主体性
二度、三井との決定的なことがあった。
一度は建築、二度目は料理。
いずれの時も彼の反応は頑なで否定的だった。
でも彼はなにかを伝えようとしていたはずだ。
いまそれがおぼろげながらわかってきた。
彼は人間の主体としての存在意義について訴えていたのだ。
僕は僕という主体を消そうとしている。
客観的な自分、客観的な正しさ
そういうものに依拠して自己を形成しようとしている。
そのため僕は決定論物であるし
当然のように偶然を信じない。
すべては必然であると信じている。
そのときは自己は消却されて
時間軸を展開するだけの存在になる。
つまるところ僕の自己像とは
これにあてはまるもの、空疎以外のなにものでもない。
僕はそこに居るけれど
そこでの僕の行動は僕の意志にというよりも
僕以外のなにかが僕を動かしているのだ。
ここにきて僕はあらためて
ひとつの宣言をしなければならない。
どうやら世界は決定論的状態にはないようである。
つまり運命や偶然の存在、そして飛躍を
認めることになりそうだ。
そして何より意志を認めることになる。 [
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建築と都市
体験は常にその場にいることが一つの指標とされる。
しかし1999年のあの出来事だけはちがった。
当時浪人していた僕は
久しぶりに早めに帰宅して家族と食事をしていた。
携帯電話が鳴り、高校時代の友人の名前を表示する。
TVをつけろ、それだけ告げて彼は電話を切ってしまった。
ともかくテレビをつけると
そこには煙を上げている高層ビルが映っていた。
9月11日、アメリカを襲ったイスラム原理主義のテロだった。
画面の向こう側では確かにビルが燃え上がり
何度となく飛行機がビルが激突する光景が繰り返される。
繰り返されれば繰り返されるほど
リアリティが喪失していく。
やがて釘付けになっている僕らの目の前で、
（それはまさしく目の前であった）
ワールド・トレード・センターは崩落した。
土石流のように粉々に砕け散りながら
人もガラスも鉄も同じように噴煙のなかに消え去った。
そこではもうリアリティは変質していた。
映画のような現実と現実のような映画。
そして明日はまた予備校に通う日常。
交錯することのない衝撃を居ながらにして体験した。
テレビの前で目撃することがおそらく正しい作法だった。
それがいまにして思えば僕と建築というものの接点だったように思う。
WTCとともに崩落してしまったなにか、それを再び作り上げよう、
そういう意志がたぶん僕の中に、
当時は気付かなかったにしろ芽生えたのだった。 [
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外交
【ワシントン13日時事】米シンクタンクの世界開発センター（CGD）と外交専門誌「フォーリン・ポリシー」が13日発表した貧困国に対する開発貢献度指数（CDI）調査によると、日本は調査を開始した2003年以来4年連続で、先進21カ国中最下位との評価だった。
CDIは、開発援助、貿易、安全保障、技術移転など7項目を採点し、平均点で評価する。日本は3．1点と、20位のギリシャ（4．0点）にも大きく差をつけられている。トップはオランダ（6．6点）、2位はデンマーク（6．4点）。
日本については、政府開発援助（ODA）の額は大きいものの、国内総生産（GDP）比では欧州の中小国に劣るほか、「コメの高関税など農産物貿易の閉鎖性」「外国人労働者の受け入れが少ない」「国連などの平和維持活動にめったに参加しない」といった点が厳しい評価につながった。ただ、投資や技術移転では高い評価を得ており、平均点は前年より0．4ポイント上昇した。
いずれも日本の外交戦略のうちアメリカの方針に反しているものだけがやりだまにあがってるだけだね。米ないしその他の農産物は非有事の国家安全保障の枠内の問題。平和維持活動についても他の国とは成り立ちがちがうわけで例えば永世中立のスイスなんかこの項目に関してはゼロはおろかマイナスの評価でもよいはず。外国人労働者の受け入れについてはこれは早々に自由化してしまえばいいと思う。これが難民の受け入れを意味するのではないとしたら。
国のボーダーが曖昧になると際立つのはふたたび都市ではないか。自立した都市群の相互作用としての国際社会。そこに集うのはその都市の企図に賛成する、アイデンティティを一にする人々になるはず。おそらく。 [
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色について
白のため黒であるように。
色のためのモノトーンであるように。
部分のための全体であるように。 [
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色について��
モノトーンには灰色も含まれることを忘れずに。
実は抑える効果は白よりも黒よりもグレーにある。 [
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八剛二柔、八硬二軟
新宿
あのとき雨の新宿で考えたことは
今でもはっきりと覚えている。
人には人それぞれの道があり、
その道をゆくことがそれぞれにとってふさわしい。
一年後のある朝、
彼らが一年前とおなじように
はしゃいでいる姿を見かけた。
彼らはもちろん気付かない。
同じ場所に居ながらまるで一枚の薄膜に隔てられたように、
彼らは彼らのリアリティをもち、
僕には僕のリアリティがあり、
そしてそれは決して交わることのないものだった。
（そのとき隣にいた女の子は新宿で知り合った子だった。
勢いもなく寝たわけだが、
すごく後味の悪かったことを覚えている。
なかば冷めた意識で身体を動かした。
終わったあとも饒舌にしゃべった。
いまでもあの香水を嗅ぐと口の奥が渇く。
あのとき気持ちの大切さをしったのだろう。
それ以後そういうことはしなくなった。）
僕はこのときの経験を通じて
僕の道をはっきりと考えなくてはいけないと思い始めた。
そして夏休みの間考え続け、建築を学ぶことを決めた。
社会とかかわり、プロフェッションであり、
そして人文的でありながら理系でもある。
