嵐は過ぎた
嵐は過ぎた。そして夜も明けた。
すべては終わったことだし、
そろそろ次を見つめる時期が来たようだ。
長きにわたった自分との戦いに
ひとまずの決着がついたのだ。
これから先、どのような困難があろうとも
僕はそれを乗り越えることができる。
興奮？
昂ぶりではない。
それは静かで、そして強いものだ。 [
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黒い雨
気になっていたギャラリーに入るとすぐに上映がはじまるとのことだった。展示は終わってからにしてとりあえず座席に着く。
モノトーンで映写されるかつての田舎。あざとさが少し鼻につくが、日常の風景が淡々と描写される中にときおり原爆体験が挿入される。それは最初はあくまで回想に過ぎないのだが、時が流れるにつれ次第に登場人物の体を蝕む病というかたちで現実とシンクロナイズしていき、最後には主人公だけが残される。
容態が急変し救急隊に運ばれる姪を見送りながら主人公は想う。あの山に虹が、五色の虹が架かればきっと泰子はよくなる、そう独白する主人公の眼はなぜかおだやかである。一次被爆者であるにもかかわらず、二次被爆者を含めてすべての知人がこの世をさってなお彼のもつこの底抜けといってもいい楽観はいったいなんなのか。 [
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dialektike
いままでの会話の根底にある方針は
�〜蠎蠅旅堝阿量圭發靴辛�分を捉え、
�△修海�ら相手の行動原則を推測していくというものだった。
幼児期の精神的外傷がその後の人間の行動を支配する、という言説から構成した会話原則なのだが
よくよく考えてみればかなりネガティブな形式なことに
いまさらながら気がついた。
もちろんトラウマがその後の行動に影響を与えることは否定しないが、
その仮説はそのまま好ましい「外傷」についても言えるはず。
精神分析はそもそもが病に対する療法行為だから
ネガティブな行動に理論を与えることには成功している可能性が高いが、
健全な精神、そして健全よりもよりよい状態についての考察がなされている可能性は低いだろう。
つまりこれまでの会話形式、ひいてはコミュニケーションの原型は片手落ちにすぎないのだ。
人間はネガティブな動機で行動するケースもあるが、
ある段階を越えるとそれはポジティブな刺激のスパイラル・フィードバックになるのではないか。
単にネガティビティの克服という説明だけで
動機を説明するのは稚拙だった。
これからはポジティブな側面を増加させる方向で会話を、
関係を築いていくことにしよう。
もちろん今まで意識せずにそうしてきたわけだが
強く論理が与えられたことになる。 [
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機を観る
物事には流れがあり、勢いがある。
機が熟すれば、おのずとすべては決まる。
待つこともひとつのやり方なのだろう。 [
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歴史
機、とはなんだろうか。
日常生活の中ではタイミングといってほとんど差し支えないが、
大きな流れの中で決断をしていくには
歴史に対する感覚が必要になる。
自分はいったい何者なのか、という問いは
内部よりもむしろ外部から説明される。
自分のもって生まれた状況と
それに対する判断の積み重ねによって
現在の自分という存在がある。
それは歴史なのである。
ひとつひとつの判断は偶然に近い。
しかしそうやってできがった存在は
もう確固たるストーリーを背負っているのだ。
それは自分が下した気ままな判断によって作られるものではなく、
外部がほとんど勝手に押し付けるたぐいのものだ。
歴史はそういうものであるし、
結局のところ自分もそういった「歴史的存在」なのだ。
もちろんそれに対して無自覚に生きることもできる。
しかしそれはきっと自由ではないのだ。
与えられた文脈、
それはシステムといってもいいかもしれない、
の中で生きることは能動的な判断なようにみえて
流れに流されているだけなのだ。
機をみるとは、その流れやうねりを見極めて
自分を賭することを可能にする。
歴史によって抽象化された物語は
それが他人に対して開かれている場合に
人はシステムにおける部分という立場から抜け出して
積極的にシステムに関わる存在に変わる。
それはもしかしたらそれはもっと大きな流れに身をゆだねることなのかもしれない。
ただ意思は判断にしか現れないし、
その判断をより確かなものにするということは
とりもなおさず意思の意味を明確にすることと同じなのだ。 [
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自分
自分の置かれている歴史的状況と
自分自身の意思が相反する場合がある。
外部から宛がわれる歴史的立場と
自信が望む主体的立場のずれ。
歴史認識を持っているが故に
負けるべき存在であることを知ってしまうこともあるだろう。
それはひとえに運命というしかないことなのかもしれない。
西南戦争における西郷隆盛はそういう存在なのだ。
悲劇、か。
いや違う。
彼は意思をもって担がれたのか。
俺がやらなきゃ誰がやる、か。
そうやって歴史のこまをひとつ進めたのか。
そうやって生きることが彼の意思であり
彼が表現した自分自身のあり方だったわけか。
そういう悲劇的運命を見極めたわけか。 [
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ジャパニーズ・カレー
寮生活のキッチンで一緒になるアフリカンたちの料理を真似してシチューを作ってみた。
オリーブオイルでにんにくを軽く炒めてから
表面に焼き色がつくまで豚肉も炒める。
みじん切りにしたたまねぎをいい香りがするまで火にかけたら
トマトやピーマン、たまねぎをざっくり切ってのを入れて
ナツメグやローズマリー、ペッパーなんかを適量つまんで
しばらく煮込めばできあがり。
これにウコンなんかがはいったらカレーなんだろうな、という仕上がり。
