音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

社説2 ネット覇権狙うライバル提携(6/14)

 米ネット大手のグーグルとヤフーが広告事業での提携を発表、マイクロソフトとヤフーとの提携交渉が正式に打ち切られた。ヤフーの業績低迷はグーグルの追い上げが大きな要因だったが、そのライバルと組むことでネット市場での覇権を狙う。

 両社の提携内容は、グーグルが集めたネット広告をヤフーの北米向けの検索サイトに提供するもので、ヤフーは年間約8億ドルの増収を期待できる。北米のネット広告市場における両社合計のシェアは43%に達し、グーグルにとっても今後の広告事業を有利に展開できる。

 一方、割を食う形となったのがマイクロソフトだ。ともにグーグルとライバル関係にあったヤフーと組めば、グーグルの先行に歯止めをかけられると踏んでいた。ネット広告市場におけるマイクロソフトのシェアは10%にも満たず、逆に水をあけられる形となってしまった。

 グーグルとヤフーの提携は今後、米独禁当局の判断を仰ぐ必要もある。しかし長年、独禁法問題の対象だったマイクロソフトでさえも簡単に優位性を失うほど、ネットの世界は動きが速い。独禁当局も踏み込んだ判断は下せないだろう。

 マイクロソフトの失態はシリコンバレーにおける自らの評判を見誤ったことだ。アップルやサン・マイクロシステムズなど米西海岸にはマイクロソフトに対抗心を抱く企業がもともと多い。すべての事業を囲い込む同社の事業モデルに対し、自由な研究開発や人的交流などを評価する企業文化がその背景にある。

 ヤフーやグーグルが西海岸で生まれた理由もそこにある。グーグルが今日あるのは、創業期に先輩格のヤフーが同社の検索エンジンを採用してくれたからだ。米情報産業の中心が東海岸から西海岸に移ったのも、そうしたシリコンバレーのダイナミズムのおかげだ。ネット企業の自由な連携は米情報産業の国際競争力を高める原動力にもなっている。

 再びネットや携帯電話に関心が集まる中、日本企業も主導権獲得を狙う。しかしマイクロソフトと同様、自前主義や縦割り意識の強い日本企業は総じて動きが鈍い。米西海岸で起きたライバル同士の提携はそんな日本企業への警鐘ともいえる。

社説・春秋記事一覧