医薬品業界で、富山の“工場化”が急速に進んでいる。医薬品生産の全面委託が解禁さ
れて以降、国内大手から次々と発注が舞い込み、富山県内の受託生産は一躍、全国トップ
に。県内メーカーは工場新設などで生産力を増強し、配置薬業界から受託生産に参入する
動きもある。ただ、生産額に比べ加工賃の伸びは小さく、「実入り」の確保が課題となっ
ている。
厚生労働省の薬事工業生産動態年報によると、〇六年の富山県の医薬品生産金額は前年
比67・5%増の約四千四百十七億円で、都道府県別で前年の八位から四位に上昇した。
0・7%だった全国の増加率と比べて富山の伸びが顕著なのは、受託生産額が約三倍の三
千百七十七億円に達し、全国一になったためである。
富山で受託生産が伸びている最大の要因は、〇五年四月の薬事法改正である。医薬品製
造の全面委託が解禁されたため、大手メーカーが採算の合わない少量生産品や大衆薬の生
産を、中堅、中小メーカーに丸投げ。一方の富山側は、受託生産が「安定した収益」(富
山県薬業連合会)と歓迎している。
配置薬の売り上げ減を受け、経営の新たな柱にするため受託生産を進めるメーカーは多
い。第一薬品工業(富山市)は、現工場内で数億円規模の設備投資を行い、受託生産の体
制を強化。テイカ製薬(同)は、国内だけでなく、ヨーロッパ向けのはり薬受託生産も増
えている。廣貫堂(同)は来年、受託拡大に向けて新工場を着工する。
高度な製剤技術の活用を図る東亜薬品(同)は三月、国内初の粉末吸入製剤専用工場で
、大手製薬メーカーからの受託生産を開始。その隣接地では来年八月末の製造所認可を目
指し、固形製剤工場を新築する。ダイト(同)は八月に新工場が完成し、受託量の伸びに
対応する。
受託生産の場合、新薬開発に比べて失敗の恐れはなく、投資金額が確実に回収できる利
点がある。富山県薬業連合会と富山県医薬品工業協会は今月中にも「委受託推進委員会」
を開設し、中小メーカーに受託生産のノウハウを広める。
一方で、受託生産の増加が富山の「実入り」に直結していないとの指摘もある。受託生
産の加工賃に相当する「受託製造金額」は〇六年、受託生産額の8・5%に相当する二百
七十二億円で全国五位。一位の兵庫県とは一千億円の差があり、富山県は「兵庫県では受
託生産でも相当付加価値が高いのではないか」(くすり政策課)とみる。富山の薬業の収
益力を高めるには、受託生産でも技術力向上を図ることが不可欠となっている。