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【主張】日朝協議 この内容で制裁解除か 再調査は期限設け成果迫れ

2008.6.14 03:30
このニュースのトピックス主張

 日朝実務者協議で、北朝鮮側が拉致問題の再調査と「よど号」犯引き渡しへの協力を提案したことが明らかになった。日本政府はこれを「一定の前進」と評価し、北朝鮮への制裁を一部解除する方針を示した。この程度の提案で制裁を一部解除するのは、あまりにも時期尚早である。

 町村信孝官房長官は、北の提案を「一定の前進」と評価した理由について、「北朝鮮が『拉致問題は解決済み』との従来の立場を変更した」と説明した。しかし、これは、北が拉致問題の協議のテーブルにつくことを約束したにすぎず、やっと普通の交渉が始まること以上の意味はない。

 ■何度も煮え湯のまされた

 4年前の平成16年5月、当時の小泉純一郎首相が2度目の訪朝をしたときも、金正日総書記は「白紙からの再調査」を約束した。その後、北は再調査の結果として、拉致被害者の横田めぐみさんのものとする“遺骨”を出してきたが、日本側の鑑定で偽物と判明した。北は6年前にも、拉致被害者の松木薫さんのものとする“遺骨”を示したが、偽物だった。

 日本はこれまで、北の調査に何度も煮え湯をのまされてきた。今度の「再調査」の提案も、結果を見てからでないと、とても信用できない。福田康夫首相も「再調査の中身が問題だ」と言っており、政府は期限を切って回答を求めるべきである。

 「よど号」犯は、38年前の1970(昭和45)年に日航機の「よど号」をハイジャックした犯人グループである。「よど号」犯の中で、魚本(旧姓・安部)公博容疑者は、有本恵子さん拉致に関与した疑いでも国際手配されている。また、「よど号」犯の妻、森順子容疑者と若林(旧姓・黒田)佐喜子容疑者は、石岡亨さんと松木薫さんを拉致した結婚目的誘拐容疑で手配されている。

 これらの容疑者を日本に引き渡すのは当然であり、評価するほどのことではない。北は「よど号」犯とその妻たちを速やかに日本に引き渡すのが筋だ。「よど号」犯が引き渡されても、被害者の有本さんらが帰国しなければ、拉致問題が進展したとはいえない。

 拉致事件では、このほか、原敕晁(ただあき)さんを拉致した辛光洙(シングアンス)容疑者ら8人が手配されている。日本は引き続き、これらの北の工作員の引き渡しも要求していくべきだ。

 ■米は指定解除を急ぐな

 今回、北が「拉致問題は解決済み」との態度を変えた背景には、米国によるテロ支援国家の指定解除を急がせたいとの狙いがあったとみられる。日朝協議に先立ち、反テロ宣言を発表したのも、同じ狙いであろう。

 米国のバーンズ国務次官は日朝協議の前日、「北朝鮮に、拉致問題に対応することの重要性を何度も強調してきた」と述べた。米国も、北に前向きな対応を促してきたことがうかがえる。それに日本が影響された面も否定できない。今回の日朝協議が米国向けのポーズだったとしても、日本国民は納得できないのではないか。

 米国には、この程度の北の提案で、軽々に指定解除を急がないことを改めて望みたい。

 日本政府は対北制裁緩和について、北との人の往来や北からの航空チャーター便乗り入れの制裁解除などを挙げている。入港が禁止されてきた北朝鮮籍の船舶については、民間の人道支援物資を日本から北に運搬したいとの希望があれば、「人道的措置の例外」として入港を認める方針だ。

 入港規制緩和の対象となる船舶には、「万景峰号」も含まれるとみられる。「人道」の名目で、核やミサイルなどの製造に使われる部品が運ばれる可能性もあり、警戒が必要である。

 先月、日朝国交正常化を推進しようという超党派の議連が発足した。会長に自民党の山崎拓元副総裁が就任し、顧問に自民党の加藤紘一元幹事長、民主党の菅直人代表代行、社民党の福島瑞穂党首らが名を連ねている。議員外交による事態打開を目指しているようだが、北を利することのないよう、慎重な行動を求めたい。

 拉致問題を担当する中山恭子首相補佐官は「先に国交正常化すれば、何のテコも残らず、拉致被害者は永遠に出てこられなくなる」といっている。北の曖昧(あいまい)な「再調査」の約束などで、国交正常化に前のめりになることは、厳に避けなければならない。

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