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【主張】東北内陸地震 発生地問わぬ現実直視を
東北地方の中央部を震源とするマグニチュード(M)7・2の「平成20年岩手・宮城内陸地震」が起きた。
最大震度は6強に達し、岩手や宮城、福島などの各県で多くの死傷者がでた。
梅雨で地盤の緩んでいたことが原因とみられる山地の大規模崩落をはじめ、土砂崩れも発生して道路をふさいだ。ダムの堤防も損傷を受けた。揺れを感じた地域は、北海道から関東や中部地方までの範囲に広がり、東北新幹線も運転を休止した。
政府は地震発生直後、首相官邸危機管理センターに対策室を設置した。東京電力や東北電力の原子力発電所の安全も両社によって確認され、発表された。迅速な対応を評価したい。
気象庁が流した緊急地震速報も震源直近を除いて、揺れの到達に先んじた。この実績を踏まえ、さらなる精度向上と時間短縮に努めてもらいたい。
しかし、今回の地震も“ナマズ”に調査研究の裏をかかれた感がある。震源近くにはM7・8を起こし得る「北上低地西縁断層帯」という活断層がある。
だが、事前の評価によると300年以内の地震発生確率は「ほぼ0%」だった。平成17年の福岡県西方沖地震(M7・0)や19年の能登半島地震(M6・9)も、地震が起きにくいと思われていた地域での発生である。
日本国内には約2000もの活断層が存在する。未確認の断層も潜んでいる。つまり、内陸や沿岸での地震は、いつどこでも起こり得るのが現実なのだ。
東北地方では、海溝型で大きな宮城県沖地震(予想M7・5)が警戒されている。30年以内の発生確率は99%ときわめて高い。
今回の地震を教訓として、家具を固定し、弱い建物は補強を急ぐべきである。宮城県民に限らず、全国で各地の地震に備えることが必要だ。日常生活での防災の基本は、こうした「自助」である。
今年の「防災白書」も強調しているとおり、地域社会での「共助」や国や自治体による「公助」と並んで重要だ。
今回の地震が土曜でなく、平日に起きていたら被害はもっと大きくなっていた可能性もある。
日本列島が地震の活動期に入っているのは間違いない。「自分だけは危険な目には遭わない」。まずはこの考えを捨て去ろう。