◎北鉄も100円バス バス停の共用も前向きに
JR金沢駅前と金沢市中心部を百円で結ぶ休日限定の「まちバス」に追従する形で、来
月五日から駅前、市中心部、兼六園周辺を巡る百円バスを運行することを決めた北陸鉄道には、市から要請されているまちバスとのバス停の共用についても、前向きに検討してもらいたい。まちバスの利用者数が順調に推移している要因の一つとして、バス停の表示などの分かりやすさが挙げられているからである。
今年度のまちバスの利用者数は既に五万人を突破し、一便当たりの利用者数も無料だっ
た昨年度を上回っている。運行間隔の短縮や運行時間の延長などに加え、分かりやすさが利用者の支持につながっていることは、事業主体である金沢商業活性化センターが実施したアンケート調査の結果を見ても明らかだろう。確かに専用のバス停は目に付きやすく、特に金沢に不案内な買い物客や観光客らにはありがたいに違いない。
北鉄の百円バスによって、駅前と市中心部との間を行き来する際の利便性はさらに高ま
り、兼六園やその周辺を周遊する観光客を増やす効果も期待できる。その意味で、北鉄の参入は大いに歓迎できるのだが、百円バスが二種類になることで、強みである分かりやすさが薄れてしまっては困る。まちバスを、北陸新幹線の金沢開業を見据えたシャトルバスの運行実験と位置付ける市が、その点への配慮を求めるのは当然と言える。
新幹線効果を最大限に引き出すための「二〇一四年」対策の一つとして、駅からの二次
交通の拡充は不可欠だ。金沢の場合、その要を担う交通機関がバスであることは論を待たない。北鉄はそもそも公共性の強い企業であり、「企業市民」として、この地域に貢献するためには何をすればよいかということを常に考えながら行動してもらいたい。
バス停のほかにも、北鉄がまちバスと協力して取り組めることはあるだろう。たとえば
、観光客向けの広報活動などでも連携できるのではないか。そうすることで全体のパイが増えれば、商業者や観光関係者はもとより、北鉄も得をするはずである。
◎北朝鮮との交渉 ボーナスだけ取られるな
外交のポイントは、片方が一方的に譲歩するのではなく、双方が「行動」には「行動」
で報いるギブ・アンド・テークだといわれる。相手が独裁国であろうがなかろうが、ギブ・アンド・テークを積み上げながら目的に近づいていくのが外交の基本である。
そうした観点からすると、北京で行われた日朝公式実務者協議のやりとりについて、政
府が「一定の前進」と受け止め、人道物資輸送に限って貨客船「万景峰(マンギョンボン)92」を含む北朝鮮籍船舶の日本入港を認めるなど、対北朝鮮経済制裁の一部解除を決めたことは政治的な判断として理解できないこともない。
政府の発表では、約九カ月ぶりの実務者協議で、北朝鮮は安否不明の拉致被害者の再調
査を約束し、一九七〇年の日航機「よど号」乗っ取り犯関係者の身柄引き渡しへの協力を表明したという。経済制裁の一部解除はこれを受けたものである。
政府の決定に拉致被害者家族らは納得できないようだが、さりとて圧力だけで被害者を
帰せ、といっても交渉に展望が出てこない。仕切り直して、国交正常化と拉致問題の解決を目指して交渉を粘り強く続けていくしかあるまい。
それにしても昨年十月、金正日総書記が「拉致日本人はもういない」といった北朝鮮が
、ここにきて態度を豹変(ひょうへん)させたのはなぜか。米朝協議の進展などが背景にあるとか、要は金がほしいのだとか、いろいろ推測されているが、北朝鮮が国交正常化を望み、拉致問題を本気に解決する気になったのかどうか。現段階ではそれすら分からないのである。
対中、対韓外交で成果を挙げた福田康夫首相は北朝鮮との問題を自ら解決する強い意思
を持っているといわれる。先の日韓首脳会談でも、首相は李明博大統領に対して、出方次第で日本は経済協力するとの基本的立場を北朝鮮に伝えるよう依頼し、ボーナスという言葉を使い、それを用意していると二度繰り返したといわれた。ボーナスだけ取られるようなことがないよう、対北外交は慎重に進めてもらいたい。