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食品公害による日本民族の危機
  

前理事長・医師 梁瀬 義亮



【この原稿は昭和五七年(一九八二年)に慈光会会誌に掲載されたものです。】

 正しい農法(完全無農薬有機農法)

 化学肥料と農薬を二大支柱とした近代農法は土を殺し、益虫を殺し、そして人を殺す「死の農法」であります。
 私は同志の農民諸君と力を協せて過去二十九年間完全無化学肥料、完全無農薬の農法を研究して参りました。そして「土から出たものは土にして土に返す」という原則を守れば、これが可能であるのみならず品質優秀、収量も落ちず、農民は健康で労力、費用の点でも大変有利であることを確認しました。よくよく考えてみれば大自然の生態系の中に生かされ、与えられてゆくこの農法は唯一無二の農法で近代化農法は異常な「死の農法」だったのです。現在財団法人慈光会を設立し、直営農場と十二軒の協力農家、直営販売所を持って二六〇〇世帯の会員に完全無農薬有機作物及無添加物安全加工食品及び粉石ケン其他の安全家庭用品をお頒けしています。

 食品添加物について

 農薬と共に私達の食物に侵入した化学薬品に食品添加物があります。現在三二四種類の食品添加物が用いられていますが、何もしらずに食べていると一日七〇乃至八〇種類の化学薬品が私達の体に入ることになります。これ等が人間の体内で相加作用、相乗作用を起こすとどうなるかと思うとぞっとするのです。特に最近、食品添加物の発癌性や催奇形性、遺伝毒性が大問題になっています。AF2問題は皆様のよくご存じのことです。恐る可き発癌性や遺伝毒性を持ったこのフラン系化合物(世界中でフラン系化合物を食品添加に用いたのは日本だけの由)は約九年間安全だとしてハム、ソーセージ、練り製品、豆腐等に用いられて一五トンも日本人の体へ入ってしまったのです。今から六年前に使用禁止になりましたが、その害はこれから現れると云われています。このAF2のこれから起こる害については外国の学者も注目している由です。全く大変なことをやったものです。今も尚発癌性や遺伝毒性の疑いのある化学薬品(亜硝酸、ソルビン酸、安息香酸、ジヒドロ酢酸、プロピレングリコール、サッカリン、OPP、BHTやBHA等々)が食品添加物として発色、防腐、防黴、甘味、着色、酸化防止の目的でハムやソーセージ、味噌、醤油、バターやチーズ、ラーメン、漬物、輸入柑橘類、干物、菓子等に使用されて問題になっています。およそ市販の加工食品で食品添加物の入っていないものは無いと云っても過言ではありません。発癌性や催奇形性、遺伝毒性の疑いのあるものは速やかに禁止されねばならないのは勿論ですが、たとえ現在その害の出ていないものでも、慢性中毒は十年、二十年してはじめて害が現れるというその害の現れ方よりして、ともかく化学薬品は出来るだけ体に入れないように心掛けることが大切と思われます。従ってインスタント食品や出来合いのもの、其他食品添加物の使用が多いと思われる加工食品や飲料を出来るだけ避けてホームメードを大切にしましょう。
 学校給食は殆どインスタント食品でこれを強制的に子供に食べさせています。然もその材料の仕入れは入札と聞いています。食料品は値段よりは健康を第一に考えて購入すべきです。いたいけな子供の体に日々農薬や食品添加物が入ってゆくのを思うとき吾々は胸を締めつけられる思いがします。私は三十年来子供を診察するときに必ず歯や歯ぐきを調べてきました。昭和三十年頃から子供の歯は急に汚くなり、又歯ぐきに紫色の色素の沈着する子供が多くなりました。これは農薬、食品添加物、医薬品等、様々の化学薬品の侵入によるものと信じています。
 私達慈光会の様な運動が加工食品についても全国的に広がることを祈るものです。 (以下、次号に続く)
  

毎日の小さな工夫を大切に その二
  


 

