一方的な「問わず語り」に夢中で授業なんか聞いていない。同じだけ話していたはずなのに、試験をしてみると女の子は通って男の子は落第点。男性はたいてい1つのことしか出来ない。それは、同君だけのことではないので、全く気にする必要はない。

見方を変えれば、1つのことしかできないことは、むしろ1つのことに集中力できれば、いい成果を出せるすばらしい性質と考えればいい。それならば、無駄な負担を簡単に終わらせて、最重要事項に最大限の時間を確保し、そのことのみに集中できる環境を整えればいいということになる。そのためには、全体のなかでの個別の事象の関連性と重要性を的確に見極める能力がいる。この肝心なところが新入社員の同君では正しく判断できないらしい。

それと同君が投稿中の論文の修正意見が返ってきた。査読者3人に共通した意見は「研究の位置づけがで不明確」「文献レビューがない」「目的と結論の整合性がとれていない」というもの。計算過程については問題ないが、自分の成果のみが書いてあって、独りよがりとの判断だ。文献のレビューが無ければ通常なら不合格だが、ありがたくも、追加・修正すれば登載も可との返事だった。しかし、文献のレビューを書くには、かなりの時間をかけて相当量の論文を精読しなくちゃいけない。

査読者の指摘は、論文を読んだりする日常の勉強が不十分ということに他ならない。話は簡単だが、1日は24時間しかない。1つを得るには1つを手放さねばならない。この排反事象のジレンマを超えるのがちょっと難しい。

2008-06-12

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粒子法と粒状体解析

今日も朝から「シンポジウム」の会場に行ってきた。ここ2年間は研究テーマの「ゼロからの立上げ」の作業だけで忙しくて、研究のための理論展開をしたり、最新の論文をじっくり読んだり、あるいは、今回のように、ほかの方の研究発表をゆっくりと聞く余裕がなかった。でも研究をやるからには、やはり「考える時間」が必要だ。

午前中は「粒子法」、「粒状体解析」をはじめ、粒子の挙動に関する最新の研究成果について、国内の第一線の研究者による特別講演とパネルディスカッションがあった。「粒子法」と「粒状体解析」については、私も数年前から使っているが、粒を扱うことでは同じだが、手法的には全く別のものととらえていた。

ところが、今日の講演会や発表を聞いて、「粗視化」や「構成式」をキーワードとして、非常に細かい粒から、形の影響が出るほどの大きな粒までの挙動を、統一的な理論として体系化できるのかもしれないとの方向性が見えてきたように思う。

計算量と計算速度については、今日のプレゼンでは、地球シミュレータを用いた900百万個の粒子の解析の紹介があった。地球シミュレータ大学間相互利用の大型スパコンも、今の研究所からも使用出来る。私はこれまでパソコンの並列処理程度の小さなものを想定していたが、将来は地球シミュレータで計算することまで考えれば、計算量や計算速度のことはたいした問題ではないと気づいた。

「これは面白い。ここ1〜2年は、この話に本気で取り組む価値がある。」

次回の演奏会にむけて

次回の演奏会の曲が全く仕上がっていない。ここ数日、昼間は研究会に顔を出し、帰ってからは新しい課題への準備と原稿作成に追われている。このままではどうしても日曜までには予定の曲ができあがりそうにない。

前回の反省で、2ヶ月に1回程度の頻度で、目標の曲を完全に仕上げることとし、その間はミニギター古楽器の演奏など別のものをすることにしたが、今回はその「つなぎ」の演奏の準備すら出来ていない。どうしようかな?

2008-06-11

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摩擦について

日頃参加する研究会や講演会は、自分たちの分野のみに限定された狭い範囲のものが多い。参加者は類似の研究をしている一部の研究者に限られ、殆ど顔見知りばかりで、出てくる意見や反応も予め想定された域を超えない。実績になるので発表するが、その意義についてはよくわからない面がある。

今回の会議は、十数団体の多様な研究分野の学会が協賛し、そのなかで計算力学に関する研究のみの発表であった。どれを聞いても全く別分野だが、全く異なる分野なのに、非常によく似た解析法を使っていたり、論文の全体的な流れは似ているが、その着眼点や手法、応用範囲が全く異なっていたりで、その違いがあって興味深いし、面白いものばかりだった。

その中の1件で、理学系の物理学が専門という方の研究発表があった。その方の研究は、「静止摩擦」と「動摩擦」という「力学」でいうところの、非常に「基礎的な内容」であった。我々は「摩擦」と「減衰」とを、エネルギーが無くなる現象として、殆ど類似のものと扱いそうだ。もちろん、数値モデルで扱う際は、たとえば速度をv, 垂直抗力をNと表示すると、「摩擦」については -μN(v/|v|)、「減衰」については-αvのように、もちろんそのメカニズムに応じた異なる式で表現している。しかし、意味合いとしてはエネルギーが徐々になくなる現象として扱っていることには変わりない。