すべての事柄そこに向かって収束した。
当時それ以外の選択はなかったし今もってその思いは変わらない。 [
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第二次世界大戦について
いまのところ掲げられている原則、
「政治は経済を追認する」
すなわち
「政治体制の転換はテクノロジーの発達による新興勢力による、 その経済勢力の適切な政治的反映である」
から第二世界大戦について考えてみたい。
私はこの戦争を「植民地経済の挫折」と考える。
もちろんこれはイデオロギーとして植民地主義をとるが
この戦争を経た後で人間が死んだとか産業が荒廃したという
物理的結末は焦点ではなく、むしろ
その後の社会体制の転換の方に着目した結果そうなづけるのである。
大量生産した製品をどこで売るかという問題構成が
19世紀後半から西洋諸国で発生する。
そこでスペイン型の略奪型植民地経営ではなく
オランダから始まる市場型（間接型といってもいい）植民地経営が勃興し始める。
そこでの先行利益を得たのがイギリス、フランスの面々である。
アメリカもこれにならい日本にきたのが1858年に他ならない。
しかしこの帝国主義型、植民地型経済はすべての国が充分な市場を確保できないという問題点がある
この植民地型経済体制についての亀裂が顕在化したのが
第一次、第二次の両大戦だったのではないか？
第一次世界大戦は一見と民族自決をうたった運動のようにみえなくもなにが、その発端はドイツ軍のフランス領エチオピア侵攻である。結局のところこのときもドイツは自国の経済のための植民地を求めていた。その戦後処理のまずさが結局のところ第二次世界大戦を生んだのだろう。
つまりこの一連の戦争は
どのような経済圏をnationとして確立するかという問題だったのだ。
植民地は一国二制度に近い。地理的に離れた生産能力に格差のある地域を製品のはけ口とし、その中で経済圏を確立する動きだろう。
アメリカのモンロー主義は自国内に安い労働力と貧困層がかなりはっきり存在していたからこそ成り立ち売るものだろう。
つまりアメリカの場合は植民地主義の対象が自国だったというに過ぎないのである。
この問題の根幹にあるのは他民族の搾取をいかに可能にするかという考え方そのものである。
結局のところ日本が中国に進出しようとした満州事変というのは軍部の暴走の結果ではあるが、経済的、ないしそこにある正統性の主張の根拠、経済的主張は植民地主義による市場の確保であったといえよう。
さてそう考えると戦後の国際政治体制はこの植民地問題の根本的解決を図ったものではないだろうか？
帝国主義のみならずすべての政治的主張には一抹の真理が含まれるのであり、それを支持する人々はそこに正義の存在を多かれ少なかれ見る（必要悪といういいかたでもいい）
それが急速に力をうしなったのが戦後であり
インドは結果としてロジックでイギリスに勝った。
さて第二次世界大戦の後の時代は共産主義が世界を席巻する。
もはや獲得できる植民地に限りがある以上、
経済的発展を望むには挙国一致体制を組む必要がある。
それによってすべての生産力を自国内の物品普及に傾けようとするときに生まれるのが生産分配方式のうち中央集権的分配が行われるものを、社会主義とよぶ。
その意味では日本の戦後は社会主義ではないにしろ、
生産分配方式については限りなく平等を意識している。
その意味で戦後日本を「社会主義的」と呼ぶには混乱がありすぎる。
日本はすくなくとも分配の原則を社会主義の政府による計画ではなく、市場分配則にゆだねていたのだから。
その共産主義が結局立ち行かなくなるのは
それが経済的に効率的ではなかったからという一点につきる。
。 [
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日記について
日記は自己の連続性を維持するのに最も効果的である。
この内容をそのまま公表できるレベルにまで持ち込むことが
公私ともに一貫した姿勢を貫く重要な態度であると考える。
また一日ないし週の最後に
それまで考えた事柄を明晰に文章化することによって
それまでの思考を整理することが出来る。 [
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地域経営について
不動産を購入するということは
零細な企業活動をするに等しい。
不動産は確かに金融資産ではあるものの
そこでの日常的な収入は上物によるからである。
つねに市場とのコンタクトが必要とされる。
現時点で一般的にそのような視点、
つまり不動産経営的視点が消費者側には不足している。
長年すむからといって保有不動産のテンポラリーな
資産価値を意識せず、最終的に相続税で持っていかれて居しまうというのが現状に他ならない。
この問題が顕著に現れることが予想されるのが
分譲型マンションである。
マンションの販売価格は土地の値段とストラクチャーと仕上げの価格が含まれているのにも関わらず、
実質的な所有権は総人数によって分割された土地でしかない。
つまり建物寿命が尽きる60年間の保有以後は
ストラクチャーのコストが無に帰するため
非常な損失が発生する可能性が高い。
また現在の高層マンションは特に仕上げの劣化が早く、
そのため印象的評価も時間がたつにつれて
指数関数的に下落し、当然ながら売価の著しい現象は避けられない。
本来ならばマンションの管理を委託するだけでなく
維持やメンテナンスを含めて
建物全体の資産価値を増大させるエージェントが
必要なのだが、、
そもそもマンションを購入するということは
すべからく金融的側面が強い。
そして建築物はメンテナンスをし続けないと
年に比例する以上に価格が下落するわけで
大規模マンションはその人数構成により
それが阻まれる可能性が高く、
必要に応じて補修が行われない可能性が高い。
ただでさえストラクチャーコストが資産に数えられていない上
経営体制に不備が多く、
将来的に多くの高層マンションが
現在の都営住宅よろしく悲惨な状況になるのが見えている。 [
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