   前号に引き続き、今月も省エネ、環境保護の身近な工夫をお伝えしましょう。
 ところで、洗濯の時会員の皆様のお宅ではバスタオルを何枚洗っていらっしゃいますか? 「家族の人数分」というお宅は、案外多いのではないでしょうか。慈光会の古くからの会員さんで、全くバスタオルを使わない、というご家族があります。まず湯上がりに、しっかり絞ったタオルで体中をよく拭き、それから乾いたフェイスタオルで拭くと、充分すっきりするそうです。これを実行すると、洗濯物のかさが随分減ることは間違いありません。洗濯物が減るということは、洗剤も、すすぎの水も、洗濯所要時間も減ることを意味します。省エネに直結するわけですね。これは、家族の協力を仰げば、割合実行できそうなアイディアではないでしょうか。
 「バスタオルで拭かないと、お風呂に入った気がしない」という方もいらっしゃることでしょう。そういう方は、とにかく、湯上がりに、よく絞ったタオルで体や髪を拭くことから実行してみてください。
 もう一つお風呂に関連した工夫ですが、冬はお風呂のお湯の冷める速度も速くなります。最初に入る人と最後に入る人の間に何回追い炊きをするでしょうか?この追い炊き回数を減らす方法があります。浴槽に風呂釜とつながる二つの穴が空いていますが、お風呂を沸かした後に(火を消してから)その下側の穴にスポンジを詰めてしまいます。家の外部にある風呂釜で冷めた湯が、循環して湯船に侵入してくるのがお湯の冷める一番の原因なのだそうでこれを防ぐ工夫です。。この場合気をつけて頂きたいことは次に沸かすとき、下の穴のスポンジを必ず抜いて頂きたいということです。小さい子供さんのいるお宅では、専用の装置がありますのでこれを取り付けられるほうが無難でしょう。この装置をセットしますと、スポンジのように一々詰めたり取ったりする手間がいらなくなります。又、湯船の水面に断熱効果のあるシートを浮かべて保温する方法も併用すると効果的です。二〇一〇年迄に原発全廃を決めたスウェーデンでは、すべてのエネルギーを節約するため、国民も大変な努力をしています。テレビでは入浴回数を減らしている家族が紹介されていました。お湯も大変大切に使っていました。スウェーデンの人々は、資源全体に対して本当に貴重であるという認識を持っているのでしょう。日本でも、お風呂を冷めないように工夫すると共に、お風呂でのお湯の使い方にも気を付けたいものです。また、湯船の残り湯は洗濯や掃除に利用しますと、環境に貢献すると共に水道代もグンとお安くなります。
 次は、「使える物はとことん使う」というアイディアです。これは、前回ご紹介したエコ歯ブラシと共通しますが、中国にはワイシャツの袖口と衿を付け替えてくれるリフォーム屋さんがあるそうです。ワイシャツで擦り切れるのはいつも袖口と衿だけ。本体は大抵何とも無い訳ですから、本体が擦り切れるまで部分を付け替えて着られたら、大変合理的ですね。日本にも同じようなリフォーム屋さんができると良いと思います。ワイシャツも生産段階から布地や縫製をリフォームしやすいように工夫して作られれば、一層資源保護につながることでしょう。  長袖セーターや上着にひじ当てを付けるのも、あらかじめ補強しておいて服を長持ちさせよう、という工夫です。このごろはそれがファッションとして残っているようですが、このような肘当てや子供のズボンのひざ当て等も実用として復活すると資源保護になりますね。
 又、昔は皮靴の靴底の減りやすい部分に鋲を打ち付けて靴が減るのを防いだものですが、現在でも靴のかかと部分に専用のゴムを貼り付ける工夫は残っています。専用グッズを購入すれば、家庭でも割合簡単に貼り付けることができます。お気に入りの履きやすい靴は五年でも一〇年でも大切に履き続けたいもの。素人にできないことは靴屋さんに修繕してもらって、靴も長持ちさせたいものです。
 大切に修理してその品物の寿命いっぱいまで使い切ることは、実は本当にエコロジーに則したことでした。思えば、大量生産、大量消費は反エコロジーです。「もったいない」「大切に」を身の回りに是非復活いたしましょう。 さて、毎日の台所仕事は省エネのアイディアの生かしどころです。どんな工夫があるでしょうか?
 卵を茹でるとき、沸騰したら鍋の蓋をしたまますぐ火を止めてしまいます。トローリやわらかい卵は三分後、半熟卵は五分後、固茹で卵は冷めるまでおいて後に取り出します。(季節によりまた卵の最初の温度により保温時間が異なりますのでそれぞれの工夫を。但し、必ず蓋をしてから火を止めてください。)目玉焼きも同様に、フライパンに蓋をかぶせ、少し過熱し火を止めれば、フライパンの余熱によって出来上がってしまいます。卵の固さは蓋をかぶせている時間の長さによって調節してください。
 以前にも一度ご紹介したことがありますが、年末の忙しいとき一つの鍋で出来上がるこんなお料理はどうでしょうか?(「エコロジー・シンプル宣言」より)
 豚肉のかたまり、大きめに切ったジャガイモ、適当に切ったニンジン、セロリ、ハクサイ、キノコを一緒の鍋で茹でます。茹で上がった物から順に取り出して調理します。ハクサイとキノコは、おかかと醤油、またはゴマだれなどお好みでかけて、あっさりと。ニンジン、セロリはドレッシングをかけて肉の付け合わせに。ジャガイモはつぶしてハムやゆで卵、タマネギ等を加えてポテトサラダに。肉はスライスして、焼き肉のたれ、ニンニク醤油、マスタード醤油などお好みの物をかけて。茹で汁は、ネギを加えたり、わかめを加えたりしてお好みのスープに。お味噌を加えてもなかなかおいしい洋風のみそ汁になります。ひとつ鍋の料理は茹で汁まで無駄にするものがありません。この鍋が、先月号でご紹介した保温調理鍋なら、いっそう省エネが図れるというものですね。
 さらなる工夫は、この出来上がった料理を一人につき大きなお皿一皿に盛り合わせてしまうことです。ご飯もお皿の上によそいます。丁度お弁当を詰めあわせてゆく感覚で、楽しく並べてゆきましょう。こうすると、食後の洗い物が大変少なくなって、時間も、洗剤も水も労力も節約することができます。忙しい年末、実行してみたいアイディアですね。
 この、「ささやかな工夫を積み重ねること」が省エネ実行にあたっては何よりも大切ですから、自分の生活にあったアイディアを選んで、地道に取り入れることをお勧めします。又、省エネに繋がる製品を選んで購入し、メーカーにも働きかけてゆきましょう。「継続は力なり」です。このような工夫は環境のためになるのみならず、充分家計の助けにもなり、小さな実行はなかなか楽しいものです。回りの人達に働きかけ少しでも広まってゆくのを見るのもうれしいことですね。
 今後も折々に紙上で身近な工夫をご紹介してゆきたいと思います。会員の皆様も慈光通信編集部までアイディアをお寄せ下さい。

