七年前に盗まれた息子の自転車が戻ってきた。自宅近くの倉敷署中島交番から電話があった。
息子が中学一年のとき、鍵を掛け忘れて祖母宅前に止め、目を離した約三十分のすきになくなっていた。交番へ受け取りに行くと以前にはなかったステンレスの荷台がつけてあった。お巡りさんは「だれかが盗んで使い、また別の人が盗んで乗り捨てたのでしょう」という。
自転車は自宅近くのスーパー駐車場にあった。防犯登録シールがはがされているので不審に思ったそうだ。被害届は警察に出しており、車体番号から盗難品と分かったらしい。容疑者が現れるのではないかと三〜四時間見張っていたが、出てこなかったという。
自転車店に聞くと、七年ぶりに戻るのは珍しいそうだ。あきらめていただけにうれしかった。お巡りさんのご苦労に頭が下がる。
自転車を盗む人は多い。昨年の岡山県の自転車盗難は前年より約九百件多い約七千五百件。これは被害届の数なので、実際はもっと多いはずだ。
拝借気分で乗るのか。盗むのが平気なのか。川に放り込まれたり、放置され粗大ごみとなっている姿をまちのあちこちで見掛ける。自転車が安価になっているので、盗んでもまた買えると思うのか。
三十五年ほど前、私が中学生だったころ、自転車は高級品で大切なものだった。豊かな時代となり、これくらいなら許されるという軽い気持ち。その盗みの心が別の犯罪につながる気がして怖い。
(地域活動部・赤田貞治)