「日本の医療は非常事態」--。後期高齢者医療制度など国の医療費抑制政策や、医師不足、地方財政悪化などで窮地に立つ地域医療を守ろうと、公立病院の関係者らが集まり、大津市雄琴6の琵琶湖グランドホテルで14日、「第18回近畿自治体病院交流集会」を開催。「医療制度研究会」副理事長で、埼玉県済生会栗橋病院副院長の本田宏医師が「正しい知識を伝えないと医療崩壊は加速の一途をたどる」と講演し、参加した約200人は真剣に聴きいった。【近藤希実】
本田医師は「日本の医療制度の問題点と解決策」をテーマに、まず「日本の医療費は先進国中最低で自己負担額は最高」と紹介。米国からの視察団が「患者が雑魚寝(入院病室が大部屋)でまるで50年代のよう」と驚いたことを挙げ、「大部屋も『3時間待ち3分診療』も普通と思っているから危ない。欧米人は日本で入院したがらない」と明かした。
さらに、日本の医師数26万人は人口当たり世界63位で、先進国で作る「経済協力開発機構(OECD)」の平均から14万人不足していると指摘。300床規模の日米の公立病院を比較すると、「ボストンの医師370人に対し、日本は39人。秘書やレジデント(研修医)に至ってはゼロで、途上国並み」と説明。会場に「人が余っている病院はありますか?」と問いかけても、手を挙げる人はいなかった。
一方で、日本の道路密度は先進国でも群を抜いて高く、本田医師は「日本は社会保障国ではなく『社会舗装国』」と批判。「国は『医師は年3000~4000人増えている』とごまかすが、それではOECDの平均に届くだけで40年かかる」と断じ、「このままでは医療ばかりか日本が崩壊する。食い止めるのは国民みんなの社会的責任。周りの人に現状を伝えてほしい」と呼びかけていた。
毎日新聞 2008年6月15日 地方版