  

 慈光会第2回学習会 環境ホルモン講演
  

日本子孫基金運営委員 三宅 征子




   (一九九八年十月一八日 五條市市民会館での講演を要約したものです。)

身近な「環境ホルモン」の調査

環境ホルモンと農業

遺伝子組み換え作物

 身近な環境ホルモンとしていくつかの問題を取り上げましたが、まだいろいろな物があります。量的に多い農薬の問題には、「遺伝子組み替え」という新たな問題が作り出されました。農薬成分をそのまま組み込むというような自然界では起こり得ない人為的な操作を加えるというもので、作物が作られている段階での農薬の影響、そしてそれが残留し私たちの身体の中に入って起こる影響とは別の形の、新たな問題を引き起こしています。この影響が現れるのがいつかはわからないのです。まさに私たちは今、食べ始めて人体実験を開始したところです。「遺伝子組み替えされた農作物」は、大豆、菜種、じゃがいも、とうもろこし、綿、というふうに日本が自給率が低くて輸入に多くを頼っているものがまず最初にターゲットにあげられたのです。それに引き続いて今研究段階では、小麦もコメも様々な農産物が対象になってきております。言ってみれば、人体実験を一番多く始めているのが日本人だと言えるわけです。これに対抗できる唯一の手段は国産の物を増やす、さらに有機農産物を増やすということを申し上げたわけですが、このような農業を早急に拡大していかないといけないということが、環境ホルモンとしての農薬の問題を見たときにも言えることなのです。

