全国には「県歌」や「市歌」を制定している自治体がかなりあるが、あることは知っていても、歌えない人が多いのではないだろうか。
ところが、長野県の人に聞いて驚いた。「信濃の国」という県歌は県民がよく歌うというのだ。一九〇〇年に師範学校の教師が作詞作曲し、学校の行事で使われていた。それを同校出身の教員らが県内の小学校で教え、広まったという。
もともと二つの県が統合した長野県は南北対立が激しく、県全体をまとめる役割を、歌が果たしたようだ。四八年に県議会で県を分割する分県案が議決されようとした時、傍聴席から「信濃の国」の大合唱が起こり、分県案成立を止めたというエピソードもある。
埋もれていた岡山市の市歌を、山陽女子高放送部が約七十年ぶりに復活させたことが報じられていた。「おゝ我らの大岡山市」と題した市歌からは、岡山発展への先人の思いが伝わってくる。来春の政令市昇格を目指す県都への応援歌にしたいところだ。
岡山県には五七年にできた「県の歌」があるが、八二年に誕生した県民愛唱歌「みんなのこころに」の方がイベントなどでよく耳にする。親しみやすいメロディーも岡山のPRに一役買っている。
平成の大合併で、新たに市歌を制定した自治体もある。地域の結束には歌も力だ。