福岡発アジア映画行き

　という疑問を、僕は持っている。

　三週間くらい前だっただろうか、買い物に出かけたときに、住民が署名活動をしていた。急いでいたので、僕は署名をしなかった。
では、時間があったら、署名をしただろうか。趣旨に賛同すれば、僕は署名をする方だ。

　おそらく、時間があったら、僕は署名をまずはしないで、疑問をぶつけただろう。
　「なぜ、刑務所があったらいけないと考えるのですか」と。

　

刑務所の中の人間が脱走して、付近の住民に危害を与えるという可能性は、ほとんどないと思う。
　では、刑務所が近くにあることで、子どもたちの心がねじくれてしまうということはあるんだろうか。これも、僕には疑問に思えるのだ。

　深夜まで遊んでいても、どこの誰だかわからないようなコミュニティの方が、よほど子どもたちにとっては害ではないだろうかとも思う。

　こんなことを考えてしまうのは、僕の家の約１キロ離れた場所に、精神科の病院があるからだ。たまに朝早く電話を掛けてきて、タバコを取りに行くから用意して欲しいとか言ってくることはある。また、意味不明の会話をすることもある。また、患者同士で仲良く手をつないで歩いているのを見かけることもある。アルコール中毒患者もけっこうたくさん入っている。

　しかし、言えることは、危害を加えるような人たちは、限りなくゼロに近いということだ。頭がよくて、人をだまそうとしている人たちよりも、ずっと安全だ。それに、健常者で車を運転しながら携帯電話の受話器を持ったまま話をしているようなヤツを一日に一度以上は見かける。そのような不埒な奴らよりに比べると、この「記念病院」に入っている患者たちは、格段に危害を加えない人たちなのだ。

　だから、記念病院が近くにあっても、何てことはない。

　では、刑務所ならどうか。刑務所の中の人間が、外に出るということは、ほとんどないだろう。
　刑期を終えた人間が出てくるということはあるだろう。

　しかし、再犯をしてしまう原因は、元犯罪者に対して、世間が冷たいからだとも言える。刑務所があるだけで嫌がるというのは、ちょっとおかしいのではないかと思った。

　だから、署名をする気は、今のところはない。だから、住民たちに僕が抱えている疑問をぶつけて、彼らがどう考えているのかを知りたかったのだ。

　ところが、講演会が終わって、彼らがいた街頭に戻ると、もう彼らはいなくなっていた。午後５時を少し回っていた。彼らの主張や、署名は功を奏し、刑務所は違う場所になるのだろうか。

　うちの子はいい環境で育てたい、と考えるのは親として自然な気持ちだという気持ちはわかる。そのことが、公立学校ではなく、私立学校に行かせる子どもが増えている理由の一つなのだろう。しかし、自分よりも弱い立場にいる者に対するいたわりの気持ちとか、地域の人たちと一緒に、何かを作り出していこうという気持ちがこれで生まれるのだろうかという疑問は残る。自分に敏感で、他者に鈍感な人ばっかり作られていくのではないだろうか。

　刑務所が、近くにできるかもしれない。このことが、付近の住民の団結力を生んだだとしたら、皮肉なものだなあと思う。ひょっとすると、地価が下がるということもあるかもしれない。

　以下の施設について、１００点満点の数値で表してみた。この数値は、人によって異なると思う。


１　刑務所
　　どこにも作って欲しくない度　　…０　　　
　　家の近くには作って欲しくない度…０

２　ごみ処分場
　　どこにも作って欲しくない度　　…０　　
　　家の近くには作って欲しくない度…５０　（地下水が汚れるから。実際に、近くに処分場がある）

３　原発
　　どこにも作って欲しくない度…９０
　　家の近くには作って欲しくない度…１００

４　精神科の病院
　　どこにも作って欲しくない度…０
　　家の近くには作って欲しくない度…０

５　繁華街
　　どこにも作って欲しくない度…０
　　家の近くには作って欲しくない度…８０　（繁華街がある方が、よほど子どもには悪いと思う）

６　風俗店
　　どこにも作って欲しくない度　　…５０
　　家の近くには作って欲しくない度…７０　（風俗店の近くに幼稚園があるのを見かけることがある。実際にそこで生活をしている人からすれば、必要なものなのかも。託児所はもっと必要になると思う）

7 場外馬券場
　どこにも作って欲しくない度…２０
　家の近くには作って欲しくない度…８０　（交通量が増える。ギャンブル狂が集まってくる。自分も競馬が好きなので、馬券場が近くにあると賭けてしまいそうなので、近くにはない方がいい）