 ポストハーベスト農薬

 これまでの調査の結果から、「ポストハーベスト農薬は農産物を輸入している限り、私たちの健康の問題に影響を及ぼす」、ということが確認されました。例えば、大豆は九八パーセントが輸入されているのですけれども、「ポストハーベスト農薬という収穫された後に使われる農薬が多く残っていたり、大規模な作られ方をするため農薬がかなり大量に使われている」という認識をしなくてはいけません。そして国産の大豆を少しでも増やす努力をしていくということが大事だと思います。この大豆に関しては、「大豆畑のトラスト運動」というのも始まっております。こういうものが、各地で増えていかなければいけないと思います。それも出来るだけ近くの生産者と消費者が手をつないで小さな地域ごとの自給率のアップを図るということから、それが全体に広がって自給率が上がるという方向に向かっていくのが望ましいと思います。これを方々で話をさせていただいているのですが、慈光会さんが積み重ねられてきたノウハウを多くのところで利用できるように出来たらと本当に願っております。

ダイオキシンと環境ホルモン

 環境ホルモンの中でも、第一回の学習会で皆さんが学習されたという、ダイオキシンは、ある意味では現実の最大の問題になっています。先日も東京で全国の女性弁護士一五〇名以上の方が呼びかけ人になって、「ダイオキシン、環境ホルモンを考える国民会議」という会を発足させたのです。このダイオキシンの汚染の影響は、母親の母乳汚染という形で現れたり、母親のお腹の中にいる胎児の段階で影響が出るなど、特に女性がその問題を大きく抱え込むということで、女性弁護士がまず立ち上がってこういう会が呼びかけられたのです。そのなかである研究者の方がおっしゃったのは「日本のダイオキシンの汚染の状況はかなりひどい。自分の所はゴミ焼却施設が近くにないから大丈夫だと言える所はないという認識の基に、対応をすぐに図っていかなければいけない」ということです。日本ではゴミ焼却場との関連でダイオキシンの問題が大変大きく出ております。厚生省の対応は大型の処理施設を作ることによってこの問題を解決しようとしているのですが、これは問題を逆行させると言えます。というのは、「ダイオキシンが分解される九〇〇度以上の高温で恒常的に、二四時間連続して燃やせるような大型の施設を作ろう」と言ってるのですが、二四時間連続稼働させるためにはかなりのゴミの量がないと稼働できない。ということは当然「ゴミの量をある一定以上確保しなければならない」ということで、場合によってはゴミを増やすことにつながりかねないわけです。リサイクルできるものをリサイクルし、ゴミになるようなものを買わないという注意を払って、出来るだけゴミを減らそうという、今私たちが目指すべき方向とは逆の方向になるということです。又、ゴミの第一排出者である私たち一人一人が徹底的にゴミを分別することが出来れば、現在の焼却炉でも、ダイオキシンの発生量は、幾つかの実験で一〇分の一以下、さらにそれ以下に抑えることが出来るということがわかっております。私たち一人一人がゴミを最初に出す所で、多少手間がかかっても分別すれば大変な手間と時間、そしてお金も節約できるのです。それから「プラスチック類を全て燃えないゴミとしてまとめる」ということをまずやらなければいけません。この中でも食品包装ラップ、今出回っている食品包装ラップの七割は、塩化ビニリデン製なのですが、これはダイオキシンを発生させる最大の要因になっています。さらにすることは、「そういう物は使わない、買わない」ということが大事です。「使わない、買わない」の先にさらに「そういう物をメーカーに作らせない」というところまでもっていかなければいけないと思うのです。そしてもし買い置きだとかお手元の中にこの塩化ビニリデン製のものがあったら、それの処分の方法として、単に燃えないゴミに入れて処分ということではなく、メーカーに送り返して頂きたいのです。そういう方法によってよりメーカーに消費者の意思、意向を伝え表すということが大事です。 (以下、次号に続く)

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