2008-06-10
乃木坂の日本学術会議まで
研究発表のために、電車を乗り継いで、乃木坂にある日本学術会議まで行ってきた。今回の発表は「連成・複合現象のシミュレーション」というセッションに応募した。当初その担当の先生より「投稿しませんか」との連絡をメールで頂いたからだ。あまり考えずにそのセッションに応募してしまった。プログラムをみると「破壊力学」とか「離散体の力学」などもあり、研究の内容的にはそちらに近いと思う。
我々の計算の特徴は、ものすごく細かいところまで実物を忠実に再現したモデルを使っていることである。実物の1個1個の粒の形状までをmm単位で精密に三次元測定し、それを三次元のモデルで正確に再現して、それらを数多く集めて5〜6mの実物大の構造を有するモデルとした。細かいところまで再現するとなると、適当にすませることが出来ず、測定もモデル作成もすべてのプロセスが手作業による。計算には汎用の解析プログラムを用いているので、方法としては難しくはない。しかし、モデル作成がかなり面倒くさすぎるので、通常の人にはやりたがらないところが特徴である。
スポーツなどの勝負ごとはルールやレギュレーションが、あらかじめしっかり決まっており、実際に試合をやっても勝ち負けは明らかだ。まして、体力や技が劣るものには勝ち目はない。今日の発表会も試合と言えば試合なのだが、研究の場合は、勝ち負けの規準が決まっていないところが大きく違っている。頭が切れる方は理論展開や難解な数値計算をすればいいが、体力が気力だけが売りという方は、勝ち目は無いかというとそうではない。非常に面倒な精密な実験や、ただ単に回数だけが多いというような繰返しの実験、体力がいる現状の調査など、いくらでも自分の得意な分野で太刀打ちできる。ルールもレギュレーションも自分で決めればいい。私は研究のそのようは自由度の大きさがいいと思う。
ところで話が今回のモデルに戻るが、我々のモデルには難点がある。モデルが細かく精緻にできているため、その微細な高周波の動きを再現することを考えると、1万分の1秒とか10万分の1秒単位の非常に小さな時間刻みで収束計算を繰返さねばならない。わずか1秒間の挙動を再現するのにも、数万回の計算を繰り返すことになる。50cm程度の小型モデルのシミュレーションでも、パソコンベースでは軽く1週間程度かかってしまう。現時点では試験的な解析なので、1週間パソコンを動かしたままで、別の仕事をしておいて、1週間後に出来がどうかを確認するというのでも全く問題ない。
しかし、次の段階として、現状の20倍程度の大きさの実用的な解析モデルで、実時間10秒程度の挙動を再現するとなると、パソコンでは軽く数年はかかってしまう。それでスパコンやPCの並列処理計算に移行するのは避けられない状態だ。実は、当初「投稿しませんか」と案内をくださった先生が、並列処理のプラットフォームや計算ツールをいろいろ公開していることもあり、今回の発表がスパコンやPCの並列処理計算に移行する「きっかけ」にならないかと期待したからだった。
しかし、同じセッションでの講演内容をみると、スパコンやパソコンでの多くのCPUを用いた並列解析プラットフォームを用いて、個体構造物と高温液体との連成解析、高周波電磁波の熱伝導連成解析、固体液体混相流など、いずれも圧縮性・非圧縮性、高温・低温の流体の流れが関与する超難解なものばかり。原子炉の高温・高圧で、液体成分も含む水蒸気の計算などが一番あいそうな内容だ。いわば、超難解な問題を、スマートな頭脳でもって、計算パワーをふんだんに使ってに解くというものだ。我々のように、「あまりに面倒すぎて誰もしたがらない」というのが特徴というような「ドロ臭い」研究はなく、かなり「場違い」との感じだった。
やはりセッションのことについては、純粋に「研究の内容」のみから考えて、それに付随する「打算」についてはあとまわしにするべきだったと思う。でも、当初案内を頂いた先生をはじめ、いろいろな方より有用なご指摘頂いた。「ダメ出しされてこと意義がある」という観点では、それなりの成果があったといえそうだ。
自分でやってほちいでちゅ。
共著者が会場に来ていない。同君が学会の発表会を「すっぽがした」のは、昨年の別の会議についで2回目。ここ1年でも、現場での危険作業の立会い時に立ったまま寝ていたり、顧客への説明会で出張先に連れて行ったら、会議室でのプレゼンの最中に寝ていたり、また、ほんの数ヶ月前には、顧客相手の報告会に、約束時間に30分以上遅れてきたこともあった。昨年の実物大試験では、8時30分の集合時刻に来ていないので電話したら、自宅で熟睡していたこともあった。これだけ度重なると、本当に「大丈夫なの?」と思ってしまう。
通常の会社は勤務時間に厳しい。とくに遅刻については、働き始めると徹底的に叩き込まれる。遅刻を繰返すと懲戒の対象にもなる。ところが、今の会社はフレックスで朝は10時までに出勤すればいい。また、通常業務の遅刻なら会社も出勤簿で掌握できるが、出張先や現場のこととなると会社は把握できない。上司が注意する程度だ。
同君は会社の隣に住んでおり、通常なら9時過ぎまで寝ていて、それからゆっくり準備しても「セーフ」だ。ところが、今回のように、遠くの会場に朝8時30分までに到達せねばならないときは、少なくとも朝6時には起きないといけない。たぶん、今朝も目を覚ましたその時点で「アウト!」。すでにお手上げ。
「懲戒」という強い「後ろ盾」が無い状態では、その場やその後注意しても、本人がよっぽどの覚悟で「肝に銘じない」限りは「後の祭り」だ。これらのことも、パソコン相手の作業なら別段問題にならないが、実験や現場測定では危険がつきまとうし、下手すると事故に繫がりかねない。対外的には、会社の評価や信用にも関係する。会社で働いていると、個人の責任だけでは済まされない面がどうしてもでてくる。同君にもこれらにことについても解って貰う必要がある。
通常の業務はまじめにこなしているので些事といえば些事なのかもしれない。しかし、「朝○○時に起きなさいネ」、「前の日は○○時に寝るんでちゅヨ」とか「○○ちゃん、朝ご飯はちゃんと食べまちたかー?」のような、衣食住などの基本事項や時間管理については、他人ではとうてい入り込めない。
「もう社会人なのだから、自分でやってほちいでちゅ。」