福田康夫首相が9日、日本記者クラブで行った講演「『低炭素社会・日本』をめざして」(福田ビジョン)の要旨と主な質疑は次の通り。
<長期目標>
▽2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を現状から60~80%削減。
<中期目標>
▽今後10~20年に世界全体のCO2排出量を頭打ち(ピークアウト)にする必要がある。日本はここ1、2年でピークアウトさせる。
▽ダボス会議で提唱したセクター別アプローチは現実的な解決策を見いだす方法。
▽20年までに90年比20%削減という欧州連合(EU)目標は05年から14%削減で、日本も可能。
<国別総量目標>
▽日本のセクター別積み上げ方式によるCO2削減量を分析し、今年12月の「気候変動枠組み条約第14回締約国会議(COP14)」で結果を報告するよう各国に働きかけ。
▽来年中に日本の国別総量目標を発表。
<革新技術開発>
▽米英と共同設立目指す途上国支援の基金に、最大12億ドル拠出。
▽「環境エネルギー国際協力パートナーシップ」創設を北海道洞爺湖サミットで提唱。
<既存技術の普及>
▽太陽光発電の導入量を20年までに現状の10倍、30年に40倍にするため、導入支援策や新料金体系を検討。
▽12年までに白熱電球を省エネ電球に切り替え、省エネ住宅・ビルの義務化や200年住宅の普及を推進。
<国内排出量取引>
▽今秋、排出量取引の国内統合市場を試行。本格導入時に必要な条件、制度設計上の課題を明らかにする。
<税制改革>
▽秋の税制改革で環境税の扱いを含めて税制全般を見直し、税制のグリーン化を推進。
▽技術開発や途上国支援の財源として国際社会が連携した地球環境税の在り方を研究。
<消費者関連>
▽製造から廃棄までに排出されるCO2量を商品に表示するカーボン・フットプリント制度を来年度から試験的に導入。
<地方の役割>
▽全国10程度の環境モデル都市を選び、政府が支援。
<国民生活での取り組み>
▽生涯を通じて低炭素社会、持続可能な社会を学ぶ仕組みが必要。
▽与党が検討中のサマータイム制度について早期の結論を期待。
▽7月7日を「クールアース・デー」とし、一斉消灯運動など低炭素社会へ向けた取り組みを毎年確認。
<質疑応答>
--排出量取引導入にかける決意は?
首相 (排出量取引は)一つの有効なやり方。他の国がやるのであれば、日本もそれに対応できるようにしておこうという考えだ。心配しているのはマネーゲーム。投機対象になってはならない。
--削減目標に消極的、反対の国をどう巻き込むか。
首相 (セクター別アプローチの)積み上げ方式については中国も評価し、インドも理解していると聞く。いろいろな国を説得するのに有効な手段だ。途上国を資金、技術両面で支援し、エネルギー効率を高めてもらうことが必要だ。
毎日新聞 2008年6月10日 東京朝刊