ところが、その方の話は違っていた。

例えば単振動の振り子を考えると、速度に比例する減衰があると、徐々に揺れの幅が小さくなり、実現象としては静止状態になる。これを、「物理学1」の教科書を参考にして、運動方程式を解くと、「減衰振動」になり、指数関数的に振幅は減少して、0に限りなく漸近する。現実にはどこかで止まってしまうが、理論的にはどこまでたっても微妙に揺れており0になることは決してない。

しかし、摩擦の場合は、ある時間がたつと完全に0になって静止状態になる。ちょうど辞書を机の上で滑らすと、はじめは滑っているがじきに止まってしまうのと同じだ。それで摩擦を定式化することにかなりの難しさがあることがわかり、同氏はそれをしっかり定式化して見せた。こんな身近なところ、基礎の基礎のようなところに、最先端の「研究の種」が転がっていたに非常に驚いた。

この話を聞いて、私は自分の論文で、間違いとはいえないものの、方針を誤ったことに気づいた。私の計算では、エネルギー散逸の最大の原因はこの「摩擦」である。現場でエネルギー量を測定したら、実現象に解析結果を一致させるには、系全体に非常に大きな減衰のメカニズムを導入しなければならなくなった。それで、一般的な方法で摩擦をモデル化したが、摩擦のみでは実測値に一致する減衰効果を再現できなかった。それで、上述のような速度に比例する「粘性減衰」を導入し、その係数を通常より1桁大きくして、概ね現象に一致したというものだ。しかし、今日の話を参考にすると、私の論文は「無理矢理、現象に合わせただけ」ということになるのかもしれない。

工学の分野では、ついつい現象にあえばそれでいいと思いがちだが、やはり、基本的な理論が解った方はすばらしいと思った。

「プレステ3」linuxによる高速計算環境の構築

おまけの話だが、パソコンでは計算速度が遅く、計算環境をどうしようかと困っている。分散処理の計算ツールについては、マイクロソフト社も遅ればせながら公開している(Microsoft Windows Computer Cluster Server 2003)。言語は、Fortran77、Fortran90、Cが使えるそうなので、研究用に購入しようかと検討中である。また、東大が中心で推し進めている「ADVENTUREプロジェクト」(設計用大規模計算力学システム開発プロジェクト,Development of Computational Mechanics System for Large Scale Analysis and Design )を使うと、オープンソースの並列処理の数値解析システムが容易に構築できる。

実はある講演者に「どんな環境で計算しているんですか?」と聞くと、ソニーの「プレステ3」という。PLAYSTATION®3に搭載されたグラフィックチップCell/B.E.プロセッサ」の強力な演算能力によりLinuxを動かしているとのこと(おそらく「PLAYSTATION®3 Linux Information」のサイト)。Cell BEについて調べたところ、Cell BEは3.2GHzで稼働し、設計上は4GHz以上の周波数で稼働させることも可能で、計算能力はすさまじく、浮動小数点演算性能で256GFlopsを超えるという(出典「プレステ3に搭載、断トツ性能の「Cell」はITシステムを変えるか(2006/9/27))」より)。

プレステ3」のlinuxが本当はどの程度か確認した訳ではないが、計算は単精度だが、それでもインテルのDualコアよりは数十倍の高速演算ができるという。インストールには、かなり調べないといけないと思うが、わずか3万円の投資でそのスペックが実現できるのなら考えてもいい。

2008-06-10

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乃木坂の日本学術会議まで

研究発表のために、電車を乗り継いで、乃木坂にある日本学術会議まで行ってきた。今回の発表は「連成・複合現象のシミュレーション」というセッションに応募した。当初その担当の先生より「投稿しませんか」との連絡をメールで頂いたからだ。あまり考えずにそのセッションに応募してしまった。プログラムをみると「破壊力学」とか「離散体の力学」などもあり、研究の内容的にはそちらに近いと思う。

我々の計算の特徴は、ものすごく細かいところまで実物を忠実に再現したモデルを使っていることである。実物の1個1個の粒の形状までをmm単位で精密に三次元測定し、それを三次元モデルで正確に再現して、それらを数多く集めて5〜6mの実物大の構造を有するモデルとした。細かいところまで再現するとなると、適当にすませることが出来ず、測定もモデル作成もすべてのプロセスが手作業による。計算には汎用の解析プログラムを用いているので、方法としては難しくはない。しかし、モデル作成がかなり面倒くさすぎるので、通常の人にはやりたがらないところが特徴である。

スポーツなどの勝負ごとはルールやレギュレーションが、あらかじめしっかり決まっており、実際に試合をやっても勝ち負けは明らかだ。まして、体力や技が劣るものには勝ち目はない。今日の発表会も試合と言えば試合なのだが、研究の場合は、勝ち負けの規準が決まっていないところが大きく違っている。頭が切れる方は理論展開や難解な数値計算をすればいいが、体力が気力だけが売りという方は、勝ち目は無いかというとそうではない。非常に面倒な精密な実験や、ただ単に回数だけが多いというような繰返しの実験、体力がいる現状の調査など、いくらでも自分の得意な分野で太刀打ちできる。ルールもレギュレーションも自分で決めればいい。私は研究のそのようは自由度の大きさがいいと思う。