結局カレーなんてのはごった煮のことなんだ。
なんていったら本場に失礼か。
まあ独身男性の簡単料理なんだからそんなにこったことをしないにしろ、
このシチューからカレーへのジャンプよりも
そうやってできるカレーから日本で食べる普通のカレーへの飛躍のほうが大きいだろ。
それを洗練というかなんというか。 [
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砂の女
中に入るとすでに座席は満席に近い。かろうじて空いていたところに身を滑り込ませるように座る。まだ開演まで15分ほどあったのでなんとなくあたりを見回し、それでなにか安心したので外にでてすこしギャラリーを観て回る。ほどなくして開演が近いことを知らせるベルがかすかに聞こえたので、読み差しのままブックレットをおいて会場へむかう。
砂の女は安部公房による一種の現代の寓話だ。絡めとられるようにして罠にかかり、砂丘の窪の中での暮らしを強要される男の物語が、武満徹の不協和音と砂嵐をサンプリングした不穏な音の中で展開されていく。
全編を通じて男の生活が展開する窪の全貌は明らかにされない。わずかに外界とのか細い接点である縄梯子用の突起が下から見え隠れし、また家の周囲がすぐに砂壁に囲われていることが断片的に描写されるにとどまる。男が渇望する東京という広大な都市にはそこで生活している限り気がつかない暗部が必ずある。しかしこの限られた空間しか持たない最小限の共同体の場所においてすら、男にはその世界の部分のみが知覚される。
表に出ると、男は外界との接触を試みる。時に砂壁をよじ上ろうとして、時に崖上の人間に声を投げかけて。押し寄せてくる砂を掻き出すのも、もっこに載せて外にだすのもすべてこの表の空間での出来事である。男はその表の外側の空間を渇望し、果てに挫折しそこで順応していくのだが、家の裏手が語られることはない。
なぜなら裏手にあるのは死の空間だからである。物語のなかでわずかに触れられる女の由来はその肉親の死なのだが、その元亭主と子供が砂に埋まる場所なのである。
男はあるとき裏手に程近い家の脇にこっそりとからすを捕らえる罠を仕掛ける。そしてからすを捕らえることは結局できないのだが、罠の底に溜まる水をみて、それによって村人とのコミニケーションのよすがをみつけ再生する。
死と生の間に湧き出る水。それが再生の情熱を呼び覚ますことになったのはなぜだろうか？砂という生と死の両面を規定するこの世界において、生きる糧として砂と対比的存在として表現される水。それは当初外界から与えられるものでしかなく、それゆえ男は服従を強いられる。
水を手に入れたときに男は気づいたのだろう。もはや自分にとってその存在が致命的なものでなくなったいまになって、水は単なる言い訳に過ぎなかったことを。彼はここでもいつのまにか身を委ねていたのだ。 [
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コミニケーション
モチベーションは感情である。感情は原始的なものであって相互に特別な違いはない。もちろんそれぞれの特性はあるものの容易に転換が可能である。あらゆる感情的体験を意識的に行うことでモチベーションは蓄積される。それらの総体を自分の想う方向に投下することで自分自身の心をある程度コントロールすることができる。つまり生活におけるすべての感情的出来事を自分の目標の原動力とすることが理論的には可能である。
他人とのコミニケーションにしても同じである。ともかく感情を起こさせることが一番肝要なことになる。それをうまくある一定の方向に転換させることができたときに人間関係は円滑なものになる。人間関係は支配ー被支配といった図式的関係で行われるものではなく、感情という通貨を相互にやり取りしながら循環させる相互依存関係を形成している。つまり支配と被支配は外側からの判断としては成立するが、それはあくまで通貨の流通という機構に依存したものであり、その機構の構成要素は関係なのである。
ここでコミニケーションに対してアクションという語を登場させる。アクションとは人間関係から独立した行為そのものをさし、コミニケーションによって発生するモチベーションによって評価される。人間関係の密度はアクションに対するモチベーションの発生係数によってあらわされる。つまりAとBが同じ行為をCに向けておこなった場合にCに発生するモチベーションはそれぞれの関係においてバイアスをかけられた状態で発生し、その強弱そのものが関係を代理する。そしてその強弱はCの内面において評価され、関係にフィードバックがなされ、またあらなるアクションの応酬が開始される。
人間の感情にはフィードバックによるサイクル機能がある。単調な経験に人間が耐えられるのはそれにポジティブ・フィードバックがされるからに他ならない。そのサイクルが軌道にのればモチベーションはひたすらそこで拡大再生産されることになる。注意するべきなのは、そのサイクルのリズムが低減期の際にネガティブ・フィードバックサイクルにならないようにすること。 [
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日本語
どういう人生を歩むか、ということはそのままどういう言葉を使うかという問題と等しい。言葉そのニュアンスまでふくめてすべての行動の価値基準のメタ基準となるからである。
標準語の不幸は客観的描写という表現形式しかもたない点にある。状況表現には概して適しているが、感情表現にはまるでむいていない。
私の英語に対する親近性はおなじように客観的描写言語にも関わらず、名詞的＝描写的な表現と同じように動詞が存在しうる点にあるのかもしれない。
「殴る」「蹴る」は第三者的表現である。「ぶん殴る」「蹴りを入れる」は主体的な表現となりうり、言語にボディ・イメージを織り込むことができる。
口語についてはだいぶ洗練されたので次は文語の脱標準語化をはからなくてはならない。
それとは別に対象範囲も考えること。 [
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