岩手・宮城内陸地震は最大震度6強、マグニチュード(M)7・2と大規模なものだった。中山間地域に目立つ地震による土砂災害にどう対処するか、重要な課題であることをあらためて示した。
東海地震、東南海・南海地震、首都圏直下型地震など、都市化地域の大地震への警告、被害想定が盛んな一方、またも東北地方で規模の大きい地震が起きた。震源が内陸、海溝を合わせ同地方は、わが国でもM5以上の地震が多い地域である。
しかも今回は同じ地方でも、比較すると被害は都市部が軽く、農山村など中山間地域に目立っている。都市では古い木造家屋はともかく、新しい建造物は耐震基準が厳しくなったり、ブロック塀なども強化されるなど、それなりの効果が出てきたと思いたい。
これに対して中山間地域では、がけ崩れなど土砂災害が多発しているのが目立つ。宮城県栗原市、福島県いわき市では作業員や釣り人が巻き込まれたし、至る所で一般道路の崩落もあり、岩手県の温泉地などで多数の客らが一時、孤立状態になった。強い余震による二次災害も心配だ。
高速道路は地震で落下しやすい橋を重点に、耐震補強が進んでいる。しかし農山村に多い地方道は地震に耐えられるか、点検すら十分でない区間も多い。崩落すれば孤立しても救助に手間取ったり、復旧作業もままならない。
中山間地域を地震が襲うと、土砂災害の危険が大きいことは一九八四年九月、長野県王滝村を震源に起きた長野県西部地震で、すでに指摘されていた。
同地震の時は大量の土石流が家屋などをのみ込み、多くの犠牲者を出した。二〇〇四年十月の新潟県中越地震でも、土砂が流れ込み川をせき止め、水位が上がって集落を水浸しにした。
農村や山間部の集落には、都市部とは違った地震対策が必要だ。しかし平成の大合併で、広い面積を抱えた自治体が増えた。人口の希薄な集落が点在するところで、土砂災害の防止事業の効率も考える必要がある。
東北や北関東、中部には、中山間地域を抱える自治体が多い。これらの自治体は、計画中のものも含めすべての公共事業を厳しく見直し、住民の生命と財産を守る地震対策を最優先すべきであろう。
自治体の財政も悲観的な見通しのところが増えている。必要な地震対策には、国も最大限の支援を考えるべきである。
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