ところで話が今回のモデルに戻るが、我々のモデルには難点がある。モデルが細かく精緻にできているため、その微細な高周波の動きを再現することを考えると、1万分の1秒とか10万分の1秒単位の非常に小さな時間刻みで収束計算を繰返さねばならない。わずか1秒間の挙動を再現するのにも、数万回の計算を繰り返すことになる。50cm程度の小型モデルシミュレーションでも、パソコンベースでは軽く1週間程度かかってしまう。現時点では試験的な解析なので、1週間パソコンを動かしたままで、別の仕事をしておいて、1週間後に出来がどうかを確認するというのでも全く問題ない。

しかし、次の段階として、現状の20倍程度の大きさの実用的な解析モデルで、実時間10秒程度の挙動を再現するとなると、パソコンでは軽く数年はかかってしまう。それでスパコンPCの並列処理計算に移行するのは避けられない状態だ。実は、当初「投稿しませんか」と案内をくださった先生が、並列処理のプラットフォームや計算ツールをいろいろ公開していることもあり、今回の発表がスパコンPCの並列処理計算に移行する「きっかけ」にならないかと期待したからだった。

しかし、同じセッションでの講演内容をみると、スパコンパソコンでの多くのCPUを用いた並列解析プラットフォームを用いて、個体構造物と高温液体との連成解析、高周波電磁波の熱伝導連成解析、固体液体混相流など、いずれも圧縮性・非圧縮性、高温・低温の流体の流れが関与する超難解なものばかり。原子炉の高温・高圧で、液体成分も含む水蒸気の計算などが一番あいそうな内容だ。いわば、超難解な問題を、スマートな頭脳でもって、計算パワーをふんだんに使ってに解くというものだ。我々のように、「あまりに面倒すぎて誰もしたがらない」というのが特徴というような「ドロ臭い」研究はなく、かなり「場違い」との感じだった。

やはりセッションのことについては、純粋に「研究の内容」のみから考えて、それに付随する「打算」についてはあとまわしにするべきだったと思う。でも、当初案内を頂いた先生をはじめ、いろいろな方より有用なご指摘頂いた。「ダメ出しされてこと意義がある」という観点では、それなりの成果があったといえそうだ。

自分でやってほちいでちゅ。

共著者が会場に来ていない。同君が学会の発表会を「すっぽがした」のは、昨年の別の会議についで2回目。ここ1年でも、現場での危険作業の立会い時に立ったまま寝ていたり、顧客への説明会で出張先に連れて行ったら、会議室でのプレゼンの最中に寝ていたり、また、ほんの数ヶ月前には、顧客相手の報告会に、約束時間に30分以上遅れてきたこともあった。昨年の実物大試験では、8時30分の集合時刻に来ていないので電話したら、自宅で熟睡していたこともあった。これだけ度重なると、本当に「大丈夫なの?」と思ってしまう。

通常の会社は勤務時間に厳しい。とくに遅刻については、働き始めると徹底的に叩き込まれる。遅刻を繰返すと懲戒の対象にもなる。ところが、今の会社フレックスで朝は10時までに出勤すればいい。また、通常業務の遅刻なら会社も出勤簿で掌握できるが、出張先や現場のこととなると会社は把握できない。上司が注意する程度だ。

同君は会社の隣に住んでおり、通常なら9時過ぎまで寝ていて、それからゆっくり準備しても「セーフ」だ。ところが、今回のように、遠くの会場に朝8時30分までに到達せねばならないときは、少なくとも朝6時には起きないといけない。たぶん、今朝も目を覚ましたその時点で「アウト!」。すでにお手上げ。

懲戒」という強い「後ろ盾」が無い状態では、その場やその後注意しても、本人がよっぽどの覚悟で「肝に銘じない」限りは「後の祭り」だ。これらのことも、パソコン相手の作業なら別段問題にならないが、実験や現場測定では危険がつきまとうし、下手すると事故に繫がりかねない。対外的には、会社の評価や信用にも関係する。会社で働いていると、個人の責任だけでは済まされない面がどうしてもでてくる。同君にもこれらにことについても解って貰う必要がある。

通常の業務はまじめにこなしているので些事といえば些事なのかもしれない。しかし、「朝○○時に起きなさいネ」、「前の日は○○時に寝るんでちゅヨ」とか「○○ちゃん、朝ご飯はちゃんと食べまちたかー?」のような、衣食住などの基本事項や時間管理については、他人ではとうてい入り込めない。

「もう社会人なのだから、自分でやってほちいでちゅ。」